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With a . . .  作者: 魚野れん
Come Home!
1/6

Come Home! 1

まだBL臭はないですが、今後そういう文章が増えていきますので、苦手な方はご注意ください。

 スタジオにどたどたと大きな音をさせながら駆けてくる人物がいた。その形相は必死で、誰もが道をあけてしまうほどのものだった。

「ひぃ〜〜ろ〜〜きぃいぃぃぃぃ!」

「ぁん?」

 いかにも面倒が自分に降りかからんとしている、といった雰囲気で振り返る。顔には面倒だと書かれていた。

「ヒロキ、頼むっ!

 俺を泊めてくれ!!」

「は?ヤダ」

 ヒロキから面倒だから、向こう行けと言わんばかりのオーラまで出始める。そろそろヒロキの機嫌が悪くなる。だが、現在必死で自分の寝場所を確保しようと奮闘しているタクミには伝わっていなかった。

「オネーさんに、出ていけって……

 言われちゃったんだよぉおぉぉぉぉ!」

「ジゴージトクじゃん」

「くだらん」

 にこにこと後ろから茶々を入れてきたのはユカリだ。今日はピンクに染めた髪をポニーテールにしている。珍しく今日は前髪を下ろしており、緩やかなウェーブを描いていた。

 もちろん言い捨てたのはヒロキである。既に、面倒だから相手にしたくない度がマックスに到達している。

「ひでえぇぇぇえぇ」

 始終絶叫しているタクミだが、コレには事情があった。しかしそんな事情なんかどうでも良い彼らからしてみれば、煩くて邪魔なだけだった。とうとう我慢しきれなくなった――とはいえ、我慢が保った方なのだが――ヒロキがタクミを蹴り上げようとした。

「――何やってんだ?

 お前ら」

 彼の声を聞いたタクミが標的を変えた。だが、泣きつくだけで寝場所を確保させてくれといった気持ちは全くないようだった。

(さとる)さぁあぁあぁぁん!」

「おう、どうした?」

 目尻に涙を浮かべる勢いで、惺にしがみつく。苦笑しながらタクミの頭を撫でてやる。

「俺、実家に住んでなくて男友達とか、女の子の家に泊まらせてもらってるって知ってた?」

「いや……そこまでは把握してないが」

 突拍子もない話題に、早速ついていけないかもと惺は遠くを見つめた。

「それで、先週くらいからオネーさんの家に泊まってたんだけど」

「うん」

「オネーさんがね、『あんた、本当はつまらない男だったのね。期待して損したわ。もうここには来ないでちょうだい』って……!」

「はぁ」

 マネージャーである惺はメンバーの事情などもサポートする役割であるが、早速関わったことを後悔しそうな顔をしている。視線が遠い。

「そんなコトになって泊まるとこがないから、ヒロキの家に泊まろうかと思ったんだ」

「俺はそんなのゴメンだ」

「って、言うんだ」

 大まかな経緯を話すと、タクミは少し気分が落ち着いたのかしがみつくのを止めた。おや? と思う気持ちを抑えた惺が彼を覗き込む。彼は下を向いたままで表情は見えなかったが、悲しそうな表情だけはしていないことが雰囲気から分かる。

「惺さん、ゴメンなー

 練習時間になってる」

「あ、あぁ」

 すっと惺から離れたタクミは、背伸びをしながら遠ざかっていった。少し遠ざかると、タクミが振り返った。

「惺さーん」

「ん?」

「黙って聞いてくれてありがとな!」

 さわやかな表情で礼を言うタクミに、片手をあげて惺は答えた。




「おい」

 練習が終わって一段落したタクミに惺が声を掛けた。タクミは持っていたペットボトルを近くのボードに置く。他のメンバーは我先にと逃げるように帰ってしまっていた。

「どーしたの?」

「泊まる所なくて、困っているんだろ?」

「うん」

「俺の家に来るか?」

「え……」

 一瞬固まったその表情に、断られる予感を惺は感じた。しかしタクミの口から出た言葉は全く逆のものだった。

「マジ、良いの!?」

 今にも飛びつきそうな勢いに圧倒されながらも、こくこくと頷く。タクミはきらきらとした笑みを浮かべている。ライブでやったらファンが喜ぶだろうに、と関係のないことを考えながら苦笑した。

「やったっ!

 急いで準備してくるからここで待ってて!」

 そう言うなり、彼は走り去っていった。数分後には、そう多くない荷物を持って現れることになる。


 荷物の量を見て、意外そうな顔をする。惺はもう少し、荷物が多いと思っていたのだ。タクミが持ってきたのは大きめの鞄と折りたたみ自転車だった。

「荷物積んでいるからその間に自転車を畳んでおいて」

「はーい」

 惺は愛車に荷物を積み込んだ。大きさの割に重い。後で中身は何なのか聞くことにしようと彼は思いながら少年を待つ。すぐに少年はやってきた。

「惺さんお待たせっ!」

 小さくなった自転車をトランクへ乗せる。きょろきょろと車内を見ているタクミに、車へ乗るよう声を掛けて自分も運転席へと乗り込んだ。

「惺さん、家どこなの?」

「ん?結構近く」

 惺の返事は曖昧で、タクミにはよく分からなかった。どことなく不満そうなタクミをよそに、惺は車を動かした。

「ここから10分くらいの場所にあるんだ。

 建物だけなら、お前も見た事あるんじゃないかな」

「ふぅん」

 惺の家は、一体どんな所なんだろう? 憧れの人物の家を見られる(しかも使う事を許可された!)という貴重な機会に胸を膨らませる。そんな期待を受けているとは知らずに、当の本人は彼を乗せたまま運転を続けているのだった。

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