ガリウルと災難
水菜さんとみんなを待っていると、順番に挨拶をしながら入ってくる。その挨拶に僕も返すがやっぱり返事はしてくれない。
「あの……! おはようございます!」
「……ん」
返してくれたとしてもこれくらいだ。悲しくなり振り返ると水菜さんと目が合う。水菜さんは優しく僕に微笑んで言った。
「大丈夫だよ、まだ慣れてないだけだから」
水菜さんがそう言うとすごく安心出来る。
みんなも揃い始めたところで、店の開店時間になった。朝からモーニングを食べに来る人は少なくはなかった。
やはり僕は厨房から出れないようだった。ホールへ行くとみんなは嫌な目で僕を見る。そんな目にもまだ慣れていない。こんな時に家族に会いたいと思うのだ。
「水菜さん、郵便の出し方って多いわかりますか?」
僕は仕事中にも関わらず、関係ないことで水菜さんに話しかけてしまっていた。
水菜さんはびっくりした表情を見せたが、ウィンクをして「後でね」と耳元で言った。僕はすごく嬉しくなり、仕事にももっとやる気が出てきたのだ。
「ガリウル〜、お昼休憩入ってね」
順番にみんなが休憩に入っていった。僕はいつも最後に休憩を取る。お昼ご飯は職場で出るが、僕が食べるのはいつも午後2時を過ぎてからだった。今日は特に朝早く食べてしまっていたのでお腹がぺこぺこだったのだ。
僕は勢いよくご飯を食べた。
「ちっ。こぼしてんじゃねえよ」
水菜さんが居ない所為か、後ろからそんな声が聞こえてくる。まぁ後ろにも目があるから誰が言ったかなんて簡単にわかる。
普通の地球人ならこんな事を言われると怒るだろう、だが僕は怒りよりも悲しみが先に来てしまった。
やはりまだ認められていないのだと。
食べこぼした分をきれいに掃除し、何もなかったように仕事へと戻った。お昼からの仕事も終わり、休憩を挟み夜もまた仕事をする。夜になると朝や昼とは仕事仲間も変わるのだ。そして人数も増える。何せ夜はお客さんが一番多いからだった。
「いらっしゃいませー。何名様ですか?」
「あっ……。一人……」
「どうぞ」
カウンター席に入る一人の男。そいつはなぜか周りをキョロキョロと見回している。
僕は不審に思った。だが、何もしていない彼をどうこうする必要もない。
「メニューになります。ご注文がお決まりになりましたら、そちらのボタンでお呼びください」
「はい、ありがとうございます……。あの、すみません」
「もうお決まりでしょうか?」
去ろうとする僕を呼び止めたのだ。こんなに早く注文が決まったのだろうか。
「……ガリウルさんですよね?」
「あ、そうですが」
「実はガリウルさんに郵便物がありまして、届けに来たんです」
「僕に?」
「はい」
「だれから?」
「読んでみてください。急ぎだと言っておりましたので。では僕はこれで失礼します」
「えっ? ご飯は食べないんですか?」
「はい、すみません。まだ仕事中なもので」
「そうですか、ありがとうございました」
彼が一礼し、次の仕事へと向かった。僕はすぐに郵便物だと言われた手紙を開いた。
差出人を見てみるとそこには何も書かれていない。だが僕の名前を書いた字は母のものだった。
そっと手紙を開きそれに目を通していく。最後まで読み終えると僕はその場でガクンと座り込んでしまった。ただ母さんのことを考えた。
その瞬間、僕は手紙を握り締めたまま気を失った。




