第17話 いくつかの初めて
第17話 いくつかの初めて
『やっちゃえ、ご主人!』
俺は頭の上のライムから声援を受けながらスライムと相対していた。
『オッケー』
サクッと倒して終わらせるか。
そういえばスライムのステータスってどんくらいだろ。
カザルは一般的な市民が踏んで倒した事もあるって言ってたけど……
鑑定!
ステータス
名無し 粘液生物
レベル:3
HP :5/5
MP :2/2
筋力 :4
耐久 :6
魔力 :2
魔耐 :6
敏捷 :5
運 :8
スキル:ユニーク-吸収
戦闘術―粘液術Lv2
身体術―魔力察知Lv2
耐性―衝撃耐性Lv1
……うん、激弱。
これは市民でも倒せるな、当たりどころが悪ければ。
ん?スライムに当たりどころなんてあるのか?
「なあライム。お前、前後の感覚ってあるか?」
『前後の感覚?多分あるよ?どっちが前で、どっちが後ろかわかるかって事でしょ?』
「そっか、ありがと」
『うん!どういたしまして』
俺の役に立ったからなのか、嬉しがっている感覚が伝わってくる。
これも伝心の能力なのだろうか。
まあ、良いか。
とりあえずスライムにも前後の感覚があると言うことは顔みたいな何かが有ると言うことだろう。
ふむ、また一つ賢くなったな。
そんなことをしている間にも、スライムは攻撃をしてきていた。
攻撃と言ってもただの直線的な体当たりだ。
避けるのは造作もない。
……いや、粘液術使えよ。
このスライムは頭も悪いのだろうか。
どうやらこのスライムに対してはかわいいと思わなかったので、攻撃できそうだ。
……判断基準は何なんだろうか。
ま、いいや。さっさと終わらせるか。
俺は魔装を剣に施し、スライムが突進してくるとサイドステップで避け、軌道に合わせて切り払う。
すると、事も無げにスライムは真っ二つになる。
「よし」
この世界で初めての殺しだ。
魔物と言えども生き物。
しかし、そこに嫌悪感はなかった。
その事に軽く戦慄しながらも、右手を握る。
……これはこの世界で初めての勝利でもあるからな。
『ご主人、おつかれ~』
「おぉ、ありがとう、ライム」
そう言いながらライムの頭(?)を撫でる。
『えへへ~』
嬉しそうな感じが伝わってくる。
うん、どうやら喜んでもらえたようだ。
「ん?」
気づくと倒したスライムの中に何か異物が入っている。
倒した時には無かったものだ。
「なあ、ライム。あれはなんだ?」
『うん?あぁ、あれは「核」だよ』
「核?核ってあの魔物が持っている魔力の塊か?」
『う~ん、そんなものかな?核は魔物が倒されたあとに、体内の魔力が集まり、固まってできるものだよ』
「そうなのか、ありがとうな」
ふ~ん、この世界の核は魔物が死んだあと出来るんだな。
俺が読んだことのあるラノベとかだと最初から有ったからな。
この世界では無いものだと思っていたんだが。
更に、リアルファンタジーの弊害。
魔物の残骸が出現した。
ギルドから渡された袋の中にスライムを入れる。
アイテムボックスに入れようかと思ったが、袋に入れることにした。
取り出すときにばれるとやっかいだからな。
少なくともまだ、目立ちたく無い。
これがスライムだから良いが他の魔物だと、血が出たり、解体しなくてはならない。
異世界は面白い事だけではないようだ。
暫くして、ガザルの所に戻った。
途中で三回ほどスライムに遭遇したが瞬殺し、核とスライムゼ〇ー(仮名)を袋に仕舞って小遣いをかせいだ。
三体目を倒した所でファンファーレの音が鳴り響いた。
レベルアップだ。
今日はいくつかの初めてを経験した。
初めての魔物殺し。
初めての勝利。
初めてのレベルアップ。
そして今日最大の収穫は、俺がこの世界でも生きていけることを確認したことだ。
……そういえば、ここにも忘れてはいけない初めてがひとつ。
頼もしい仲間を手にいれたこと、だな。
「きゅ?」
……おぉふ。
鳴き声もかわいいな。
これからは、たまに声を出して貰おうかな…。
てか、ライムって普通のスライムでは考えられないくらい強いよな。
普通のスライムの三十倍位は強い。
更にレベルは1だ。
これからもっと強くなる事だろう。
ここにエリートなスライムが誕生した!
腕をバッと大きく広げて宣言する!
しかしライムは不思議そうに見つめている。
………。
やめて!
