ガリウルの地球調査
僕は夜遅くに家へ帰ると毎晩のようにパソコンを開く。家は一部屋しかない。地球で言われる座敷と言うものだ。たった六畳だ。
そんなところで僕は地球のことを調べているんだ。膨大なお金が必要だから。家は貧しく母は病気で寝たきり、妹は小さくて働けるはずもない。
僕はたくさんの星を調べた。
その中で天球と同じ通貨で、給料のいい星を探したところ地球と言う事がわかった。
地球とは僕らが住む天球と似ていて、酸素で囲まれている。それに地球にある島国、日本という所は僕ら天球人と同じ言語を使っていることがわかる。
「地球人……なんて厄介な宇宙人なんだ」
僕はこんな宇宙人を見たのは初めてだ。僕ら天球人や、他の宇宙人には何か似たような性格をしている。
例えば僕ら天球人は愛情深く、怒ることはほとんど無い。
でも地球人は違う。
僕は何度も地球人が写っているテレビを見る。
「なんでこんなにばらばらなんだろう」
僕は首を傾げながら見る。毎晩の様に地球人の映る動画を見るが、全く飽きない。
「地球ってなんて面白い星なんだろう、地球人ってなんて面白い生き物なんだろう」
僕は地球に行くのが少し楽しみになっていた。もちろん家族と離れるのは辛いし心配だ。
でも、それ以上に地球で働けると思うとワクワクしていた。
「お兄ちゃん……?」
僕がうるさかった所為か妹、シャルウルが僕の元へと来る。
「ごめんね? 起こしちゃったね」
「うぅん。起きちゃったの……ママに会いたい」
シャルウルの頭を優しく撫で抱っこした。母さんはもちろん入院中だった。僕が働いている間は母さんが入院してるところにシャルウルを預けている。
「ママ……」
シャルウルの頬には泣いた後がある。僕はゆっくりと下ろし布団へ寝かせた。
パソコンの電源を落とし僕もシャルウルの横に寝転がり目を閉じた。
深い深い眠りに入っていった。
次の日の朝、シャルウルの泣き声で僕は目を覚ました。
「どうしたの?」
僕はシャルウルを抱っこしてあやした。しかしシャルウルは泣き止まず電話の方を指差していた。
僕はすぐさま電話を耳に当てた。
「もしもし……?」
「あ、ガリウルさんですか? 少しお話があるのですが病院まで来ていただけますか」
「はい。今すぐ向かいます」
きっと母さんに何かあったんだ。
僕はパジャマのままシャルウルを抱き裸足で家を出た。
天球は何もないところだ。あたりは白い地面に家が数件。木も草も花もない。そして大きくもない古びた病院と幾つかのお店。僕はそんな景色を目に焼き付けるよう見ながら走った。
病院につくと、先生を探した。
何処にいるんだろう。
僕は見つけることが出来なかった。いつもの場所、先生がよくいる場所を見ても居ないんだ。
先に母さんの病室へ行く事にした。
「母さん、入るよ」
中を覗くと母さんはまだ寝ている。
気持ちよさそうに眠る母さんを見てすごくホッとする。
そして横には先生が居た。
「先生、母さんは」
「今は大丈夫ですが、この先何があるかわかりません。それに危険な状態にもなりつつあります。あと一ヶ月以内に手術をしないとアマウルさんはあと一年も生きられないでしょう……」
僕は先生に見られ、目をそらした。
母さんがいなくなるのが凄く怖いんだ。
病気でも毎日僕の名前を呼んでくれた母さん。母さんがいたからこそ僕は仕事を続けられたんだと思う。
母さんを助ける方法は一つしかない。
僕が地球に行ってお金をもっと稼ぐこと。
「……先生、僕が戻るまでシャルウルと母さんの事お願いしてもいいですか」
「いいですが、どこへ行くのですか?」
「地球です。しばらくは帰ってこれないと思うのでどうか母の事をよろしくお願いします」
僕は二つの目から涙を流し、深々と先生に頭を下げた。
母さんとシャルウルに手紙を残し、家に帰って行った。
「地球、日本……」
この二つの言葉を繰り返しながら準備を進めた。昨日のワクワク感なんてない。
母さんがあんな状況になってしまって、地球へ働きに行くと僕は改めて実感したんだ。
僕は宇宙船を作っている母さんの友達に地球まで送ってもらうように頼んだ。
母さんのためならと宇宙船を飛ばしてくれた
。
「母さん、必ず助けるから……」
その気持ちと同時に目に焼き付けた天球の景色を思い返す。そこには元気な母親と妹が。
涙を止めたはずなのに、どうして出て来るんだろう。僕は地球に着くまで、涙が枯れるまで泣いていた。