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祇園守紋を掲げよ 〜立花家戦記〜  作者: ワールド
九州の争乱と主家の行方
14/35

三倍の差をはねのけろ! 〜開戦〜

「伝令!小野様の部隊が優勢。敵を押し込んでおります。これに合わせ二陣より信澄様の部隊が前進し左右との連携を保っています」


「長秀の隊と家忠の隊が左翼から攻勢に出たらそれに合わせ中央の部隊の一部は右翼側の側面を突くように伝えろ」


当時は無線機などないしほとんどが領民兵

戦闘に参加する、待機する、攻撃する、守る、撤退する…まあそのくらいにしか指示は通らない

陣形も細かく敷ける訳がない

今のように中央、右翼、左翼に分けて後詰めの投入のタイミングなどを指示する以上にできることはない

細かい作戦なんて実行できないのだ

だから指示は大まかに出す


「策が外れたのは痛いな…」


「そもそも作戦なんて成功する方が珍しいんだ。当たり前だ」


「慰めてくれているのかい?誾千代?」


「馬鹿言え、私は事前の策が失敗するなど当たり前なのだからへこんでどうすると言っているだけだ」


「慰めてくれてるじゃない」


「違う!」


策を外し落ち込んでいる統虎に誾千代は発破をかける


そんな中普段なら統虎を軽口をたたきながら支える武将が右翼を見つめている


「今のところは問題なしか…」


ほとんどの箇所が乱戦模様の中今泉側の攻勢が一番激しい右翼はよく統率のとられた動きを見せる。まるで全員が現代の正規兵かのように…



「第二隊、構え!…放て!」


「撃ち終わったら下がれ!鉄砲第一隊は弾込め完了次第構え!俺の指示で撃て!」


「引け!落ち着いて鉄砲隊の援護位置まで下がれ!」


立花方右翼は雑賀衆、彼らも普段は農民、漁師ではあるが傭兵として訓練や実戦経験をそれなりに乗り越えてきている

さらに彼らの教官は現代の軍隊というものを知っている重朝(颯)だ

当然一人一人の精強さ。部隊としての練度。いずれを取ってもとにかく強い

鉄砲を使わせれば日本一である上に集団戦闘を身につけたことで近接戦闘にも十分対応している


決して他の領民兵達が弱いわけではない

むしろ最近は税率を下げたことにより喜びにあふれている。志願制を取っているため自らの武術に自信があり士気が高い者だけが参加しているのだ。そもそも立花領民全体が新たな装置や鯉、家畜などによって畑作業の必要時間は大幅に短縮され時間のできた午後に自主的に訓練をする領民もたくさん出てきているしこれに教えをつける兵士もいる

新たな領主の統治を維持したいと彼らも考えたからこのような事例が出きた


しかし個人の武勇を磨くだけでは洗練された軍隊の動きなどまねできるようになるわけがない

徹底的に訓練している彼らでもどうしようもないのだ


集団での戦いに特化した部隊はその強さを見せつける




「下がりつつ一射!」


「重秀!あとどのくらいだ!?」


「わからん。旦那様は左翼へ後詰めとして例の部隊と丹羽殿の兵を突っ込ませるらしい。そのときに中央より横槍を入れさせるからそれまで耐えて引き込めとのことだ!少なくとも長い時間では無いだろう」


「だな…しかし例の部隊を使うのか?」


「ああ、数の足りない分は通常騎兵で補うそうだ」


「初めて聞いたときはあり得ないと思ったが…あの馬ならできなくはないかもしれんな」


「できるだろう。ただし大量に用意できないのに変わりはない。あくまで精鋭部隊あるいは切り札の部隊としての運用だろうな」




家忠は預けられた騎兵隊を率いて疾走していた

丹羽隊の騎馬武者が併走し歩兵はすぐ後方にいる

騎馬隊で重要なのは速度を出すタイミングだ


早すぎると騎馬が疲れてしまうし遅いと勢いが乗り切らない

今は歩兵の駆け足の速度に合わせて進んでいる


「家忠殿、そろそろでは?」


「そうだな…参るか」


長秀と家忠

両者とも落ち着いた性格で普段から仲がよかった

正確に言えば家忠は隠居して丸くなっただけだが…


そんな二人が速度を上げる


「騎馬隊突撃用意!足軽は駆け足で同じく敵へ突撃せよ」


「若き兵達よ!奮起せよ!我は隠居した身なれどあの程度の敵など簡単に蹴散らせる!腕に自信なき者はすぐさま足を止めてかまわん!立身出世を望むものは鬨の声を作り敵に突撃せよ!打ち捨てじゃ!!全員の手柄はわしが保証するぞ!!」


