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Ep2:重ね、重なれ

故郷を離れ、ギルドメンバーとして働くために神栄南方都市リサーラを訪れたブレンとライラ。

先輩であるユミと合流し、ギルドに向かおうとした直後、昆虫型の異形侵略者『インベイダー』の襲撃にあってしまう。

防戦一方で追い込まれていく中、ヤマトとアルスという2人の少年に助けられた。

2人は敵対勢力同士ではあったが、インベイダーを倒すためにブレンが説得し、一時的に協力することとなる。









「そういや自己紹介してなかったな。

俺はブレン・リベレイター、よろしく!

作戦練る前に、お互いのアビリティの情報共有しようぜ。」


「え?」


「は?」


「ん?」


作戦会議を始めようとしたブレンがアビリティを聞き出そうとするが、アルスは唖然とした顔でブレンを見つめ、ヤマトは顔に手を当てため息をついていた。


「ブ、ブレン…それは…」


「お前マジで言ってんのか?」


「え、なんかまずい?」


「あのな…お前はともかく、俺と騎士様は敵同士なんだぞ?

敵に自分の能力明かすとか自殺行為だろ。」


「えぇ!?今更それ言う!?

さっき協力するみたいな流れやったやん!

敵同士協力するアツい展開やったやん!」


「なんで関西弁…?」


「アビリティまで教える必要ねぇだろ!

今後の戦いでどれだけ影響するか分かったもんじゃねぇ!

アビリティは言っちまえば切り札だ!

発動条件、範囲、効果、1個でもバレたら戦闘で圧倒的に不利になる!」


「だー!うるさいな!3人でちゃんと協力しないとあいつ倒せないっての!

バレるのマズイならここの3人で秘密にすりゃいいじゃんか!」


「んな口約束信用出来っか!さっき知り会ったばっかだぞ俺ら!」


「…2人とも、攻撃来るよ!」


「…!」


隠れていた瓦礫を飛び出すと、3人が離れた瞬間先程までいた場所が爆発し、焼け焦げた大きな穴になっていた。

前転して攻撃を躱したブレンは2人に再び声をかける。


「このままじゃみんな仲良く風穴ドーナツ体型になっちまうぞ!

2人ともいいのかよ、あいつにこれ以上好き勝手させて!!」


咄嗟の回避で地面に伏せていたアルスがゆっくりと立ち上がり、ヤマトに話しかける。


「ヤマト…って言ったよね。

僕は…彼を信じてみるよ。

正直気は進まないけど、ブレンの言うことは正しい。

町を守りたいという思い、この1点においては君と僕は同じだ。

そのためには奴を倒さなくてはいけない。

そのためなら、アビリティを教えることも…僕は構わない。」


「マジかよ…お前騎士団の13席なんだろ?

絶対面倒なことになるぞ。」


「もう仕方ないさ。

町を守るために、今は奴を倒すことが最優先だ。」


「…ったく、分かったよ。言えばいいんだろ、言えば!」


「はいはい!俺一番に発表したい!」


「なんでテメーはノリノリなんだよ!

あ〜もうツッコミ切れん。さっさと言え。」


「俺のアビリティは『エクスチェンガー』!指鳴らすと15分以内に触れたものを入れ替えられる能力!

スゲーだろ!」


「色々応用効きそうな能力だね。作戦の幅が広がるよ。」


「あぁ、奇襲とかに持ってこいの能力だな。使えそうだ。

俺の能力は『九十九神』。

あらゆる道具を99個まで遠隔操作出来る。

こんな感じにな!」


ヤマトが上に手をかざすと、乗ってきたバイクから駆動音が鳴り、ハンドルが外れて空中に飛び出した。

ハンドルの先には刀身が付いており、1本の刀になっており、そのままヤマトの方に飛んで手中に収まった。


「なにそれカッケー!

