バッドエンドその一
どうも皆さんお久しぶりです。
エムペやらに専念していたため久し振りの更新でございます。
前話の後書きで次から新章と書きましたが、
急遽紀霊バッドエンド集を思い付いたので書いていきます。
時系列はバラバラで、内容もグダグタ。
その上後日談も無しと酷いものですが、見てくれると嬉しいです。
「……やはりこうなったか」
城壁から見える光景を目の当たりにして紀霊は静かに呟く。
そこには赤い鎧を身に纏った孫呉の兵達が
袁術軍を次々に破り、この城に攻め入ろうとしている姿があった。
遂に孫呉が袁術に牙を剥いたのである。
袁術軍は必死に戦ったが、兵の練度に差がありすぎ
まるで相手にならなかった。
紀霊はこうなることを予見し、様々な手段を講じていた。
だが、それが実を結ぶことなく反旗を翻されてしまったのだ。
「分かってはいたが……やはり悲しいものじゃのぉ」
紀霊は兵指揮する孫策を見て苦笑いする。
その姿はどこか悲しげにも見えた。
「もう勝ちは決まったようなものね♪」
「油断はするなよ。戦場では何が起きるかわからん」
勝利目前で若干浮かれている孫策を周瑜はたしなめる。
戦場ではちょっとした気の緩みが
死を招くことになりかねないからだ。
孫策もそれが分かっているのか勝ち気な笑みを浮かべて頷いた。
「分かってるわよ。油断なんかしてないわ。
それにまだ紀霊が出てきてないし、ね」
「あぁ、彼女ならばいの一番に出てきても不思議ではないのだが」
「何か策を仕掛けている様子もありませんしぃ……
私の予想では何かしら仕掛けてくると考えていたのですが、
買いかぶりすぎだったのでしょうか?」
周瑜の隣に控えていた陸遜が自分の意見を言って考え込む。
袁術軍一の将と言われる紀霊が未だに出陣しないのは
何かの策のためであると周瑜達は考えていた。
だが、その様なことはなく、孫呉はつつがなく
勝利を手にしようとしていた。
「私達に恐れをなして逃げ出し……はしないわよね。
袁術ちゃん達ならともかく」
「だろうな。……恐らく城内で待ち構えているだろう。
雪蓮、お前に紀霊が討てるか?」
周瑜の問いに孫策は僅かに迷いを見せる。
紀霊は袁術軍の将でありながら、孫呉の為に
様々な便宜を図ってくれた言わば恩人である。
勿論、紀霊の意図には気がついてはいたが、
そのお陰で孫呉の再建に専念出来たのも事実。
その事に関して彼女達は恩を感じていた。
また、紀霊と孫策と親密な関係であり、
互いに友と認め合う仲である。
だからこそ、それを知っている周瑜は孫策に問いかけたのだ。
“お前に友を討つことが出来るのか”と。
「……討てるわ。ううん、討つ」
「本当に良いんだな?」
「うん、友達だからこそあたしの手で無銘を討たなきゃ。
無銘だってそれを望むはずだしね」
孫策が友を討つ決意を固める仲、遂に城門が開かれた。
城内は人の姿が見えず、静まり返っていた。
もう既に逃げ出してしまったのだろうか?
そう思いながら、孫策は城内を進む。
「……血の臭い?」
孫策は僅かにだが、血の臭いが漂っていることに気がつく。
その臭いを辿って進んでいくと、次第に血の臭いが強くなっていく。
強くなっていく臭いに孫策は確信を得ていた。
この先に紀霊が居ると。
血の臭いに導かれ、辿り着いた場所。それは――
「謁見の間……ここに無銘が居るのね?」
扉を押し、ゆっくりと扉を開ける。
同時に眼前に飛び込んできたもの、それは――
「遅かった……のぉ。雪蓮……」
無数の孫呉の兵の骸と膝を突き、満身創痍になった紀霊の姿だった。
「無銘、貴女……」
「流石は孫呉の兵じゃな。儂としたことが、
良いようにやられてしもうたわい」
そう言って力なく笑う。
我が軍の兵では儂に傷をつけることはとても叶わぬ。
対して周りに倒れる者達は儂の右足を深く傷つけ、
更に右目を切りつけた。
お陰で歩くことすらままならず、右目に至っては
完全に視力を失い何も見えない。
やれやれ、やってくれるわい……
「袁術殿の頚を取りに参ったのだろう?
残念じゃが、もうこの城には居らぬ。
楽就達を護衛につけ、袁紹殿の元へと落ち延びさせた。
今頃は国境を越えているじゃろうな……」
「そう……」
「なんじゃ、驚かんのか?」
「貴女ならそうするだろうって思っていたから」
「……左様か」
やはり読まれておったか。
じゃが、例え読まれておったとしても、孫呉に兵を割く余裕はない。
儂の最期の恩返しは袁術殿が無事に落ち延びる時を稼ぐこと……
その為に儂はここに残り、袁術軍の兵を集められる
だけかき集めたのじゃ。
「袁術殿の落ち延びる時、稼がせてもらった。
……儂の勝ちじゃよ雪蓮」
無理矢理勝ち誇った笑みを浮かべる。
そして三尖刀を杖代わりになんとか立ち上がった。
「さて、そろそろ無駄話も終わりにしようかの。
……袁術軍武官、紀霊鳴山。孫伯符殿に一騎討ちを所望する。
返答は如何に?」
「……分かったわ。一騎討ち、受けてたつっ!」
そうじゃ……それで良い……
勝負は一瞬で終わった。
紀霊の敗北という形で……
紀霊と孫策の武は互いに拮抗している。
本来ならば、激しい戦いが繰り広げるのだが、
目や脚に傷を負い、疲労が溜まっていた紀霊は
本来の実力を発揮することが出来なかった。
故に勝負は一瞬で決まったのである。
「ごほっ……やはり……敵わぬか……」
「万全な状態での貴女と戦いたかったわ」
「ふっ……例え万全であっても……結果は
変わらなかったはずじゃ……」
紀霊は口から鮮血を滴らせながらも微笑む。
その直後、紀霊の身体はぐらりと揺れ、 前のめりに倒れそうになる。
孫策は抱き止めるような形で紀霊を支えた。
「無銘……?」
「……」
紀霊が孫策の問い掛けに応えることは無かった。
このエンドになる条件は
1.袁術軍の武将が袁術・張勲・紀霊を抜いた
武将の数が六人以下。
2.雷銅・陳蘭・楊泰のいずれかが死亡。
3.兵の練度が一定以下。
の三つの条件の内一つでも当てはまればこのエンドになります。
因みにバッドエンドの中では一番なりやすいです。
久々の更新でこんな話書くとか何やってんだ俺……