十六発目 精霊と能力
明けましておめでとうございます。
今年一発目の更新です。
導きの精霊エロジジイの助けを借り、五体の精霊の力を得た俺はオークからエミリーとタクトの二人を助けるために精霊の祠を出る。
祠から出ると、俺は真っ裸なのも気にせず大声で叫ぶ。
「おい、オークども!……って、あれ、いない」
俺が祠を出ても、そこにはオークもエミリーたちもいなかった。
まさか、もうやられた後とか?
心に途方もない不安感が襲ってくるが、すぐに頭を振りその考えを否定する。
もし、そうだとしたら、エミリーはともかく、タクトの死体がないっていうのはおかしい。
死体を食われたとしても血の痕くらいは残るはずだ。
踝まである草には、どこにも血の痕はなかった。
そこから考えられるのは、俺の隠れている祠からオークたちを引き離すため、エミリーとタクトが移動したということだ。
あいつら、無理しやがって……。
感傷に浸っている時間も惜しい。
「契約したばっかりのところ悪いんだが、さっそく出番みたいだぞ。大地の精霊ダーチ、大気の精霊ターキ」
俺の呼び掛けに、オレンジと水色の光の玉が俺の中から出現する。
ダーチ、ターキっていうのは、俺が勝手につけた名前だ。
因みに、水の精霊はミーズ、糸の精霊はイート、鏡の精霊はカーミと名前を決めている。
どうせ、こいつらも導きの精霊エロジジイと同じように自分の固定の名前を持っていないとしたら、呼ぶとき不便だしな。
本当はガイアだのエアだの格好いい名前をつけたかったのだが、もしこれから他の精霊の力も借りることができるとした場合、特殊なものの精霊だったら俺の学力の低さと知識不足で名付けできませんでしたってことになりかねない。
センスの無さについては気にしちゃ負けだ。
ようは俺の覚えやすさ重視。
よって、簡単に最初と最後の文字を取って繋げて名前とした。
おっと、余計なことを考えている場合じゃなかった。
「ターキ『空中探知』、ダーチ『地中探知』。エミリーたちとオークを探せ!」
俺が端的に指示をだすと、それぞれの球体が了解とばかりに明滅する。
目を閉じた俺の脳中に半径200メートル程度の情報が送られてくる。
今の探査能力はこのくらいが限界のようだ。
精霊たちも万能ではない。
とくに今回俺が契約した精霊たちは大精霊どころか、普通の精霊の中でも中級に位置するらしい。
精霊たちの情報が俺の脳に流れ込んだ時に、精霊たちの「力が足りず申し訳ない」という気持ちも伝わってきた。
大気の大精霊、もしくは上級精霊なら、この森一帯の探索も不可能ではないのだろうが、ターキとダーチを合わせてようやく200メートル程度の範囲の探索が可能といった感じだ。
だが、エミリーたちと別れてから時間はまだそんなに経っていないから十分だろ。
だいたい、精霊たちに力を貸して貰っているのは俺のほうなのだ。
感謝こそしても、怒るなんてことはできない。
「おっ、いたっぽい! オークと少し離れて移動中ってことは、エミリーもタクトも生きてる! だが、けっこうギリギリそうだな。急ぐか」
エミリーたちのいるほうの空を眺め、俺は移動を開始し――
ガンっ
――出来なかった。
「いってぇーっ!」
カッコ良く決めて、移動を開始しようとした俺の素足に何かが当たる。
メッチャ、痛い! 涙がでる!
そうか、精霊の力を借りれるようになっても、俺のお嬢様ボディは強くなったわけじゃないんだよな。
すっかり精霊と契約して高揚した気分に酔いすぎていたようだ。
注意力散漫すぎ。
これは本気で気を付けないと、この先戦闘になった際に怪我をしかねないな。
「今のうちで助かった。でも、いったい何にぶつかったんだ?」
足元を見ると、タクトの持っていた鉄の剣が落ちていた。
あっぶねぇ、柄だった良かったものの、蹴ったのが刃の部分だったら俺の足の指が無くなるとこだった。
「これは、タクトの持っていた剣か」
落ちていた剣を持ち上げようとしてみると、やっぱり重い。
とてもじゃないが、俺じゃ振り回せそうにない。
でも、いくら精霊の力があるっていっても、オークたちとのバトルを前に丸腰どころか、真っ裸ってのは少し心配だ。
主に防御面で。
やっぱり、パンツくらい履いてきたら良かったか?
いやいや、そういう問題じゃないな。
パンツ装備でマシになるのは防御力じゃなくて倫理観くらいだ。
「破れた服を着ても焼け石に水だろうな…………そうだ!」
俺は手にもったタクトの剣を見て良い案を思いつく。
「出てこい、糸の精霊イート」
俺の呼び掛けに白い光の玉が出現する。
白い球体は嬉しそうに明滅している。
「イート、この剣を使って『糸生成』を頼む! そんで『着衣創造』」
糸の精霊イートは、俺が手にもったタクトの剣の周りをクルリとまわると、糸を紡ぎだす。
瞬く間に、ピアノ線のように細い鉄製の鋼糸の束が完成する。
その鋼糸を使って俺の体を中心にドレスを編み上げた。
形状は、俺のお気に入りの膝丈のドレスを模倣してみたが、外見は同じでも、防御力でいえば、この鋼糸製のドレスは比べ物にならないくらい高いだろう。
色が鉄色1色というのがやや寂しい気がするが、これなら森の中を走り回っても破れることはないはずだ。
「うん、多少重いドレスだけど、腕の動きも邪魔しないし、剣の時よりは役に立ちそうだな。余った鋼糸は、纏めて腰にでも装備しとくか」
こうして、ようやく俺は真っ裸からも解放された。
ドレスの下はノーパンだが、戦闘には関係ないし、今は無視する。
「大地の精霊ダーチ『重力緩和(弱)』、大気の精霊ターキ『空気抵抗緩和(弱)』、俺の移動をサポートしろ!」
二体の精霊が俺の周りをクルクル回ると、俺は淡いオレンジと青の光に包まれる。
体が軽くなり、鋼糸で編まれたドレスの重みも減っている。
試しに足元にある小石を投げると、投げた小石は俺から少し離れると急にカコンと落下した。
どうやら、重力緩和の効果範囲は俺の体周辺だけのようだ。
これで十分!
俺は今度こそ移動を開始する。
その速度は風のようにとまではいかないが、並の成人男性よりもかなり速かった。
そもそも深い森の中を進むなら、小柄な俺のほうがエミリーたちやオークより、はるかに速く動けるはず。
そう時間もかからず追い付けるだろう。
「待ってろよ、エミリー、タクト!」
今年も正月があけたら、1~3日に1回は更新していけたらと思っているので、これからも軽い気持ちで覗いてやってください。
最後に今年も宜しくお願いします。