あのバイクメカなのか!?後で乗せてくれー!」


「分かった分かった、生き残れたら考えてやるよ。

んで、騎士様の能力は?」


「騎士ではあるけど、ちゃんと名前で呼んでくれ。

僕のアビリティは『エレインズティアードロップ』。

エナを消費せずにスキルを発動出来る能力だ。」


「…え?」


「…え?」


「な、なんだい?」


「エナを消費せずにって…スキルの威力とかに関係なく?」


「そうだね。」


「回数制限とか発動条件とかは?」


「特にないかな。」


「「…。」」


先ほどまで得意気にしていたヤマトは肩と一緒に刀も地面に落とし、ブレンは虚空を眺めた。


この電脳世界における『スキル』とは、『エナ』と呼ばれる生命エネルギーを消費して発動する魔法のようなものである。


攻撃や防御、支援など用途は様々であるが、『エナ』を消費するため、多用すると体力切れで最悪死亡する場合もある。


彼の『アビリティ』は、それを無限に使えるというとんでもない能力なのだ。


「何その能力…強すぎるだろ…。

そんなんチートや…チーターやん…」


「腹に風穴空けられてミスタードーナツになればいいのに。」


「君達が聞いてきたんだよね!?」


「いや…まぁそれはそうだけど…。」


「やる気無くなったから帰っていいか?」


「これアビリティの開示逆効果じゃないかい?」


「い、いや!これで作戦立てられる!」


「グギャア!!!」


作戦会議を待ってくれるはずもなく、インベイダーがブレンが隠れていた瓦礫に砲撃を浴びせた。

転がっていた瓦礫を咄嗟に拾い、2人がいる方向に向けて投げつける。

指を鳴らすとブレンと瓦礫が入れ替えり、投げた勢いそのままに2人の元へ転がり込んだ。


「綿密に作戦立てる訳にはいかなさそうだな。

アルスはスキル使い放題ってとこでいいんだよな。あいつ倒せそうなスキルあるか?」


「悔しいけど、ブレンより火力を出せるスキルはないよ。

トドメは任せたよ。」


「分かった。ヤマトのバイクってあとどんな装備がある?」


「拳銃5、6丁と刀がもう1本。あとは防御用の浮遊シールドって所だが、あいつの攻撃力考えるとお気持ち程度に考えといた方がよさそうだ。」


「バイクに拳銃装備…聞かなかったことにしておくよ。」


「一丁貸してくれないか?

銃で撃ち出した方がメテオの威力上がるからさ。」


「いいぜ、ほらよ。」


バイクのシートを展開し、下に収容されていた拳銃が空中に飛び出す。そのままブレンの手元に落ちてきた。


「おっとっと。よし、ありがとな。


じゃあ作戦だけど、ヤマトは武器とシールド使ってなるべく攻撃させないように妨害してくれ。


アルスは火力高めのスキルで牽制頼むよ。

隙見つけて俺が飛び込んで仕留める!」


「かなりざっくりな作戦だが了解だ。」


ヤマトがブレンの少し前に出て右側に立ち、拳銃と刀を構える。


「無理して飛び込まないようにね。命大事にでいこう!」


アルスは左側に立ち、ブレンとヤマトを守るように盾を構えた。


「おう!

