ガリウルと決意
「翔くん! どうしたの」
「あっ……。ごめん」
翔くんは立ち止まり、腕を離した。そして困ったように僕を見た。
「翔くん?」
「ごめん……! お前を助けたい気持ちはあるし、金も借りれるなら借りてほしいと思う。だけど、あいつから借りちゃだめなんだよ」
彼の言いたいことは分かっていた。借りちゃダメだと分かっていた。しかし僕がどうなろうと母さんが助かるならと。さっきも今も気持ちは変わらない。僕は銀行からお金を借りれない。他に借りれる人なんていないのだ。
「ガリウル? 聞いてる?」
「分かってるんだ。翔くんの言ってること」
そう、あの親切な男は世に言う闇金という奴なのだ。利子が高く、返せない額になり、僕はきっと何処かへ飛ばされ、長い間……いや、一生家族や翔くん、水菜さんに会えないのだろう。
僕がいなくともみんなが元気でいてくれればそれでいいと思う。
「ガリウルダメだからな、絶対借りんなよ」
「大丈夫。借りないよ、安心して」
翔くんに笑ってそう言う。作り笑顔じゃなく。
今までありがとうと言うように僕は笑った。
それを見て安心したのか、翔くんも笑ってくれた。
近くの公園のベンチに座り、翔くんと他愛もない話をした。翔くんはよく笑う。それにつられて僕も笑う。
それを見ていた一つの影に気づくことなく。
「じゃあ、さよなら翔くん」
「あぁ、またな」
翔くんに手を振る。翔くんは僕の向かうところの反対側を歩き出していた。それを見届ける。翔くんの背中をじっと見えなくなるまで見つめた。
見送りが終わるとさっき男と会ったところへ向かう。
「ガリウル、だっけ?」
後ろからそんな声がした。忙しいのに誰なんだろう。少し困る。話しかけられると無視はできない。
少し申し訳なさそうな顔をして急いでるのでっと笑い、声の主を見る。
「あ……」
声をかけてきたのは僕が探していた男だった。
「そんなに急いでどこに行く気だった? 俺に会いに行こうとした?」
こいつは僕がお金を借りることをわかっていた。それにこっそりと分からないように後をつけてきてたんだ。もしかしたら翔くんとの会話も聞かれていたかもしれないが。
「すみません。お金……貸してください」
「お安い御用。で、いくら?」
「100万」
「じゃ、早速だが事務所まで来てくれるか」
「はい」
男の後をついていく。深く深呼吸しながら。
何も言わずにスタスタと歩く。それについていくだけだ。男は止まった。前を見ると二階建ての小さなビルにスマイル金融と書いた看板が小さくかけられていた。ついてこいと言わんばかりにこっちを見る。そしてまた歩き出しその建物へ入る。
「ここが事務所ですか?」
「あぁ、契約書もしっかり書いてもらわないとな。あ、それとこれは俺の名刺だ。足りなかったらまた言ってくれ」
そこには春日井陽介と名前が大きく書かれ、下に電話番号が書いてある。
僕は机にある契約書に目を通す、そこにサインする。小さい字で大事な事が書かれていることにも気付かずに。
「あ、読んだからサインしたんだろうけど契約書にも書いてあるが一週間毎に5万だ」
「えっ……5万ですか、毎週もってこいって事ですか?」
「あぁ、当たり前だろ。じゃ、これ100万な」
100万という大金をガリウルの前に差し出される。それを受け取り、頭を下げて事務所を後にした。
春日井はニコッと笑い見送ってきた。




