ガリウルと友達
「翔くん……! 翔くん!!」
大きい声をあげて名前を呼んでいた。翔くんは目を覚まさない。ソファに座っている彼の足元に膝をついた。
「翔くん……」
僕の二つの目が涙ぐんでいた。静かに涙を流していると、翔くんの小さい寝息に気づく。
「生きてるんだね……よかった」
翔くんが死んだように見えたのだ。ホッと一息つき、翔くんを申し訳なさそうに見た。
「ごめんね、翔くん。本当にごめん」
そっと翔くんの太ももに手を置き、目を閉じた。
安心したのか、いつの間にか寝てしまっていたのだ。ハッと顔を上げると翔くんは眉間に皺を寄せ僕を見ていた。
「あれ……ガリウル? なんで、お店は?」
「翔くん。ごめん」
「そうじゃないよ、お店はって聞いてるんだよ」
「ああ……」
外を見ればもう昼だった。太陽は真上にある。なんだか暑いと思っていた。
「お店はうまくいってるよ」
「そう。でもなんでここに?」
「僕の所為で翔くんがボロボロになったと思ったから……。実際そうなっちゃったわけだし……。ごめん」
僕は頭を下げる。土下座と言われるものだ。
そうすると翔くんは溜息をつく。
「別にガリウルの所為じゃないよ」
翔くんは笑って僕の肩に手を置いた。
「でも」
「そいつは自分の意思でここに来たんだ。お前の為ではあるがお前のせいじゃない。いい友達を持ったと思うことだな」
でも、僕が悪い。そう言おうとしたのに誰かに遮られる。後ろを向くとにこりと笑った春日井さんが立っていた。
「よう、元気にしてたか」
怖い。彼の笑いが僕にはとても黒く見えた。自分がどんな顔をしていたか分からないが、凄く嫌な顔をしていたのはわかった。
「そんな顔すんなよ。もうそいつは返してやるからよ」
「そんなの当たり前です。翔くんは連れて帰ります」
「んじゃ、またな」
春日井さんは部屋を出ようとする。僕のお金はどうなるのか。なぜ翔くんがここに来たのか。僕には分からず、春日井さんを引き止めていた。
「あ、あの……!」
「ん? まだ用があんのか」
「えっと……その、僕のお金はどうなるんですか」
「さっき言っただろ。そいつがお前のためにここに来たって、お前を助けたいって言うから俺の紹介した店で働いたんだよ。ボロボロになるまで働いて、全額返済。お前にもう用はねえよ」
春日井さんは溜息まじりに僕に説明してくれた。たった2ヶ月で100万以上をどう返したのだろうか。
「ど、どう言うことですか」
出て行く春日井さんの服を掴んだ。
「あっちに聞けよ」
春日井さんはイラついたように舌打ちをし、翔くんを指差した。翔くんはぼーっと天井を眺めていた。
「はぁ、お前の友達がお前の金を全額返済したんだよ。俺の紹介した店で働いてな。これでわかったろ。さっさと帰れ」
春日井さんは僕の手を振り払い出て行ってしまった。
「翔くんが……僕の借金を全額返済しただって……」
僕が座り込んで春日井さんが出たドアを見つめてると、翔くんが寄って来た。
「ガリウル。帰ろう」
「う、うん……ありがとう」
僕は4つの目から涙が出そうだった。
「泣くなよ」
そう笑う翔くんに、僕は涙を堪えた。
スマイル金融を出ると、僕は翔くんとゆっくり水菜さんの店へと向かった。
「とりあえず、うまい飯でも食わしてよ」
翔くんがまたふわっと笑った。僕も笑って翔くんを見た。
水菜さんの店へ着く頃には辺りは薄暗くなっていた。お店が見え、その前に水菜さんも居た。僕は大きな声で水菜さんを呼ぶ。
「水菜さん!」
笑って大きく手を振ると、水菜さんは凄く悲しそうな顔でこっちを見た。
何かあったのだろうか。僕は翔くんと顔を見合わせた。