それじゃ2人とも、ほい!」


ブレンは2人に手のひら向けて腕を上げる。


「…?」


「…何のつもりだ?」


「何って…ハイタッチだよハイタッチ。

やったことあるだろ?」


「ふざけるな、協力はするが馴れ合うつもりはねぇ。

ハイタッチなんぞしてたまるか。」


「そ、そうだね…。

今から死ぬかもしれないんだ。そんな意味ないことしてる場合じゃないよ、ブレン。

気を引き締めないと。」


「…オレノアビリティ、サワラナイトハツドウシナイ。ハイタッチ、ゴウリテキ。

シナイト、オダブツ。サンズノカワニマッシグラ。」


ハイタッチを拒否され、ブレンは若干拗ねながら説得をする。

ヤマトは怪訝そうな顔をし、アルスは顔を伏せて震えている。


「いや…その…景気づけにと思ってさ…やっぱダメかな…」


「…ぷ、あははははははは!」


「!」


「はぁ…はぁ…ホントにブレンは面白いな。上等じゃないか、ここまで来たらとことん付き合うよ!」


アルスは軽快に笑ったあとに盾を地面に刺し、空いた左手でブレンとハイタッチをしてくれた。


「ほら、ヤマトも。士気を上げるためと思ってさ。ほらほら、早く早く!」


「アルス…」


「…はぁ。これで負けたら、化けてお前らの枕元に出てやるからな。」


拳銃をホルスターにしまい、空いた右手で勢いよくハイタッチをかました。


「へへ、それじゃあ行きますかぁ!」


「「おう!」」


3人は散開して、各々の角度から攻撃を繰り出す。

アルスは盾の中から警棒を取り出し、ヤマトは拳銃をインベイダーへと向けるのと同時にコマンド詠唱を始めた。


「メテオコマンド 01!」


『メテオ Ready?』


「ファイアコマンド 01!」


『ファイヤーボール Ready?』


「バレットコマンド 06!」


『グレネードバレット Ready?』


「「「Enter!!」」」


警棒の先からは燃え盛る火球、ブレンの拳銃からはエネルギーの塊、そてヤマトの拳銃からは手榴弾の形をした弾丸が放たれ、インベイダーに直撃する。










辺り一面に爆煙が広がったが、その煙を貫くようにインベイダーからの砲撃が3人を襲う。


ブレンは着弾寸前に自分と落ちていた瓦礫の位置を入れ替えて回避、ヤマトは浮遊シールドで、アルスは盾で攻撃を凌いだ。


(普通に撃っても致命傷にならねぇ…!)


(今使えるスキルで一番攻撃力が高いスキルだったんだがな…)


(僕とヤマトの攻撃はまるで効いていない…やはりブレンのスキルじゃないとダメか…!)


「アルス!効かなくてもいい!スキル撃ち続けてくれ!」


「了解!ファイヤーコマンド01!」


「グギャア…!」


連続で『ファイヤーボール』を受けたことで、ダメージこそ受けないもののインベイダーが少し体制を崩した。


(今なら…!)


「おいバカ、止まれ!!」


『ファイヤーボール』を嫌がり左腕で防御しているインベイダーに隙が見えた瞬間、ブレンは肉迫する。

しかしながら、インベイダーは接近してくるブレンの姿を捉えており、ハサミで迎撃しようとしていた。

すんでのところで、触れておいた瓦礫と自分の位置を入れ替えて何とか回避に成功する。


「グギィ!!」


「く…ッそ…!!」


「間一髪だったね…。」


「あぁ。ヤマトが声掛けてくれなかったらやられてた…。」


攻めあぐねていればインベイダーの砲撃で一方的に攻撃され、意を決して接近すればハサミで切断される。

仮にハサミ攻撃を避けられたとしても、コマンドの詠唱をしている隙を狙われる。


(攻撃に隙がない…あの砲身とハサミをどうにかしねぇと、このままじゃなぶり殺しにされる…!)


アルスがスキルを際限なく放てるとしても、体力自体が無限なわけではない。


ブレンも身のこなしは軽いものの、機敏に動き続けるにも限界はある。


そして、何よりヤマトが気がかりだったのは自分のことだった。


アルスのような強いアビリティを持っているわけでもなく、ブレンのようにインベイダーに通じる火力がある訳でもない。


何よりこの2人よりも身体能力で大きく劣っている。


スタミナ切れで足を引っ張ってしまうようになるのは時間の問題だった。


(俺が役に立てるのは洞察力であいつの弱点を見つけることぐらいだ…!何かないのか…何か!!)


