第61話 説明ってどうしても長くなるよね
説明回です。
第61話 説明ってどうしても長くなるよね
「伝説級スキル……」
「そう、スキルの中でも最上位に位置するスキルだよ。あ、因みに今回も戦闘力には直結しない超便利なスキルだから」
「またそれかよ」
シェリーとの初邂逅時にも同じような事があった。
所謂チートと言うやつを期待しだのだが、残念ながらと言うか良かったと言うか、それは便利なスキルだった。
いや、役には立ってるんだけど、立ってるんだけど!
もちろん感謝はしてるさ。
思考から抜け出すとセフィーナが未だにドヤ顔だった。
イラッとしたので鼻を摘んでやると「みゃッ!?」と悲鳴を上げる。
幾分か気が晴れたので放してやると、鼻を押さえてこちらを睨んできた。
が、当然の如くスルー。
スキルの話しに移る。
「伝説級スキルは一応1つ持ってるが……使用不可なんだよな。そいつは俺に使えるのか?」
セフィーナは非難がましい視線をこちらに向けていたが、気に留めていないのが分かったのか諦めたように話し始めた。
「……もちろんだよ。私が渡すスキルは超便利スキル。使えないと話にならないからね。それに君が持っているあのスキルは少し特殊だから。条件を満たさないと受け取ることも出来ないし」
「へぇ、その条件とか使い方を教えてもらうことは?」
追憶の回廊について少し知っているようだったのでセフィーナに聞いてみた。
もしかしたら有益な情報を得られるかもしれない。
だが、色良い返事は貰えないようで、セフィーナはゆっくりと首を振りながら告げる。
「無理だよ。自力で見つけないと意味が無いからね。私は手伝えないけど頑張って」
「そうか……、なら仕方ないかな。それじゃあ、その超便利ってスキルについて教えてくれ」
「もちろんだよ!!」
俺の返事を聞いたセフィーナは待ってましたとばかりに頷くと、目を輝かせながら話し始めた。
追憶の回廊については残念だったが気にしても仕方ない。
今は割り切ることにしよう。
それよりも今は新しいスキルに興味が出てきた。
「私がえげる伝説級スキルとはその名も………『メニュー』!」
「……『メニュー』?なんか微妙だな」
飯食うときにでも見るのか?
「そんな事無いよ!すっごく便利なんだから!」
セフィーナは遺憾だとばかりに声を荒げて抗議をすると、メニューは役に立つのだと証明するように説明を始めた。
「良い?『メニュー』はステータスみたいに呼び出して使うの。『メニュー』を開くと上から、ステータス・インベントリ・装備・マップ・設定が表示されるんだよ」
何だそれは。
まるでゲームだ。
「メニューの中にはステータスの項目が入っているのか?」
「そうだよ。だってステータスが無いとメニューって気がしないじゃん?」
まるでゲームどころじゃ無い。
最早ゲームだ。
まあ、便利だから良いか。
変なことは気にしないに限る。
「まずはステータスから。能力値とスキルが見れるのは勿論、偽装と隠蔽のスキルで数値を細かく弄れるようになっているよ」
なるほど。
今までも数値は弄れていたが大まかな設定しか出来なかったからな。
便利と言えば便利だが使うことは無いかな。
現在もステータスは偽装してるし。
能力値を3000程に設定して、バレたらマズイ物も見えないようにしている。
勿論、ライムとフィラムのステータスもだ。
「むう……、反応が微妙だね。それならイベントリを紹介するよ。インベントリは簡単に言うと道具を入れておける収納スキルだよ」
「それならもう持ってるよ。アイテムボックスがある。収納なら間に合ってるんだが。なあ、シェリー?」
「ん?……まあ、少し違うんだぞ。……説明を聞いてやってくれ。話したそうにしてるからな」
シェリーの言葉に視線を向けるとセフィーナは少しむくれていた。
自分から話しそうに無いので促してみる事にする。
……子供かよ。
