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第54話 お約束をしたら怒られました

第54話 お約束をしたら怒られました



フェイさんがカウンターに戻った後、俺はマスタールームで話をしていた。

俺は出されたお茶をすすり、ふぅ、と一息いれてから


「………という訳なんだよ」


「そうなんだ、で……………それでわかるとでも?」


デニスが黒い笑みを浮かべてこちらに笑いかけてくる。

ガザルとサリーの2人もイラッとしてるのがわかる。


ですよね~。

説明のスキップというファンタジーのお約束をやってみたが通じなかった。

ちゃんと説明するからその手のひらの上でヒュンヒュン言ってる風止めてくんない?怖いから。

だめですか?そうですか。



そこから俺はダンジョンで3人と離れた後からのことを話した。

猫に殺されかけたこと。

ライムが人化したこと。

フィラムが仲間になったこと、などだ。

ダンジョンマスターのジーバの事も一通り説明した。

特に、隠すような事でも無かったしな。


「そうか、そんなことがあったのか」


「大変だったんですね、シオン」


「へえ、よく生き残ることができたね」


うん、なんか軽くない?


「そんなことよりも魔族か………」


深刻そうな顔をして考え込むガザル。

そんなこと!?

そんなことって言いやがったのかこのやろう。


「そうだね、そんなことよりも魔族が関わっている事の方がよっぽど重要だね」


ガザルの言葉に頷くデニス。

グッ!?またもやそんなことだと!?

ほら、もっと心配してくれてもいいんだよ?


「危険ですからね。再び何かされないとは限りませんから」


サリーも真面目な顔をして肯定した。


「ふふふ、この剣は切れ味が良さそうだな~」


誰も心配してくれないので部屋の隅で座って新しい剣を磨くことにした。

今から魔物でも倒してレベルを上げにいこうかな~。

剣でズバッて切ったら、血がドパッと出て綺麗だろうな~。

ふふふ、楽しみだな~。


「おい、誰かそこのアホを元に戻してくれ」


呆れたような声が部屋のなかにこだました。



――――――――――――



「で、どうするんだ?ダンジョンの事」


様々なアプローチにより無事復活した俺は、これからのダンジョンの対応について聞いていた。


「そうだな……。魔族が関わっているっていうお前の話をそのまま使うことになるだろうな。勿論お前の事は伏せるから心配するな。まあ、ダンジョンは当分閉鎖だな。魔族がまた何をしてくるかわかったもんじゃないからな」


ダンジョンの問題のせいでギルドが大変な事態に陥っているから、どう対処するのか疑問だったのだが驚きの返事が帰ってきた。

俺はガザルの答えに思わず目を丸くして聞き返す。


「俺の話、全部信じるのか?」


「なんだ、鳩が豆鉄砲食らったような顔して。まさか嘘なのか?」


「んなわけ無いだろ。ただ、何の疑問も持たずに信じるから………不思議に思っただけだ」


ギルドマスターとはギルドのトップだ。

それは大きな責任が伴う。

ガザルがなぜ成れたのかは分からないが「おいこら。てめぇ何考えてやがる」たかが冒険者見習い一人の話だけで判断して良いわけが無いのだ。

それこそ、確実な証拠が必要になるだろう、


「んで、そこんところどうなんだ?」


ガザルは、はぁとため息をついた後こちらを見る。


「めんどくさいから一言で言うぞ。……なんとなく、だ」


ガザルの言葉に俺は一瞬聞き間違えかと耳を疑った。

だってなんとなくっつったんだぞ、なんとなく!

誰だってそうなる。


「はあ!?なんとなくだと?他にもっとこう、それっぽい理由はないのか?」


「無い」


きっぱりと言い切った。

迷いも躊躇いも無い顔で言い切るから反論しようにもしづらい。

なんてやつだ。


「じゃあ、何でお前は俺達にダンジョンの事を言ったんだ?隠しとけばそれで支障は無いだろう」


そんなことを考えていると逆に聞かれてしまった。

確かに俺が情報を隠していても困るのは冒険者達とギルドだけだ。

俺には一切被害はない。


原因がわからないから調査する為に長期間の閉鎖になっても問題は無い。

ダンジョンはクリアしたからな。

残念ながら(?)イージーモードだったけど。


話した理由を改めて考えてみる。

理由ね……。

そんなの簡単だ。


「そりゃあ…………なんとなくだ」


「そういうことだ」


「そういうことか」


なるほどな。

別に変なことを考えるまでもなく、なんとなく話しても大丈夫だと思っていたんだな。

つまり、直感ってやつだな。

俺の直感が話しても大丈夫だと判断したってわけだ。


(つまり、両方とも脳筋ってことだね)


(アハハ…………)


デニスとサリーがこそこそ話していたが聞こえなかった。

何を言っていたんだろうか?



余談だがサリーは否定をせずに笑っている。

つまりは……そういうことである。



少しそわそわした様子で近づいてきたサリーが上目遣いで声をかけてくる。

う、それは卑怯だ。

何がかはわからないが取り敢えず卑怯だ。


「ところでライムちゃんと新しく仲間になったフィラムちゃんはどこに居るんですか?お会いしたいのですが…………」


人化したことを話したときにかなり反応していたからそろそろかと思っていた。

やはり、女子の友達も欲しいのだろうか。

まあなんにせよこの場に居るしな。


「別に良いよ。じゃあ、お披露目…………と、ほい!ほら、出来たぞ…………あれ?」


偽装と隠蔽を解くとガタンという音がしたので前を見るとサリーが椅子から立ち上がりかなり距離を取っていた。

少し涙目なのは気のせいだろうか?

そのままぷるぷると震えながら俺の肩の辺りを指差し


「む……」


「む?」


「虫です!!大きな虫が居ます!!」


瞳を潤ませたまま叫んだ。

なるほど。


『ぬ?どうしたのだ』


うん、お前の事だと言いたいけれど、これはどう説明したら良いのだろうか。

とりあえず女の子という壁が立ちはだかったのは確かだ。



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