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隣の部屋に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする  作者: 夕姫


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33. 白石は生粋の職人気質。何でもかんでも自分の色に染め上げるらしい。

33. 白石は生粋の職人気質。何でもかんでも自分の色に染め上げるらしい。




 今日は終業式だった。校長先生の長い話を聞きながら、ぼんやりと窓の外の青空を眺める。明日から夏休みに入る。宿題も出るから楽しいことばかりじゃないけど、それでも長期の休みは嬉しいものだ。解放感に満たされた生徒たちが、一斉に校舎からあふれ出ていく。オレもその流れに乗って、いつものように真っ直ぐ家に帰ってきた。


 まぁ……いつものように小さい茶髪の塊も居るんだけどな。


 白石が、部屋の壁にかかっているカレンダーを指差した。それは特に予定を書き込むこともなく、ただ日付が記されているだけの殺風景なカレンダーだ。


「ねぇ先輩。そこのカレンダーとってください。予定書いておくので」


 白石は、当然のことのようにそう言った。予定?何のだ?そして、なんでオレの部屋のカレンダーなんだ?


「は?オレの部屋のカレンダーなんだが?」


「どうせ先輩は使わないじゃないですか。カレンダーが可哀想ですよ!」


 なんだよ、カレンダーが可哀想って?予定は書き込んでないが、毎日見てるんだから使ってるだろ。と思いつつも、オレは壁からカレンダーを取り白石に渡す。


「ありがとうございます。先輩は夏休みはご実家に帰るんですか?」


「え?ああ、毎年この日に花火大会があるからな、一応手伝いをしてるんだ。だからこの日からこの日まではいないぞ?」


 オレは、夏休み中に実家に帰省する期間を白石に伝えた。これで、少なくともその期間は一人きりの時間が確保できる。


「じゃあ、それ以外の日は私と一緒でいいですよね? 決まり!」


 白石は、オレの実家滞在期間を聞くなり、間髪入れずにそう言い放った。そして、持っていたペンを取り出し、カレンダーに何かを書き込み始めた。嫌な予感がする。


 そのまま白石は、カレンダーのほとんどの日付に赤いペンでグリグリとハートマークを書き始めたのだ。


「待て待て!勝手に書くなよ!」


「大丈夫、綺麗に塗りますよ。私こういうの得意ですから!」


 そのハートマークが、夏休み期間の日付を次々と埋めていく。オレの予定は完全に無視されている。しかも丁寧にハートマークが塗り潰され、初めからそういうデザインかのように見える。ウザいし、もう飾りたくないんだがそのカレンダー……


 オレの夏休みが、白石によって勝手に決定されていく光景をただ見ていることしかできなかった。


「ちょっと待てって。毎日一緒にいるのに、たまには1人にさせろよ!」


 オレは慌てて、白石の手を止めようとした。せっかくの夏休みだ。少しは一人でゆっくりさせてほしい。


「だってせっかく付き合って初めての夏休みなのに、別々に過ごすなんて寂しいじゃないですか!」


「付き合ってねぇって言ってんだろ!」


「それに先輩。この前、私が実家に帰った時、寂しかったですよね?」


 うっ……確かに、あの時は白石がいない日常に妙な違和感を感じて、ほんの少しは寂しいとさえ思ったかもしれない。でも、それをこいつに言われるとなんかムカつく。


「いや、あれはだな……」


「私は先輩と一緒にいたいんですよ?それくらい分かってくれますよね? まったく!ワガママ言わないでくださいよ~もう~!」


「どっちがワガママなんだよ!」


 オレは、お前の都合に付き合って一人になりたい時間すら犠牲にしろっていうのか?白石は、オレの反論を聞きながらも、その顔はどこか余裕がある。そして、少しだけ顔を上げて上目遣いでこちらを見ている。あの、困ったようなそれでいて人を誘惑するような上目遣いだ。こいつ絶対わざとやってるな……


「そんな寂しいこと言わないでくださいよ。私は……先輩と一緒に居たいだけです……」


 ……こいつオレがこの顔に弱いことを知っていて使っている。くそっ。ウザいんだがその顔。そしてそれを見て、またしても心が少しだけ揺らいでしまう自分がいるのが悔しい。


「ということで!ほら、夏休みの計画を組みましょう!」


「はぁ……あまり外には出かけねぇからな?」


 せめてもの抵抗として、活動範囲だけは指定しておいた。夏休み中ずっと、人目のある場所で白石と二人きりというのは避けたかった。


 結局、オレは白石とともに夏休みの予定を組むことになるのだった。楽しみにしていたはずの一人きりの長い休みは、白石の計画によって、完全に白石との時間へと塗り替えられてしまった。


 カレンダーに書かれた赤いハートマークが、オレの夏休みを白石の色に染め上げていくように見えた。抗いきれない敗北感を味わいながら、オレは自分の夏休みがもう白石のものになってしまったことを悟ったのだった。

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