プロローグ
前に書いたTS魔法少女モノです。
成人向けプ●キ●アという感じです。TS好きな人はご一読ください
一人の女子高生が息を切らして走っていた。
どれだけ駆け抜けても追手を撒くことはできず、人気の多い場所に辿り着くことさえできない。先程まで人の往来もあったはずなのにいきなり世界から人間という種族が消えてしまったかのような感覚である。
「ハァハァ……何で街中で誰とも会わないの!?」
誰もいない。つまり彼女を追ってくる存在も痴漢やストーカーの類ではないのだ。
人間ですらない〝ソレ〟は体力が尽きかけた少女を嘲笑うように迫って来る。
「ツライ……クルシイ……ダレカ、カワッテ」
辛うじて聞き取れる単語を話しているが、呼びかけても会話は成り立たない。〝ソレ〟は見た目から人間ではなかった。類似点があるとすれば二足歩行の人型という点のみだ。
体表が黒い影のようなシルエットで首と腕が異様に長い。ありふれた日常生活を送っていた女子高生はそんな化け物じみた存在がいることを知り得なかった。
「カワッテクレヨォォォ!!!」
長い腕を伸ばして襲い来る化け物に抗う手段がない。少女は己の最期を悟って目を強く瞑る。
――ところが覚悟していた痛みは襲って来なかった。
恐る恐る目を開けると、自分と化け物の間に誰かが立っている。長い黒髪をサイドテールにまとめた自分と同年代程度の少女だ。その手には竹刀くらいに大きな筆が握られていた。
「魔法少女・ブラック☆ライター! 推参!」
彼女は巨大な筆の先から垂らした墨汁の水滴を鞭のように伸ばして、化け物を叩き飛ばしてしまった。その細腕では考えられない怪力である。
相手が怯んだところを見計らってどこからか現れたマスコットキャラクターのような小動物が魔法少女の肩に乗る。
「キャロット! 敵の情報は!?」
「解析終了。〝ストレス級アウトサイダー〟だぴょん。例の如くネガタイドに寄生されて感情爆発した一般人だぴょん」
「要するに雑魚か」
「ブラック☆ライターなら瞬殺ぴょん」
アウトサイダーと呼ばれるらしい化け物を再び墨汁の鞭で縛り上げて近くの建物に投げ捨てるブラック☆ライター。
倒れて動けない相手の頭上に跳んだ彼女は筆先に魔力を集中させて一気に射出する。
「〈イービル・ブレイカー〉!!」
放射される紫色の閃光を浴びたアウトサイダーはその巨体を消滅させた。
化け物が消えた後にうつ伏せのサラリーマンが現れる。状態を起こした彼はどこか朗らかな気持ちになって伸びをする。
「おっ!? 此処何処だ!? 記憶飛ぶとか末期だな、オイ。残業続きで無理してたツケが来たか。繁忙期は超えたし……有休消化して旅行にでも行くか!」
変化は化け物が消滅して人間が現れただけではなかった。
路地裏を超えた大通りには人の往来が復活していたのである。世界の変化についていけない女子高生は挙動不審になってしまう。認めがたい事象を目にした人間は錯乱するものだ。流石に説明が必要だと感じたらしいブラック☆ライターは彼女の前に降り立った。
「さっき倒した化け物はアウトサイダー。人間の負の感情が爆発して変化してしまった存在だよ。今みたいに結界を張って巣を作り自身の欲望をぶつける相手を探すんだ。それをやっつけて浄化するのが魔法少女の仕事ってワケさ」
「魔法少女……噂では聞いたことありましたけど、やっぱりホントにいたんですねッ!」
「無闇に話さないでね、それじゃあ……!」
お礼を告げる前にブラック☆ライターは跳躍して消えてしまった。
生身の人間で追いつけるはずもなく、命の恩人にお礼すらいえなかった少女はその背中を見送ることしかできなかった。
女子高生と別れたブラック☆ライターは人気のない廃墟に降り立つなり、変身を解除する。紫のベールに包まれた少女の肩幅が広くなり、身長が数十センチ程高くなる。
そして光が消えた頃には一人の青年男性が頭を掻きながら立っていた。
「お疲れ様ぴょん、黒川硯。とても男とは思えない魔法少女っぷりだったぴょん」
「嬉しくねぇよ! たくっ、こんなことがいつまで続くんだよ……」
「この町の魔法少女は硯一人だぴょん。新しい子を見つけない限りずっと続くぴょん」
「ワンオペとか勘弁してくれよ。スカートで戦うこと自体慣れねーってのに」
硯は廃墟の割れた鏡に映る自身の姿を見ながらつぶやいた。
高身長で細身という女性受けしそうな見た目だが眼つきが異常に悪い。こんな男が副業で魔法少女をやっている等と世間に知られれば嘲笑の対象だろう。また、不可抗力とはいえ女子更衣室や温泉でも戦ったことがある。男だと露見すればセクハラで訴えられる懸念すらあった。それ故に絶対に正体を隠さなければならなかった。
「そろそろホントに女の子の魔法少女をスカウトしてくれよ~」
「最初に契約したときに言ったぴょん? 生粋の魔法少女は絶滅したぴょん」
単行本換算一冊分書いているので
平日、毎日アップしていきます。




