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第56話 壮大な前振りには乗らざるを得ないと思う

第56話 壮大な前振りには乗らざるを得ないと思う



「おい、大丈夫か?」


呆れが多大に含まれた声をかけてくる。

お前心配してないだろ。


「なにも、問題ねぇよ。〈回復リカバー〉かけてるから」


プスプスと煙を上げている体を光魔法の〈回復リカバー〉で治しながらガザルに目を向ける。

正直凄く痛い。

でも言わない。

だって男の子は我慢の子だから。

キモイって?やかましい。


俺がフィラムの鬼対応により力尽きている中、ライムとフィラムは人化して、サリーとデニスの2人と仲良くなっていた。

サリーは俺の予想通り、フィラムの人化状態だと何の抵抗も無いようで、あっさりと仲良くなっていた。

取り敢えずサリーとフィラムの仲が険悪な物にならなくて良かったと思う。

今は俺の愚痴を言い合って親睦を深めているようだ。

うんうん、作戦通りだね!

わざと2人に怒られるような事をして、そこから仲良くさせる作戦大成功だな。

……………嘘です。過分に嘘を含んでいました。

九割くらい嘘でした。


「そっちじゃ無い。頭の方だ」


体の心配かと思ったら頭の心配でした。

ちょっと殴っても良いかな?

良いよね。


「それよりも探索隊からの報告だ。ダンジョン内で魔族と遭遇したようだ」


「何だと?」


殴ろうかとしていたらいきなり真面目な話に飛んだ。

切り替えが早い。


それにしてもダンジョン内に転移の罠をばら撒いたのも魔族だったな。

まさか結果の確認のために戻ってきたのか?


「少し話が飛ぶが、お前が見たという魔族の女は、お前の見た情報と、転移の罠をばら撒くことが出来る実力から、おそらく『嵐域テリトリー』だと思われる」


嵐域か。

たいそうな名前じゃないか。

強さに期待しても良いのだろうか?


「嵐域ねぇ。そいつは強いのか?」


「ああ、かなり強いはずだ。強力な空間系と風系の魔法を操り、さらに不思議な攻撃方法を持っている」


かなり強いと聞いて顔が緩みかけたが、次の言葉で引き戻された。


「不思議な攻撃方法?」


突如入ってきた不明瞭な情報に疑問の声を上げる。

ガザルも知らないのか、面白そうではない。


「ああ、何でも戦っている途中で体に力が入らなくなり、そのまま気を失ったらしい」


戦ってる最中に力が抜け、気を失う?

一番に思い浮かぶのは毒だが……。


「ところで何でそんな情報が入るんだ?そいつは殺されなかったのか?」


「何故か見逃されたそうだ。嵐域は魔族領の方へ帰る途中だったらしく、近くにいた冒険者パーティーが運悪く遭遇。必死に戦うも不思議な攻撃で速攻で撃破。その不思議な攻撃は後方の魔法使いにも届いたらしい」


広範囲に作用する攻撃なのか?

だとしたらやっぱり毒か?

しかし話を聞く限りでは違うような気もする。

なんか考えとかないとな。


「で、その話をするって事はダンジョンに現れた魔族ってのは」


「そうだ、強力な風系の魔法を使っていたらしく、その可能性が高い」


そうか、その話が本当なら、やはり確認しに戻ってきたというのが妥当なところだろう。


「ところでその根拠は?」


「うちの冒険者がやられて戻ってきた。泥だらけだったよ」


泥だらけだった?

それは可笑しな話だ。

風と空間の魔法を使う筈なのに。

そんなに激しい戦いだったのだろうか。


「4人組のパーティー何だがそれなりも定評があってな。それが一方的に負けてきたそうだ」


4人組……?

何だか会ったことがあるような、無いような。

ハハ、まさかな……?


「戦った魔族は最初剣で戦っていたんだが途中で折れて氷を使って剣にしたそうだ。その後、強力な風と水の魔法を使って2人を攻撃。リーダーも吹き飛ばされたそうだ」


戦闘中に剣が折れて氷で剣を作った?

いや、きっと偶然だろう。

2人を風と水で攻撃した?

そこまで珍しく無い。

よくあることだ。

リーダーを吹き飛ばした?

リーダーというのはそういうもんだ。

それが運命さだめだ。


「そして魔法使いの少女を怯えさせ、泣かせ、挙句の果てに地面に埋めたらしい」


ぐああぁぁぁあああ!

ごめんなさい!

俺です。

それ紛れもなく俺です。

悪気は無かったんです!

出来心だったんです!


「で、ダンジョン内でそいつに会わなかったか?」


「いや、俺は悪く無い」


「何故目を逸らす?それに今の言葉は何だ」


しまった。

焦ってつい変なことを口走ってしまった。

だがガザルならば騙せる筈……!!


「……嘘だろ!?まさかお前がやったのか!?」


はい、ばれました〜。

速攻でしたね。

いやはや、かえって清々しい。


ガザルは頭痛でもあるのか頭を押さえている。

体調が悪いのかと思って、大丈夫か?と言ったら睨まれた。

あ、なんかデジャブ。




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