「グギギギ…グガァァァァァ!!!!」


「はは…明らかにブチ切れてるって感じだね…」


「アルスの『ファイアボール』がちょっとは効いたのかな。ざまぁみろだ。」


「『ファイアボール』…」


インベイダーの様子を見るに、ダメージ自体は受けていない。


ただ、『ファイアボール』を受けた腕の部分から、微かだが煙が出ている。


つまり熱自体は発生しており、温度自体も変化する。

ヤマトの頭の中で、ハサミ攻撃の打開策が練上がっていた。


(…けど、結局砲撃でやられちまうな。

どん詰まりか…。

詰まる…。そうだ…、

この手なら…こいつらとなら不可能じゃねぇ!)


「おい!アルス、お前の『エレインズなんとか』の出番だ!


あいつの『ハサミ』の部分だけを、絶え間なく加熱し続けろ!」


「なにか思いついたんだね。

お安い御用だよ!『ファイアコマンド01』!」


アルスの両手から、途切れることのない業火の弾丸が、インベイダーの武装だけにピンポイントで着弾し続ける。


「ギ…ガァ…!」


「奴を動かせるな!ブレン、一緒に撃て!」


「おう!」


インベイダーが踏み出そうとすると、ブレンとヤマトが足に銃撃を喰らわせて動きを封じる。

ダメージこそないが、弾丸の衝撃でインベイダーが怯む。


インベイダーの武装が真っ赤に焼け落ちるほど加熱された瞬間、ヤマトが指示を飛ばす。


「アルス、次は冷却だ!ウォータコマンドでもアイスコマンドでもいい!奴のハサミを冷やしてくれ!」


「了解!『アイスコマンド03』!」


『フリーズマグナム。Ready?』


「ENTER!」


アルスが構えていた警棒から、4つの氷の塊がインベイダーの左腕に命中する。

真っ赤に熱せられたインベイダーのハサミが、急激な冷却により、強固な装甲に無数の亀裂が走る。


(今だ!)


すかさず、ヤマトが『九十九神』でバイクを引き寄せて飛び乗った。

インベイダーに突撃し、左腕のハサミに高速回転したタイヤで衝撃を叩き込む。


ギャリリリリリリリリリ!!!


チェーンソーのような、金属と金属が激しく擦れ合う轟音が響き渡る。

低温脆性か、熱衝撃か、何にせよ脆くなったハサミの刀身に、徐々に亀裂が入っていく。


「砕け散れ!!」


バッキィィィィィィン!!!


亀裂が更に大きくなり、車や瓦礫を容易に切断していたハサミが粉々に砕け散った。


「すげぇ、やったぜヤマト!!」


「まだだ、砲身が残ってんだろ!攻撃くるぞ!」


「僕が守る!2人とも後ろへ!」


インベイダーが闇雲に砲撃を放ち、辺りはより一層瓦礫の山と化す。


アルスの盾で何とか防いでいるが、後ろにいる2人にまで強い衝撃が伝わってくる。


「うわぁぁぁぁぁ!!!」


「グギャギャギャギャギャギャ!!!」


インベイダーは少し冷静さを取り戻し、アルスの盾に向かって攻撃を集中させる。


直撃こそしていないが、戦車と同等かそれ以上の衝撃を連続で受け続けているアルスに、確実にダメージが蓄積していく。


「ぐ…く…!」


「やばいぞヤマト、これ以上はアルスが持たない!」


「くそ、ダメか…!!」


「まだ…だ!!!」


アルスが叫び、崩れかけていた姿勢を立て直す。


「僕は…、『円卓評議会直属騎士団』第13席、アルス・レオンハート…!!

騎士の誇りにかけて…ここは何としてでも守り抜く!!

