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隣の部屋に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする  作者: 夕姫


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38. この状況なら100人中100人が同じ反応する。だからオレは悪くない。

38. この状況なら100人中100人が同じ反応する。だからオレは悪くない。




 オレと白石は、とりあえず流れるプールに入ることにした。プールサイドから階段を降りて、ゆっくりと水の中に足を踏み入れる。水は体の熱をスッと奪っていくようで、ひんやりとして気持ちいいな。夏の暑さを一瞬忘れさせてくれる感覚だ。周りでは、浮き輪に乗ったり、ただ歩いていたり、様々な人が流れに身を任せている。


 オレが水の中に入ると、白石は入口の浅いところで立ち止まったまま動かない。顔色も心なしか青ざめているように見える。


「ん? おいどうした白石。入らねぇのか?」


「いや……さっきは先輩とのデートでテンション上がってたから言わなかったんですけど、その……実は私、泳げなくて……ほ、ほら!先輩を見ると、そこまで水が来てるなら、私が入ると足がつかないから怖いし!」


 白石は言い訳するように、オレの体の水深を指差した。泳げない?泳げないなら、プールなんて来ても仕方ないだろう。


「は?じゃあなんでプールなんか来たんだよ」


「先輩に可愛い水着姿を見せるためじゃないですか!」


 白石は、オレの問いに胸を張ってそう言い放った。正直、そんなの知らんのだが。それにしても泳ぐの苦手なのか。普段のあの自信満々な態度からは想像できない。


 ……面白い。


 白石が怖がる姿を見れるのか。少しだけ意地悪な気持ちになった。


「じゃあ肩貸してやるよ、それならいいだろ? せっかく白石と一緒にデート(?)に来てるのに、残念だなぁ~」


 オレは、白石の「デート」という言葉を引用して、少しからかうように言った。肩に掴まれば、足がつかなくても大丈夫だろう。それに、少しはオレに頼る姿が見れるかと思うと悪くない。


「むぅ……先輩が私に意地悪する!わ、分かりましたよ!入りますよ!」


 白石は、顔を真っ赤にして悔しそうにそう叫んだ。そして、意を決したようにゆっくりと水の中に足を進める。水がどんどん体の下の方まで上がってくるにつれて、顔色はさらに悪くなるように見えた。そしてオレのすぐそばまで来ると、ガシッと、オレの肩に掴みかかってきた。


「おい……肩を掴む力を弱めてくれないか?痛いんだが?」


 白石の指が肩に食い込んでいる。痛い。だが、白石は首を横に振る。


「むむ、無理です!絶対に離しません!」


 白石は、ビビリながらもオレの肩を掴む力は一切緩めない。その必死な様子を見ていると、いつもオレがこいつの突拍子もない行動に振り回されて迷惑している分、たまには白石にもこういう、どうしようもない状況の味を味わせてやるのも悪くないという気持ちになった。ザマアミロと内心で思う。


 白石は、肩に掴まったままどうすれば水の中で安定するか考えたらしい。そして突然体の向きを変えた。


「これだと……あっ!そうだこうして、はい!これなら平気ですね!」


 そういうと、白石はオレの肩から腕を回しオレの背中に回り込んだ。そして、まるで子供がおんぶをせがむようにオレの背中にしがみついてきた。水中でのおんぶのような体勢だ。


 というか、ちょっと待って……? これ、かなり密着してないか? 背中に白石の体の柔らかい感触がダイレクトに伝わってくる。え、ちょっ……当たってるんだが?柔らかいものが背中に当たっているんだって!? パニックだ。水の中という状況も相まってさらに混乱が増す。


「あれ?先輩、早く流れてくださいよ?」


 白石は、そんなオレの内心を知る由もなく背中にしがみついたまま呑気にそう言った。流れるプールに入ったのだから流れに身を任せようとでもいうのだろう。


「いや……今はちょっと無理かな?」


 オレは、声が少し上ずったかもしれない。この密着した状態で、しかも白石を背負ったまま流れるプールを流れる? 無理だ。今は……無理なんだ……


「え?どうしてですか?」


 白石は、オレの言葉の意味が分からないというように首を傾げた。その間近にある、濡れた髪と首を傾げる仕草。そして無邪気な、なぜ?という表情。思わずドキッとする。顔が、カッと熱くなるのを感じた。


「もしかして、先輩……」


「何も言うな!」


「……男の子ですね先輩?」


 白石は容赦なく指摘してきた。これは、お前の行動に対する、正常な反応だ!


「うるせぇ! 流れるプールはやめだ!」


 オレは、白石を背中から下ろし、流れるプールから出ることにした。このままいたら、何を想像してしまうか分かったもんじゃない。そしてこれ以上、白石にからかわれてたまるか。


「先輩、少し休みますか? 私が膝枕でもします?」


 白石は、自分の太腿をポンポンと叩いている。何を言い出すんだこいつは。どこまで図々しいんだ。


「別にいいよ……」


「遠慮しないでくださいよ~。ほら、どうぞ!」


 白石は、さらに膝枕を勧めてくる。何がしたいんだ、こいつは……休みたいなら、普通にベンチに座ればいいだろうが。オレはそのまま近くのベンチに腰掛ける。


「先輩が私に意地悪するから悪いんですよ?それ、自業自得です!あっ!因果応報か!」


 白石は、急に少し偉そうな口調で、そして妙に難しい言葉を使ってオレを非難し始めた。自業自得?因果応報?なんだその四字熟語は。さっきオレが意地悪したから、今のオレの困惑は当然の結果だとでも言いたいのか。


「……ムカつく。もう帰る」


 四字熟語まで使いだしたか、こいつ。しかもオレを責めるために。すごくウザいんだが……もう、これ以上付き合っていられない。本当に帰ろう。


「ごめんなさい。冗談ですよ~まだ遊びましょうよ~」


 しかし、白石はオレの「帰る」という言葉に、慌てて訂正してきた。そしていつもの甘えるような声で、遊び続けることをせがむ。くそっ。分かっているだろうが、この状況は全然冗談じゃないぞ。


 まぁ……まだ来たばかりだしな。せっかくプールに来たのだから、もう少しプールに入らないと勿体ない。この、白石という予測不能で面倒な存在に振り回されるのもいつものことだ。


 こうして、オレと白石は流れるプールから出て、別のプールへと向かうことになった。

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