四発目 パンツとプレゼント
俺がこの異世界に誕生して、いよいよ、明日で5歳。
明日は領内外の有力者を招いて、盛大な誕生会&お披露目会を開催してくれるらしい。
普段は仕事で忙しく、珍獣並みに出会うことの難しい父親も出席してくれるらしい。
まあ、主催者でスポンサーなのだから、それも当然だろう。
そんなわけで屋敷の中は戦場かと思わせるくらい慌ただしかった。
「はい、どいてどいて」
「これどっち?」
「お前、それはこっちが先だろ」
バタバタと明日の支度をしていく使用人たち。
その姿は鬼気迫っている。
メイドたちも忙しく、俺がエロいちょっかいをかける隙もない。
今のメイドたちにそんなことをしたらマジに怒られる。
俺もそこら辺の空気は読む男…………今は女だけど。
明日の主役で、ただの4歳児の俺は、今のところすることもなく暇まので、普段着のフリフリドレス姿のまま屋敷の中をブラブラしていた。
ふと、部屋の装飾品をしまってある倉庫の前で立ち止まる。
「あそこにいるのは!」
あれは、俺の天敵、エミリー!
俺がメイドにエロいことをしようとすると、いつも良いところで俺の邪魔をしてくるメイド見習いのエミリーも倉庫の中で使用人の中年男と忙しそうに動いている。
俺の相手をしている暇はなさそうだ。
俺は暫し、その様子を観察する。
普段なら天敵のエミリーなどに構うことなどないんだが、今日は特別だ。
要するに暇なのだ。
隅に座り、ボーッと中の様子を眺める。
中から声がしてきた。
「明日は、アルファ様の5歳の誕生日だから、う~んと綺麗に飾り付けしないとですね」
「エミリーは相変わらずアルファ様、アルファ様だな」
「当然ですよ。あんなにお可愛いのに嫌いなはずはないじゃないですか。アルファ様は、私が絶対に素敵な淑女に育てあげてみせます」
「確かに、アルファ様は美人でいらっしゃるからな。まだ、あんなにお小さいのに不思議と時折女を感じるほどドキッとさせられるしな。俺、アルファ様ならあのままでもいける気がする」
「またまたぁ、ハンスさんたら冗談言って」
エミリーは冗談と思って笑っているが、元男の俺にはわかる。
このハンスとかいう中年男、本物だ。
漂うロリ臭が半端ない。
よし、この使用人も俺の心の要注意人物図鑑に登録しておこう。
それにしても新しい発見があった。
そっか、普段の行動だと俺を嫌っているとしか思えないエミリーも真剣に俺のことを祝おうとしてくれてんだな。
けっこう良い奴じゃないか。
俺がジーンと感傷に浸っている間もエミリーとハンスは仕事を続ける。
「ちょっと、エミリー、あそこの上に祝い用のランプがあると思うんだが取ってくれないか?」
「良いですよ」
棚の上にある箱を指差し、ハンスがエミリーに依頼する。
ちょっと高すぎて、そのままじゃ成人男性でも無理だろう。
エミリーが手近な梯子を掛け、手を伸ばそうとする。
「うわっ、このハシゴ動くんですけど、大丈夫ですかね?」
「そうだった、そのハシゴ調子悪いんだった。……そうだ、俺が梯子を支えといてやるよ」
「お願いします」
使おうとしたハシゴはグラグラで、下でハンスが支えてようやく安定したようだ。
エミリーはハシゴの安定感を確かめると、ヨシッと、なんの躊躇いもなく梯子を登っていく。
一段一段ゆっくり登っていくと、エミリーの短めのスカートの裾が、ハンスの顔より高い位置になった。
あ~あ、エミリーの奴、ロリコンの前でそんな無防備なことをしたら。
俺が心配した通り、ハンスがそぉっと、上を覗き込みニンマリした。
俺が、とてとてと近寄っていき、ハンスと同じように上を見上げると、外に拡がるタイプのエミリーのスカートの中は丸見えになっていた。
代わり映えのしない白パンツ。
「ん~、ハンスさん、箱の中にランプらしきものが見当たらないんですが、どれですか?」
エミリーは、ハンスのエロい視線に気付きもせず、真面目にランプを探してくれている。
「あれ? ないか? おかしいな。ちょっと横とかも探してみてくれないか」
ハンスに促されるまま、エミリーは足を開きぎみに横移動したため、俺とハンスにスカートの中を見られ放題だ。
う~ん、ニーソって付加価値とアングルは悪くはないが、やっぱりエミリーの14歳って年齢が俺としては幼すぎてイマイチ燃えてこない。
因みに、桃尻メイドのバーバラさん、25歳が同じ状況なら、拓哉だった頃の俺は5回は自家発電できる自信がある。
うん、なんの自慢にもならないな。
しゃあない。
俺の誕生日を真剣に祝おうとしてくれているのだし、今日のところは武士の情けと思って助けてやるか。
俺はエミリーに声をかけてやる。
「エミリー、パンツ見えてるぞ」
「!」
「へっ? キャっ!」
エミリーがスカートを押さえ、真っ赤な顔をして俺を睨んできた。
その目は見たな~っ!といっている。
えっ、何で教えてやった、いたいけな美少女の俺を睨むんだ?