『ファイアコマンド12』!」


『メルトダウンバリア。Ready?』


「ENTER!」


盾の前に煮え滾るマグマのような障壁が現れ、インベイダーの砲撃を溶解し衝撃が軽減される。

しかし、体力が限界に近づいていたアルスには、持ちこたえるには不十分であった。ブレンとヤマトが後ろから支えているが、徐々に後ろに押されていく。


「チクショォォ…!」


「…『アース』…『コマンド』…『12』…!」


『プレシピスウォール。Ready?』


「ENTER…!」


「スキルの二重並列使用…!?」


ヤマトが驚くのも束の間、マグマの障壁の後ろに巨大な土壁が出現する。


砲撃の威力が多少弱まったが、以前として押され続けていく。


「ッ…!『ウォータコマンド12』…!」


『絶海深層。Ready?』


「EN…TERァ…!」


「さ、三重並列…!」


深海のような青黒い水の壁が現れ、砲撃の威力を殺していく。

何とか踏みとどまれるほどに攻撃を抑えられている。

だが、アルスがよろめいてブレンが咄嗟に肩を貸した。

ヤマトがバイクをつっかえ棒にして、何とか状態を維持している。


「アルス…!」


「…はぁ…はぁ…『ウィンドコマンド』…『12』…!」


『アテラドール・テンペスタ。Ready?』


「ENTER…!!」


「四重…」


高速回転する竜巻が現れ、3枚の障壁で減衰した砲撃を跡形もなく削り取ってゆく。


「すげぇ…ほとんど防ぎ切ってる…」


「化け物地味すぎてんだろ…。

だが、ナイスガッツだぜアルス!今度はこっちの番だ。

天読(そらよみ)鉄塊雪崩(てっかいなだれ)」!!」


『九十九神』で操作された無数の瓦礫が、インベイダーの頭上から襲いかかる。

ブレンが触れた瓦礫も混ざっており、ぶつかって粉々になった破片を再び操作して砲身の中に紛れ込ませた。

無論瓦礫の投下ダメージは無いが、衝撃と煙によって一瞬の隙が生まれる。


「グギャァァァァァァァァァ!!!」


激昂し、再びブレンたちに狙いを定める。


「今だブレン!砲身の中の砂利と、この瓦礫入れ替えろ!」


「え、わ、分かった!」


ブレンが指を指を鳴らすと、砲撃を放とうとしていたインベイダーの砲身が内部から弾け飛んだ。


放出された砲弾が砂利で出口を塞がれ、圧迫されたガスが火球の連続発射にもビクともしなかったインベイダーの腕を吹き飛ばす。


「グギャア!?」


「驚いたか?腔発っつってな。

銃身が発射時の圧力に耐えられずに破裂する現象だ。


これでてめぇの攻撃手段は全部潰した!

行くぜ、2人とも!」


「「おう!」」


ヤマトはバイクでインベイダーの背後に周り、ドリフトをしながら足に向かって体当たりを食らわせた。体勢が崩れたところに、すかさずアルスが盾でインベイダーの顔を叩き潰す。

そしてブレンは至近距離まで肉薄し、ヤマトから借りた拳銃をインベイダーの胸元に押し付けた。


「ギ…!?」


「『メテオコマンド01』!!」


『メテオ。Ready?』


「ENTER!!!」


超高密度エナの塊が、ゼロ距離からインベイダーに炸裂する。

『メテオ』を食らった身体は大きくへこみ、弾痕の周りに大きな亀裂が発生する。


「グギャ…!!グギャァァァ…!!!」


「『メテオコマンド01』!!!ENTER!!」


2発目で完全に胴体に穴が空き、インベイダーの内部が露出した。

生き物の筋繊維のような、機械の配線ような、糸状の謎の物質の中に、紫色に光る宝玉のような物が怪しく煌めいていた。


「グ…ギ…グギャ…」


「『メテオコマンド01』。」


『メテオ。Ready?』


「グギャ…!グギャ、グギャアァァ…!」


「これで…終わりだ!!」


連続で『メテオ』を放った影響か、急激な身体の疲労感と腕への反動がブレンに襲いかかってくる。

視界が霞むが、中の宝玉に向けてブレンは寸分違うことなく照準を合わせた。


「ENTERァァァァァァ!!!」


「グギャァァャァャァャァア!!!」


パリィィィィィン…!