そんなに見つめられるといたたまれなくなる!
―――――――――――――
「じゃあ、城下町に帰るぞ」
茜色になったな空の下、ガザルが言う。
俺が戻ったあと、無事に全員が揃った。
とは言っても、ガザルが全員の居場所を把握していたらしいから、心配することも無かったようだ。
改めて、ガザルがハイスペックだと思い知らされる。
俺たちは舗装された道を歩いていた。
舗装されたと言っても、石がきれいに敷き詰められた道で、現代のコンクリートみたいなものではない。
当たり前か。
この、舗装された道は王都周辺にしか無いらしい。
なんでも、舗装には莫大な費用がかかるらしい。
まあ、この世界には魔物もいるし機械もない。
仕方がないのだろう。
土魔法を使うことを提案してみたが、そんなことをしたら魔力がすぐに底をついてしまう、と言われた。
そんなに難しいのだろうか……?
俺たちが訓練をしていた草原は道のそばにあった。
最悪、迷ってもこれを見つけられたら帰れる寸法だ。
まあ、あの草原で迷うってのは、いろいろヤバいけどな。
ザ、方向音痴の称号を授かることができるであろう。
そんなことを考えているとガザルが聞いてくる。
「なあ、シオン。その頭の上のってなんだ……?」
「ん?この子はスライムのライムだ。かわいいだろ?」
俺はライムを撫でながらガザルに言う。
「きゅきゅ~」
嬉しそうに声を出すライム。
「ああ、そうだな。確かにかわい……いや、そうじゃなくてな!なんで
スライムがここにいるのかってことを聞いてるんだが……」
「そうですよね。魔物が非攻撃的なのは珍しいことです」
なんてことを言いながらも、早速ライムを撫でているサリー。
普通はもっと警戒すると思うのだが。
「この子は俺が使役したんだ。大切な相棒さ」
『ほんと!?ほんとにご主人の大切な相棒?』
『ああ、勿論』
『ふふふ、やった!ぼくとっても嬉しいよ、ご主人!これからずっと側にいるからよろしくね!』
嬉しいこと言ってくれるじゃないか。
本当にかわいいやつだ。
『こちらこそよろしく頼む』
こうして俺たちは絆を深めあったのだった。
ガザルたちには伝心の会話は聞こえない。
だからか良い雰囲気をじゃまされた。
「おい、俺たちまだ説明聞いてないぞ」
空気読んでくれよガザル……。
「なんか、そこはかとなく馬鹿にされている気がするな!」
何故かつっこんでくるがとりあえずスルー。
まあ説明はしないといけないからな。ちゃんと話すとしよう。
「簡単に言えば、出会って、絆を作って、仲間になったんだよ」
「はしょりすぎだ!その間を聞きたいんだよ!」
そんなことを言われてもな……。
王の器の事をばらすわけにはいかないし。
「教官、あまり詮索するのは……」
ここで、助け船を入れてくれたのはデニスだ。
助かった。
ありがとう!
「あ、ああ、すまない。ギルドマスターの俺が忘れちゃ世話無いな」
俺は、ガザルがギルドマスターだと言うことを忘れそうだったよ。
……なんか睨まれたので目を反らした。
負けた気がする!
「とりあえずそのスライムに危険性は無いんだな?」
「もちろん。誓って無いさ」
ライムは良い子だ。
そんなことにはならない。
「大丈夫そうですよ、教官。現に今私たちはこの子に攻撃されていません。恐らく使役は成功しているでしょう。それに、こんなにかわいいですし」
ライムと戯れていたサリーも擁護してくれた。
そのお陰かガザルも認めてくれた。
「……門に着いたら従魔の首飾りを貰ってこい。そのスライムに付けてやれば街に入れる。従魔がしたことはその主人に責任が問われる。しっかり面倒見ろよ」
「わかった。ありがとう」
……ありがたいんだけど、なんだか親に、拾ったペットを飼う交渉したみたいだな。
まあいいか。
そして俺たちは、他愛もない話をして門に着いた。
無事、従魔の首飾りもつけ終わり王都に入る。
揉め事もなく部屋に帰りつく。
こうしてまた一日が終わった。
……もちろん夜はライムと寝ましたよ。
ぐっすり眠れました。
うん、ライムが柔らかい。
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遂にユニークPVが4000超え。
ブクマはもうすぐで100行きます!これも皆様のおかげです。
このままこつこつ頑張って目指せ、ブクマ200です。
更に総合3万PVも目下の目標です。
これからもよろしくお願いします!