「へーそうなのかー、違うんだー、教えて欲しいなー、俺わかんないからなー、誰か頼れる人は居ないかなー」
セフィーナの方をチラチラと見ながら棒読みなセリフを送っていると奴は気を良くしたのか、態度を大きくして話し始める。
「チッチッチッ、仕方ないな〜。まだまだ甘いようだね、ワトソン君」
「誰のこと言ってんだよ。何処かの名探偵にでもなったつもりか」
「インベントリと言うのはだね「おいこら無視すんな」アイテムボックスと違って30種類しか道具を入れられないんだよ」
「やっぱり劣化版じゃ無いか。どういう事だ?」
「だから用途が違うの!簡易のアイテムボックスとしても使えるけど、このスキルは、イメージするだけで瞬間的に道具を取り出す事ができるんだ!アイテムボックスからイベントリに持ち物を動かしておけば、剣だろうがポーションだろうがすぐさま取り出す事ができるのさ。ただ、自分に接しているか、距離がごく近くで無いと取り出す事は出来ないけどね」
ふむふむ。
確かにすごく便利だ。
アイテムボックスは手を突っ込む事で道具を取り出す。
だが、イベントリは意識するだけで道具を取り出す事ができる。
という事はつまり、戦闘中にポーションを取り出して使ったり、武器を取り出したりできるという事だ。
戦闘力には直接関係無いが確かに便利だな。
「便利なのはわかった。訂正するよ、続けてくれ」
「むふふ〜。ようやくこのスキルの有用性がわかったようだね!」
すごいでしょ!とばかりに胸を張るセフィーナ。
スキルがすごいのだがそこは突っ込まない事にしよう。
「さあ、次は装備だよ!装備はね、ゲームみたいに画面で装備を変更できるんだよ!」
「確かに便利だな。鎧とかなら直ぐに着ける事ができるし。着る手間が省けるのは便利だが……」
それだけだと微妙だな。
「もちろんそれだけじゃ無いよ」
おお、俺の言いたい事が分かったのか。
セフィーナのくせにやるじゃないか。
「何だか失礼な事考えてない……?むう。……装備にはマイセットと瞬間脱衣の機能が付いてるんだ。マイセットは、登録時にしている装備品を登録できるんだよ。マイセットも装備できるから準備がお手軽だよ。あと、マイセットは幾つか登録できるからね。瞬間脱衣は一瞬で装備を脱ぐ事ができるんだ。脱いだ装備は優先的にイベントリへ、空きが無ければアイテムボックスへ送られて、装備がなくなる事は無いから安心してね」
なるほどなるほど。
登録したマイセットを装備すれば一瞬で準備が可能だ。
これは朝に便利だな。
着替えが楽チンだ。
瞬間脱衣は夜だな。
別に変な意味は無い。
冒険者やるんだから普通に便利なだけだ。
装備が楽に脱げて、着替えるのが楽だ。
寝巻きを登録したら更に楽だ。
……これル◯ンダイブできるな。
いや、しないけれども。
「更にマップ!地図が見れるのは言わずもがな。視界に表示する事も、頭の中に浮かび上がらせる事もできるよ。ただし、自分が行った付近しか開示されないから気をつけてね。一度の開示範囲は自分の気配察知と同じ。表示範囲は変更可能。気配察知と併用で敵味方の位置も表示できるよ」
マップ機能はありがたい。
俺はこの世界の事を知らないからな。
地理関係もわからない。
そこにこのマップ機能は渡りに船だ。
ただ、自分が行った事のある場所しか開示できないのは少し不便だな。
まあ、それだけでも補って有り余る。
ただ気配察知による対象のマップ表示はそこそこかな。
自分の気配察知で感知してるんだから表示したところでって感じかな。
マップ表示だから正確な位置がわかるだろうし、捨てたものではないと思うけど。
「最後は設定だよ。これは簡単に言うとメニューの表示設定なんかを弄れるって事かな。これで全部……どうかな?」
全ての説明を終えたセフィーナがこちらを伺ってくる。
その瞳には多くの期待と……少しの怯え?
おそらくは俺の評価が気になるってところだろうが、そんなおびえられるようなことしたかな?