3発目の『メテオ』が直撃し、宝玉は粉々に砕け散った。

命乞いでもするようにか細く叫んでいたインベイダーの声は止み、生気も共に失われていく。

断末魔が響きわたり、数秒経たないうちにあたりは静寂に包まれた。




「…やっ…た…?」


緊張の糸が切れ、3人同時に地面に崩れ落ちた。







ヤマトはバイクにもたれかかり、アルスは尻もちを付いていた。

ブレンは大の字に寝転がり、同じく意気消沈の2人を見つめて少し微笑んだ。

『メテオ』の反動で脱臼した右腕の代わりに、左腕を空に向かって突き上げる。

ヤマトとアルスは顔を合わせて少し笑いあった後、ブレンと同じように左腕を空へ掲げた。











「「「よっ………ッッッしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」











即席の、まだお互いのこともよく知らずに手を組んだ若き戦士3人。

うち2人は普段はいつ殺しあってもおかしくない敵同士。

信頼関係も連携のイロハすらない粗だらけの3人組は、「街を守る」という1つの意思だけを楔としてに団結し、都市一つを容易に壊滅させる化け物を退けた。


「…っは〜。 マジで死ぬかと思った…。

でも、俺の目論見通りだったな。

なんとかなったじゃんか。」


ヤマトがボロボロのバイクに腰掛け、荒い息をついて空を見上げている。


「なんとかなったじゃんかじゃねぇよ…。

作戦考えるとか言って、ほぼ俺が指示出してたじゃねぇか。

この無鉄砲が。」


盾に寄りかかり、震える手を見つめながら、アルスは2人を見つめる。


「はは、全くだ。

ヤマトもよくあんな作戦思いついたよね。

実戦慣れした指揮官みたいだったよ。」


「ま、ガキの頃から殴り合いに撃ち合い三昧だ。

嫌でも慣れなきゃ即オダブツ。

使えるもんは瓦礫だろうがゴミだろうが全部使う。

それが『シンセン組』のやり方だ。

お上品な騎士団とはちげーんだよ。」


「…そうだね。僕も騎士団の人間として、自警団の君と徒党を組むなんて……本来ならありえないことだ。」


「その割には盛大に手の内明かしてくれたじゃねぇか。

『スキルの四重並列使用』なんてトンデモ技とかよ。

二重でも脳がパンクするってのが通説だ。

どうやってんだ?」


力なく首を振って、微かな笑みを浮かべながら答える。


「自分でも、どうやったのか分からないんだ。

ただ、あの時は君たちの視線を背中に感じて…倒れる訳にはいかない、守らなきゃいけないんだって…その思いで頭がいっぱいになって。

本当に、偶然できただけだよ。」


「『火・土・水・風』を同時に制御して偶然、か。とんだ怪物騎士様だぜ。

まぁ、おかげで俺の作戦まで繋げられたんだ。

そこだけは感謝しといてやる。」


一瞬驚いたような表情をして、自分は顔を見られないようにアルスも礼を返す。


「…こちらこそ、ヤマト。

まぁ怪物具合で言えば『インベイダー』に通じるスキル持ちのブレンもいい勝負だと思うよ。」


「それな。

『ファイアーボール』の連発にびくともしない相手にダメージ通るとかヤバすぎだろ。」


「ひひひ。そうだヤマト、銃ありがとな。

返しとくよ。」


「おう。弾代はツケにしといてやるよ。」


「あ、そうだ。 ユミ先輩がやべぇんだ。

二人ともちょっと手伝って-」


ブレンの話を遮るように、静かに盾を拾い上げ、周囲の喧騒を見据えた。


「…いや、ブレン。それはできない。

治安維持を担う騎士団の人間が、民兵組織の関係者と並んで歩く姿をこれ以上見られるわけにはいかない。

時期に救護班が来るはずだ、獣人族ミキシアンの女の子も助かると思う。

僕はこれから、被害状況の確認に向かう。