納得がいかない。
因みに、俺の声に慌てて下を向いたハンスは、エミリーに気付かれず無罪放免だったりする。
同じ覗き行為をしたロリ中年男が無罪で、いたいけな4歳児で美少女な俺が説教くらうなんて絶対に世の中、間違ってる。
普段の俺の行いが悪過ぎるせいとかは関係ないと思いたい。
もう10分以上は怒られているだろうか。
「ちゃんと聞いているのですか、アルファ様?」
「ああ、聞いてるって」
逃げようと思えば逃げることも出来たが、俺はエミリーの小言に付き合っている。
エミリーは終始、俺を諭すような言葉を並べ続けた。
どうやら、エミリーは本気で俺を淑女にする気らしい。
ようやくエミリーの長い説教は終わり、俺は解放される。
そのあとエミリーは、俺の説教に時間をとってしまったせいで、やらなければならない仕事が遅れ、上役にこっぴどく怒られていた。
「あいつ、何やってんだか」
いつもならひねくれる所だが、今日はいつものようなエミリーに対する理不尽な怒りの感情は沸いてこない。
代わりにレイシャに感じるのと似た感情が湧いてきて、少し戸惑っていた。
新たに感じた感情をどう処理して、エミリーに伝えられるかわからず、どうすれば良いか相談するべく母親のレイシャの元を訪れる。
レイシャは優しい笑顔と巨乳で俺を温かく迎え入れて話を聞いてくれた。
招待状の返事の確認や来賓の方の部屋の最終チェックでレイシャも忙しいはずなのに嫌な顔ひとつしない。
こんな俺には勿体ない、できた母親だと思う。
「そう、人に自分の今の気持ちを伝えたいのね、それは良い考えね。……そうだ、プレゼントなんてどうかしら。私の持っているもので、まだ使ってない物がいっぱいあるから、好きな物を持っていっていいわよ。そうだ、入れ物にはこの小箱とか綺麗だから使ってみたら?」
「お母様、ありがと」
俺は天使のスマイルで物と小箱を受けとり礼を言うと、準備をするべく急いでレイシャの部屋を訪れ物色する。
レイシャが使っている寝心地の良い、大きなベッドにダイブして昼寝を満喫するのも大好きだが、今日はそんな時間はない。
さあ、俺もちょっと忙しくなるぞ。
明日の俺の誕生会&お披露目会のあらかたの準備が終わったのは、その日の夕方だった。
その頃には、俺がやっていた作業もなんとか完了していた。
俺は手の空いた者に声を掛けて、自室にエミリーを呼んでもらう。
「エミリーです。入りますよ。アルファ様、どうかされました?」
「おい、エミリー、これをやるよ」
俺は小箱をエミリーにちょっとぶっきらぼうに投げ渡す。
受け取ったエミリーは不思議そうに首をかしげる。
「これを私にですか?」
「だから、そうだと言っているだろ」
「開けてみても良いですか?」
「おう」
エミリーが小箱を開くと、そこには淡いピンクの布の花が見える。
その布の花こそ、俺からのプレゼントだ。
見ただけで上質とわかるシルクの小さな生地を花に見えるように小さく畳んでいれた俺の力作だ。
意外と小箱が小さく入れるのに苦労したものだ。
「お前には色々迷惑もかけているしな。何だかんだで、俺のことを一番考えてくれている屋敷の者はお前だと思う。明日の誕生会、俺の謝罪と感謝の気持ちのものを身に付けてて欲しいんだ」
俺は照れ臭くて、プイッと明後日の方向を見ながら、できるだけそっけない態度をとってみた。
しかし、真っ正面から見れば耳まで真っ赤になっているんで照れているのがまるわかりだろう。
まあ、死にそうなほど恥ずかしいが、たまにはこういうことも必要だよな。
俺の言葉を受けて、エミリーは驚きと喜びでいっぱいという表情をしてくれた。
エミリーのこの反応、大成功といって良いだろう。
「ありがとうございます。こんな綺麗なハンカチ、夢のようです」
「ハンカチ?」
「アルファ様。この布の花って、ハンカチ…………なんですよね? さっき、身に付けておいてほしいって言ってましたし」
「…………」
「! まさか」
俺の普段の行動をよく知るエミリーはそれが何なのかようやくピンときたようだ。
エミリーが慌てて俺の送った布の花を取り出して広げる。
布の花は誰しもが知っている他の形に姿を変えた。
わなわなと、エミリーが震え出すのがわかった。
震えるほど嬉しかったのだろうか?
「ちょっ、アルファ様っ! これって下着じゃないですかっ!」
「まあ、下着だな。だって、パンツだし」
俺がエミリーに送ったのはシルクの小さなパンツ。
エミリーに似合う色はと吟味した結果、薄いピンクを選んでいた。
この世界では高級な品である。
「アルファ様ぁぁっ!」
俺は怒られると思ってビクッとなる。
だって、どうせ服とかプレゼントしても、メイド見習いのエミリーはメイド服での誕生会参加だろうから、せめて見えないところのおしゃれくらいさせてやろうと思っての選択だ。
今回に限っては下心一切なし!
女の子に下着を贈るなんて初めてしてみたが、このチョイスは不味かったのだろうか。
だが、いつまで経っても予想していたような怒りは来なかった。
そのかわり、
「まったく、アルファ様はどこまでいってもアルファ様なんですね」
仕方ないなぁといった感じでエミリーが優しく微笑んでくれた。
それは慈愛の詰まった愛のある表情。
ちょっとだけ、ドキッとしたのはきっと気のせいだろう。
だって相手はエミリーだし。




