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新江の島縁起〜なぜかイタリア出身の怪人として戦うことになった僕は、魔法少女に恋をした〜  作者: 綿野草空希


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30/45

4.1 顔1

ちょっとだけ、登場人物の紹介

茂倉紗弥、BIPの事務のアルバイト。

[コーポかみしろ]に住む大学四年生。

兄の病気?で悩んでいる。

 研究室から出て、静かな廊下に、カツカツカツと靴音を響かせながら、Dr.ヘッドランドが前を歩く。


 「……あのぅ、ところで先生、これから学校に行きたいんですけど……」


 「制服がブカブカで困っちゃって……これ、BIPの超科学力でピッタリに直せませんかぁ?」


 Dr.の後ろを歩きながら、駄目元で聞いてみる。


 「そんな服屋みたいな超科学はない」


 「ま、悪の組織の怪人なんだから、学校なんてどうでもいいじゃないか。もう辞めちゃえよ」


 Dr.は振り向きもせずに、さっさと廊下を歩きながら答えた。


 「いやいや、養護教諭とは思えない発言はしないで下さい」


 Dr.の背中に突っ込む。


 「しょうがない、確か潜入用の制服が、諜報課の衣装庫にあったはずだ。そこで適当なのを借りていけ。来い」


 Dr.はクルッと方向転換をして廊下を曲がった。


 僕も後に続く。


 「体型が変わったのは怪人化のせいだからなぁ、まぁBIPの責任になるわなぁ……」


 ズンズンと歩きながら呟く。


 「三ヶ月後に怪人化が解けてもすぐに太る事はないはずだし、恐らく解けた後に精密検査して、またすぐ注射して怪人化してもらうだろうからな、お前は新しい制服を買ったほうが良いだろうな」


 「はぁい……」


 「その時はBIP宛てで領収書を貰ってこいよ。経費で落ちるかもしれんからな」


 「えぇ~、宛名がBIPですかぁ?」


 それはちょっとなぁ……


 しばらく歩くと、諜報課の前に着いた。


ガチャ……


「おい、小動高の制服一式を借りるぞっ」


 Dr.ヘッドランドが無遠慮に諜報課のドアを開けて、中に声をかける。


しーーーーん……


 「なんっだよぉ、誰もいないのかよぉ~~~」


 「せんせー、どうかしたんですかぁ~~~?」


 別の方から声がかかった。


 見ると女性事務員らしき人(事務服にアイマスク)が、眠そうな様子で廊下を歩いてくる。


 僕は今、アイマスクをしていないので、あまり顔を見られたくない。


 そっと、後ろを向いた。


 「おおっ、紗弥か? お前今日、当直だったのか?」


 「もぅ~。名前で呼ばないで下さいよ、せんせー」


 当直明けなのか、眠そうな声で返事を返す。


 「諜報課の連中が出勤したら、小動高の制服一式を借りた、と伝えておいてくれ」


 「また、女子高生のコスプレですかぁ~? せんせーも好きですねぇ~」


 「馬鹿、今日は違うぞ。男子用だ」


 「えっ!? 小動高の男子用……お兄ぃが昔着てた制服ですね……」


 一転、紗弥と呼ばれた事務員は、寂しそうに声を落とす。


 「そだな」


 Dr.ヘッドランドは軽く肩を竦めて返事し、ノブを握ったままだったドアをバタンと閉めた。


 そのまま、すぐ隣の古臭いドアを開ける。


 「ほれ、ここでサイズが合うのを選べ。借りたらちゃんと、貸し出しノートに記入しとけよ」


 Dr.にポンと背中を押されて、衣装部屋に放り込まれる。


 「はぁ~い……」


 (貸し出しノートって、アナログだなぁ……)


 衣装庫の中は布の迷宮といった様子で、雑然と、多種多様な服がハンガーに吊るされて並んでいた。


 「さって、私は上に報告に行くかなっ」


 「いやぁ~、これでやっと徹夜から解放されるわぁ~」


 「ボーナスも出るしなぁ~、今日は学校サボって一杯やって寝るぞぉ~。おい紗弥。お前のアパートで一緒に飲むか?」


バタン!


 Dr.がドアを閉める。


 「えー、私、今日は大学ですから無理ですよ~。それにウチ、四畳半なんだから、また寝られたら狭くて嫌ですよ~」


 「何だよ、もう四回生なんだからサボっちまえよ~」


 「嫌ですよ~。て、それより今の子、どうしたんですか? なにか、太陽克服技術の進展に関係があったんで……」


カツカツカツ……


 話し声と足音を残して去ってしまった……本当にマイペースだなぁ……


 一人、服の迷宮の捜索を始める。


 しばらく右往左往としていると[小動高男子制服]とマジックで書かれたダンボール箱を見つけたので、蓋を開ける。


 中はビニールに入ったクリーニング済みの制服が大量に入っていたので、ぴったりのやつを見つけるために、引っかき回す…………


 「……コレで良いかなぁ……」

試着を繰り返すこと数回、なんとか体に合った制服を見つけた。


 貸し出しノートに戦闘員番号、小動高男子制服一式とサイズを記入する。


 ……ふと、興味本位で前のページを覗き見ると、貸し出し履歴に、Dr.ヘッドランドの名前が沢山あった。


 (ナース服とかチャイナ服とかキャビンアテンダントとか……何してるんだ、あの人は? 意外に暇人?)


 呆れつつも、さらにパラパラと捲る。


 (おいおい、女医の衣装借りてるよっ! 何時も白衣なんだから、女医を借りる必要ないよねっ!?)


 思わず熱心に、貸し出しノートを読んでしまう。


 (うわっ、カラー1将軍のボンデージまで……あああっ!? シャイニング・ピンクの衣装まで借りてるよっ!? 何を借りているんだっ、あの先生はっ!?)


 と、いうか、諜報課はシャイニング・ピンクの衣装なんて、どうやって手に入れたんだ?


 「……キリがないから止めよ。もう学校に行かなきゃ……」


 気になりながらも、あまりに不毛だと思い、貸し出しノートを置いた。


 衣装部屋を出る。


 更衣室に戻り、時刻を確認すると、七時少し前だった。


 この時間なら一旦うちに戻るのは止めて、このまま学校に行った方が良いだろう。


 ロッカーから鞄を取り出して、更衣室を後にする。


 有限会社お土産べんてんてんのドアから出て、弁財天仲見世通りへ。


 弁財天仲見世通りの店々は、早い所ではもう開店準備を始めていた。


 観光客はいないが、お店の従業員さん達がちらほらいるので、自転車を押しながら弁財天仲見世通りを下る。

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