それが僕の仕事だからね。」


ヤマトはそれを聞くと、バイクに跨ってエンジンをかける。


「仕事熱心なこった。

俺もこれ以上ここにいたら、応援に来たサツにしょっ引かれちまう。

ブレン、今日のことは他言無用だぞ。

本来は敵同士なんだ。次会ったら殺し合うこともあるかもしれねぇ。

今日はたまたま獲物が被って協力しただけだ。そこを勘違いすんなよ。」


「…そっか、そうだな。

でも、俺は二人と一緒に戦えて良かったよ。

ヤマトとアルスが助けてくれなかったら絶対勝てなかった。

力貸してくれてありがとうな!

またどっかで会おうぜ!」


ブレンは2人に向かって拳を突き出し、満面の笑みを浮かべていた。

アルスは甲冑の中で少し苦笑いを浮かべ、ブレンとヤマトに向かって敬礼する。


「ブレン殿、そして、『シンセン組』のヤマト殿!!

善良な市民のご協力、心より感謝します!

…出来れば敵ではなく、共に戦った戦友として、また会えることを祈っている。

それでは、僕はこれで。」


敬礼を解き、アルスはゆっくりと後ろ向いて歩き出した。


「…戦友、ね。上に聞かれりゃ大目玉だろうによ。

おいブレン、弾代はきっちり返してもらうからな。

この大通りの裏路地に俺が働いてる店がある。

警察だの騎士団だのはお断りだけどよ、客としてなら誰でも歓迎なイカした店だ。

暇な時にでも色付けて返しに来い。

それじゃあな。」


アルスにも聞こえるように大きめの声で催促したあと、バイクのエンジン音を轟かせヤマトは街の中に走っていった。


ブレンは二人の背中が見えなくなるまで大きく手を振り、瓦礫と燃え盛る業火で一人でこう呟いた。


「またな、2人とも。」







神栄南方都市・裏路地にバイクを止めたヤマトは、ホルスターに銃を戻そうとして、違和感に気づいた。


「あ…?」


さっきまで空だったはずの弾倉の隙間に、見慣れない紙片が挟まっている。


引き抜いて見れば、そこには『ブレン・リベレイター』の名前とギルドの連絡先が血で綴られていた。


(…弾と紙を入れ替えたのか。

なんつうか、ホントに食えない野郎だな。)


毒づきながらも、ヤマトは連絡リストのウィンドウを開いた。


「…まぁ、貸した弾代も回収回収しなきゃだしな。」


そう心の中で誰にともなく言い訳をしながら、手慣れた手つきでブレンのIDを登録した。


そして粗方の救護活動が終わったセキュリティの救護キャンプでは、セキュリティの本隊とアルスが合流していた。


「お疲れ様です、アルス殿!

本隊到着いたしました!

お着替えが終わりましたら、周辺の被害状況の報告をお願いいたします。

こちらへ。」


「はい。」


装備を外していると、左手のガントレットの隙間に何かが挟まっていることに気づいた。

抜き取ってみると、何かの紙片で、そこにはブレンの連絡先が書いてあった。


「…ふふ、あはは。参ったな」


思わず声を出して笑ってしまう。


「インベイダーの攻撃を耐えている時に、石ころでも仕込んでたのかな。」


アルスは紙についた汚れを優しく拭い、大切に懐へ仕舞った。

今まで自分の家柄や役職を見ずに、対等な相手として接してくれるものはいなかった。

ましてや、戦闘前にハイタッチを求めてきた者は初めてだった。


「…ブレンに、自警団のメンバーのヤマト、か…。」


上がった口角に平手打ちをし、騎士はまた仕事に戻っていくのだった。


次回

ブレンとライラが就職予定のギルド『韋駄天』のメンバーと顔合わせ。

キャッチコピーは「アットホームなギルドです。」


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