突撃が始まった



左翼は細川隊が担当だったが苦戦を強いられていた

もともとの予定の追撃ではなく防衛戦になっている上に指揮を執る忠興は別働隊の指揮を執っており不在なのだから士気が低いのも当然だ

これを受け当初二陣にいた十時連貞の軍が援護に入り戦線を立て直していた



「持ちこたえろ!」


「伝令!右方より家忠様指揮の騎馬隊が突撃丹羽隊がこれに続き敵が浮き足立っています」


「ついに来たか…」


後ろを見つつつぶやく


「家忠殿ならしくじることはないだろう。長秀殿も優秀。ならやることは一つ!」


槍を突き上げ鼓舞しつつ下知する


「全軍突撃!打って出よ!!」



「ふむ…思った以上に活躍しておる…」


のんびりと呟きながら六人目を突き殺す

その武勇は隠居しようとも少しも変わっていなかった


周りの騎馬隊もなかなかの戦いぶりを見せていた


「なんだこいつら!?槍をもろともしないぞ!?」


「おいらはまだ死にたくねーよー」


「助けてくれー!踏み潰される-!」


そんな中騎馬武者が後詰めに現れる


「確かによき馬ばかりの部隊のようだが…腕の方はどうかな」


ニヤリと笑いながら突っ込んでいく

狙いは前方の騎馬武者

騎馬に乗っているとき必ず利き手でない方は弱くなる

ほかのものと戦っている間に敵が槍を持っていない(利き手でないと思われる)左側へ突撃する


狙いにしていたものが敵を倒しこちらに気づく


(しかしもう遅い!利き手でないのならこの攻撃を受けることができるほど早くはさばけない!もらった)


その直後彼は死んでいた

自分が勝ったと思ったまま絶命する騎兵

そして狙われていた騎兵は左手に持っていた筒を腰に戻し違う筒を取る


統虎たちが言っていた例の部隊の一人

彼らは竜騎兵

一般的にいう騎馬鉄砲だ

しかし戦国時代にこれは実際にされていなかったという

有名な伊達政宗の隊も射撃の際はいちいち下馬して撃っていたそうだ

しかし、この部隊は馬上筒を改良して一人4挺づつ持たせている


「カバーしにくい利き手でない側も力を入れずに敵を倒せる鉄砲を持てば何回かはカバーできるんじゃね?」という統虎の安易な発想から作られた部隊だが

その安易な考えが大成功する

きちんと鉄砲の音に慣れさせている立花の馬はすぐ上で撃っても混乱せずきちんと戦いを続けている

力もほとんど使わないし近距離なら外れない

利き手でない方の手でも戦えるようになり大成功

彼らは結果騎馬鉄砲隊の建設に成功したのだ


そして彼らは敵を蹂躙していく

いまだに100ほどしかいないがその強さは絶大で四本の銃を大事に温存しながら戦い、すべての銃を撃ちきったら後方まで引いてきて弾込めする

まさに洗練されていた

もともと立花の騎馬隊は止めることが困難となっていたがさらに難易度が上がったのだ


さらに状況は好転する


「進め!後ろを突き、突っ切って味方と合流せよ」


孤立していた忠興隊が後方より奇襲。予期しない形で挟み撃ちとなり騎馬隊を押さえられなかった今泉右翼は壊滅状態に陥り敗走した


さらに右翼では引き込んだ結果間延びした敵の横腹を信澄隊が突いた

雑賀衆がこれに合わせて反攻開始

よって右翼は超激戦となった

中央の進軍も止まらない

そしてついに立花は本陣動き出す


「行くぞ!」


騎乗の人となった統虎と誾千代が本陣の部隊とともに前線の方へ向けて走り出した

この戦に決着を付けるために…

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