21.癒しのジンと薬草園
修道院での酒造りがさらに本格化する中、新たな挑戦として ジンの製造 に取り組むことになった。
「ジンってのは、ハーブやスパイスを蒸留酒に漬け込んで作る酒のことだな。」
ラム酒やコニャックと違い、ジンには ボタニカル(植物の香味成分) が重要になる。
特に ジュニパーベリー という果実が必須だった。
セラフィーナや修道女たちと共に、ハーブやスパイスを調達し、試作を重ねる。
「このバランスで漬けてみるか……」
ジュニパーベリーのほかに、コリアンダーシード、シナモン、ラベンダー、カモミールなどを組み合わせ、数週間の熟成を経て完成させる必要がある。
味見をしながら試行錯誤した。
透き通った液体をグラスに注ぎ、香りを確かめる。
「……おぉ、これは」
口に含むと、スパイスの爽やかさとハーブの穏やかな香りが広がる。
後味にほんのり甘さと、心地よい温かみが残る。
セラフィーナがグラスを持ち上げ、目を閉じながら一口飲む。
「……癒されるわ」
「これは『癒しのジン』と名付けよう」
この酒は 疲れた冒険者や貴族たちの間で瞬く間に評判となった 。
香り高く、リラックス効果もあるとされ、夜のくつろぎの時間に最適だと人気が爆発する。
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しかし、問題が発生した。
「注文が増えているのに、ハーブやスパイスが全然足りない!」
市場を回っても、ジンの需要の高まりとともに 原材料の不足 が深刻化していた。
さらに、ビールに使う ホップ も流通が滞っている。
「このままじゃ生産が追いつかない……」
そんな時、修道院に リディア・フォン・ローゼンフェルド が優雅に現れた。
「ケンイチ様、お困りのようですわね♡」
(……また来た。)
「もしよろしければ、私の家の薬草園をお使いになりません?」
「……本当に?」
「ええ、貴族の家には広大な薬草園がありますの。ケンイチ様が言うジュニパーベリー?もシナモン?も、豊富に揃っていますわ♡」
「それは助かるな……」
しかし、話には続きがあった。
「ただし、見返りに……」
「(ゴクリ)……」
「私と婚姻を結んでいただきます♡」
「……却下だ。」
「即答!? ひどい!」
「俺は結婚する気はないんだよ」
リディアは頬を膨らませたが、すぐにくすっと笑う。
「では、どうしましょう?」
俺は考えた末、提案する。
「薬草園の使用料として、ジンの利益の 3割 を譲るってのはどうだ?」
リディアは少し考え、やがて納得したように微笑んだ。
「ええ、それで手を打ちましょう。」
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さらに、安定供給のために 従業員の雇用 も決定した。
「従業員を雇い、薬草園を管理し、修道院の修道女たちも手伝う。」
「それなら、必要な素材を安定して確保できるわね。」(セラフィーナ)
こうして 修道院と貴族の薬草園が連携し、ジンの材料供給体制が整った 。
「これでジンの生産が安定するな!」
リディアは満足げに微笑みながら、俺に寄ってくる。
「でも……ケンイチ様、やっぱり私のことをもっと意識してくださらないかしら♡」
「……勘弁してくれ。」
セラフィーナが小さく咳払いをしながら、リディアの前に出る。
「……あまりケンイチを困らせないでくださいね?」
リディアとセラフィーナが向き合い、不思議な火花が散っている気がする。
俺は肩をすくめながら、酒造りの準備に戻った。
(……俺の周り、どんどん騒がしくなってる気がするんだが。)