……癪だがこのスキルはかけ値なしに便利だ。
これがあるのと無いのでこれからの生活の便利性が大きく変わってくるだろうぐらいには。
「そうだな。一言で表すと、すげぇ気に入った。とても便利そうだ。助かるよ」
「ほんと!?良かった!ふふふ……」
俺の答えは満足に値したのか無邪気に笑っている。
改めて見てみれば彼女は凄く可愛い。
紫の髪に金色の瞳。
一歩間違えば下品にさえなる色なのに、彼女からはそんなものは感じられない。
美しいとさえ思えるだろう。
初対面の印象って大事だよな。
……もう少し優しくするか。
「それじゃあ、君にスキルを送るよ」とセフィーナ。
自分の目の前の空中に指を走らせて何かを操作している。
そしてこちらに向けて指を振ると
《神からの干渉を確認。スキル『メニュー』を獲得しました》
と表示される。
ジーバと同じような事をしていると思ったらスキルが送られてきた。
それに空中で操作していたものは……
「なあセフィーナ。今操作していたのって」
「これはね、メニューの上位互換みたいなものかな。神専用だから君は使えないけどね。最近作ったんだよ」
「そうなのか」
メニューの上位互換ね。
比べものにもならないくらい便利なのだろうか?
まあ、神専用なら使えないし関係無いか。
「残念だけどそろそろ時間だぞ」
「あ……本当だ」
シェリーの言葉を聞いて少し残念そうな声を出すセフィーナ。
そのしょぼくれている姿があまりにいじらしかったので、つい手を頭の上に乗せてしまった。
ピクッと身じろぎしたが嫌がってはいなかったので、そのまま頭を撫でる事にする。
「それで、時間ってなんだ?」
「そろそろお前に干渉し続ける限界が来たって事だぞ」
「そういう事か」
「安心しろ。次もまた会える」
満面の笑みで告げたシェリーはそのまま自分の目の前に指を走らせる。
「私からのちょっとした選別だ。受け取るんだぞ」
《神からの干渉を確認。スキル『王の器』の解放スキル『大器晩成』が『大器早成』に変化しました》
「これは……ありがとう」
このスキルの効果は名前からしてわかる。
きっと俺のレベルアップの鈍化を好転させてくれるだろう。
「そうだ!言い忘れてたんだけど設定から、私達にメニューの改良案を送る事が出来るから不満があったら送ってね」
「分かった。至れり尽くせりで感謝の声も出ないよ。ありがとうな」
「出てるよ!?感謝の声出てるよ!?」
「さて、騒がしいのはほっといて帰るか」
「そうだな。またな、なんだぞ」
「酷い!?」
その声が終わると俺の視界が闇に包まれ始める。
「じゃあな、シェリー、セフィーナ。助かった。ありがとうな」
感謝の念からか自然と笑みが零れる。
「うむ。それなら良かったんだぞ」
「……ずるい。最後にそんな事するなんて」
シェリーは満足げに。
セフィーナは何処かの拗ねたように。
「……シオン。死なないでね」
「ん?当たり前だろう?俺が死にそうに見えるか?それよりも最後くらいは笑顔で送って欲しいんだが?」
何処か深刻そうな表情をしたセフィーナの心配を消し去るように笑い飛ばす。
俺の言葉を受けたセフィーナはその表情を笑顔に変えて送り出してくれた。
「そうだよね!また会おうね!」
「おう。当たり前だ」
そうして俺の意識は薄れていった。
シオンが居なくなった白い空間で2人の少女が言葉を交わす。
「大丈夫かな。シオン」
「さあな。だが、あいつが死にそうに見えるのか?」
「見えない……けど」
「なら信じるしかないんだぞ。過度な干渉は出来ないから。生きるか死ぬかはあいつ次第だぞ」
「そうだね……死なないで……」
ポツリと、流れた言葉が白く消えていった。
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「……ン。…………オン。シオン!!」
「うおぅ!?……なんだよ」
「さっきからずっと上の空だから声を掛けたんです。薬草もかなり採りましたし、そろそろ帰ろうかと話していた所です」
昨日の事を思い返していたら、目の前にサリーの顔があってビビった。
心臓に悪いから自重して欲しい。
「そうだな。そろそろ静まってる頃だろうし大丈夫か。帰ろうかな」
「僕もそれに賛成だよ」
「ぼくもだよ!早く夕ご飯が食べたいんだ!」
「グオオオオォォォォオオオオ!!」
ライムの言葉にほっこりしていたら邪魔が入った。
……どこのどいつだ?
「どうやら夕飯前にもう一運動しなければならない様だな」
フィラムの視線を追ったデニスが言葉を紡ぐ。
「オーガか……」
次は戦闘があります!
なるべく早めに仕上げるのでお楽しみに!




