第18話 準備
第18話 準備
「ん~、これで良いかな」
商品棚に陳列されためぼしいものを手に取る。
「そうですね……。それで良いと思います」
俺が取った、手元の商品をのぞきこんでサリーが言う。
無骨で装飾もないが丈夫そうなナイフだ。
武器を見ている事からもわかるように、俺たちは三人で鍛冶屋に来ている。
剣は持っているが、武器がなくなった時などのとっさの事態に予備が無いと危険だ。
だから、予備として持ち歩くのが基本だそうだ。
二人は冒険者としての知識を俺より多く持っているので、こういうときは頼りになる。
あ、別に普段が頼りないって事じゃないぜ?
俺達が急に装備を調えだしたのは、いよいよ明日、ダンジョンで実際に魔物狩りをするそうだ。
今日も狩ってたが、あれは目標が魔装の習得であって魔物事態が目的じゃないから、ノーカンだ。
「よし、ナイフはこれで良いとして……あとは手甲が欲しいな」
俺は城から出てきたときに盾を貰ったが、現状使っていない。
アイテムボックスの肥やしとなっている。
……使いづらかったんだ。仕方ないだろう。
ただ、もしもの時のために身を守る手段が欲しい。
手甲なら着けているだけだし、重量も盾ほどはない。
少なくとも素手で殴るときよりダメージが増える。格闘術のスキルを持っている俺としては手の塞がる盾より、こっちの方が相性が良いって事だ。
手甲の質が良ければダメージもなく剣も防げるだろう。
……そんな高級品を買う金は無いが。
「えっと……手甲そこからは二つ横の棚ですよ」
「おう、ありがとう」
教えてくれたサリーに礼を言って、手甲のスペース……というか、防具全般のスペースに移った。
手甲は……あった、あそこだ。
手頃な値段の物を手に取りはめてみる。
重量はあるが邪魔にならないくらいで、逆にちょうど良い。
うん、これに決めた。
ナイフと手甲を一緒に出し会計を済ませる。
「合計で銀貨8枚と大銅貨6枚になります」
……所持金の約半分が飛んでった。
日本円で8万6千円。
残りは11万4千円。
早く稼がないとヤバいかも。
あと3日で訓練は終わる。
そしたら依頼を受けて金を稼げるようになる。
ようやくの自立だ。
冒険者として働く上でどんな事が起こるのだろうか。
とりあえず退屈することはないだろうが、帰る方法も忘れずにしっかりと探さないとな。
そんな事に考えを巡らせながらお金を払い、店を出た。
二人とも既に買うものは無かったようで、俺に付き合わせてしまった。
ちょっと申し訳ない。
「よし、ここで解散だな」
「それではまた明日」
「うん、じゃあね」
俺、サリー、デニスはそれぞれの宿に帰っていく。
……俺は城だけどな。
俺は、城に帰りながらダンジョンについての話を思い出していた。
ダンジョンとは、簡単に言えばたくさんの階層がある魔物の巣窟だ。
たくさんの階層と言っても、もちろんピンからキリまである。
3層くらいのもあれば100層を超えるものもあると。
明日俺たちが行くのは、まだ踏破されていないダンジョンだ。
ダンジョンの踏破とは、最下層にいるボスを倒し、ダンジョンコアを破壊することを指す。
しかし、ダンジョンコアを壊すとダンジョンの力が弱まるので、わざと残すことも多いのだとか。
本当の意味での踏破ダンジョンは少ない。
ダンジョンコアを壊さないほうが、国も冒険者も稼げるからな。
もちろん俺たちはクリアを目指す訳ではない。
というよりは無理だ。
今の最高深度が、5人のAランクパーティーで61層まで。
10層ごとにボスがいるらしく、60層のボスも、最近やっと倒せたらしい。
ここまで聞くと難しそうだが、10層までなら初心者でも比較的大丈夫らしい。
初心者の良い稼ぎ口になっている。
一応、ポーションを支給するらしいので危険は無いだろう。
更になんと、ダンジョン内では魔物を倒すと、勝手に素材と魔石に別れるらしい。
魔石は魔物の核のことな。
ダンジョン。ああ、なんたる親切設計だろうか。
剥ぎ取りをする手間が省けるとは。
……訓練終わったらダンジョンに入り浸ろうかな。
閑話休題。
そろそろ経験値を稼いでレベルもあげたかった所だ。
スキルのレベル上げや習得も良いが、やはり自分のレベルだ。
強くなるのを数値で確認できるのは、モチベーションが上がる。
『楽しみだな、ライム』
「…………きゅ?」
……さっきから喋んないなと思ったら、ライムさん寝てましたね。
かわいいから許すけど。
今日は明日に備えて早く寝るか。
――――――――――――――――
5日目
「よし、これからダンジョンに潜る。くれぐれも油断しないように」
ダンジョンの目の前で注意を促すガザル。
ここに来るまで、王都から30分かからない距離だった。
城門から出た所にあり、舗装された道で繋がっていた。
すれ違う人も多く、ダンジョンが人気であることがわかる。
まあ、ダンジョン専用に道を作るぐらいだ。
相当儲けは出ているのだろう。
ダンジョンの周辺は村のようになっていた。
武器、防具の店、宿屋、診療所、冒険者ギルド、等々。
さすがに村並みの規模は凄い……。
ま、便利だし良いか。
ギルドからは既に支給品を貰ってある。
ポーションに、携帯食料、水。
こんなところだ。
俺はアイテムボックスにいくらかの食料を入れてある。
……城で食べたときに余っていたのを厨房の人から、いくらもらっていたのだ。
意地汚いとか言わないで欲しい。正直金がないし、捨てるのはもったいないからな。
これも生きる術だと割り切る。
アイテムボックスの中は時間が止まっているのか、食べ物が腐らないどころか出来立てのままの状態だ。
ギルドの支給品はアイテムボックスに入れず、渡されたバックごと背負っている。
下手に目立って動きにくくなるのはいやだからな。




