重機兵
外縁エリア、工業ブロック。
高架の影が幾重にも重なり、昼夜の区別を曖昧にしている。
稼働中の巨大タービンが低く唸り、振動が足元から伝わる。
パイプラインが壁を這い、継ぎ目から蒸気が漏れていた。
白い煙がネオンを滲ませ、路面の油膜に色を溶かす。
遠くで火花が散る。
金属を切断する音。
短い怒号。
この区域では、機械音の方が人の声よりも大きい。
通知が鳴る。
【外縁緊急クエスト】
違法改造重機兵の鎮圧
推奨人数:6~8
重機兵。
外縁の掃討クエストの中でも厄介な部類だ。
量産機とは違う。
質量と耐久が桁違いだ。
角を曲がった瞬間、衝撃が走った。
コンテナが空中に跳ね上がり、地面に叩きつけられる。
鉄板がひしゃげ、火花が飛ぶ。
二足の巨体。
灰色の厚い装甲。
片腕は巨大な油圧ハンマー。
もう片方は連装砲。
胸部には違法増設パック。
出力を無理やり引き上げた改造跡。
すでに四人ほどが交戦している。
砲撃。
地面が抉れる。
一人が吹き飛ばされ、転がる。
「前出られるやつ!」
叫び声。
砲口がこちらへ向く。
テラは走った。
弾丸が路面を裂く。
火花が跳ねる。
ハンマーが振り上がる。
テラは半歩ずれた。
地面が砕ける。
衝撃が遅れて背中を叩く。
距離が詰まり懐へ。
刃を振るうが、装甲が弾く。浅い。
「さすがに硬いな。」
踏み直し、膝裏へ。
関節部に、刃が食い込む。
金属が裂け、油圧音が乱れる。
巨体が傾ぐ。
背後からライフルの連射。
装甲に穴が穿たれる。
重機兵が旋回。
横薙ぎのハンマー。
テラは低く滑る。
風圧が髪を揺らす。
立ち上がりざま、もう一閃。
砲撃が至近距離を通過する。
弾道の外側へ。
蒸気の中へ抜け、視界が白く曇る。
次の瞬間、ハンマーが蒸気を裂く。
直前まで立っていた位置を砕く。
重機兵の動きがわずかに遅れる。
油圧が不安定だ。
テラは背後へ回り、首元へ。
装甲の隙間から覗く配線束。
踏み込み、刃を突き立てる。
内部で火花が暴れる。
機体が痙攣。
砲撃が暴発し、上空へ逸れる。
別プレイヤーが踏み込み、拳が装甲を打ち重い衝撃音がなる。
すかさず別プレイヤーのライフル弾が胸部を撃ち抜き、爆発した。
重機兵が膝をつき、そのまま崩れ落ちた。
地面が揺れる。
蒸気が流れ込み、巨体を覆う。
【クエスト完了】
都市貢献度:+12
現在:24
周囲のプレイヤーが息を吐く。
倒れていた一人が立ち上がり、武器を拾う。
「助かった……」
「前張れるやついると違うな」
視線が集まる。
テラは刃の汚れを払うだけだった。
尾がゆっくりと静まる。
蒸気の向こうに中枢タワーが見える。
外縁からでも分かる高さ。
企業ロゴのホログラムが上層を囲んでいる。
あそこは、まだ遠い。
だが24。
積み上げた数字。
確実に近づいている。
上空を警備ドローンが横切る。
スキャン光が路地を撫でる。
別区画で爆発音。
蒸気を抜け、ネオンの滲む路地へ踏み出す。
次の戦闘へ。




