11話ワインスピリッツとブランデー
「おおお、出た!」
アランビックの管から、透明な液体がポタポタと滴り落ちる。
「これは…成功、ですか?」
フェリシアがガラス瓶を抱えながら、不安げに尋ねる。
「まだわからない。でも、とりあえず味を確かめてみよう」
俺は出来たばかりの液体を少量すくい、口に含んだ。
「……!!」
口の中に広がるのは、ワインとは違う強烈なアルコール感。そして、ブドウ由来の甘さと渋みがわずかに残る。これは……。
「ワインスピリッツ、かな。まだブランデーとは呼べないけど、悪くない」
「ワインスピリッツ?」
エスメラルダが興味深そうに俺の顔を覗き込む。
「ああ、ワインを蒸留するとこうなるんだ。けど、このままだとアルコールが強すぎるし、味に深みが足りない。もっと熟成させれば、ブランデーになる」
「なるほどなぁ。じゃあ、これから熟成させるってことか?」
ベアトリーチェが腕を組みながら言う。
「そういうこと。でも、熟成には時間がかかる。最低でも数ヶ月、できれば数年寝かせたいな」
「数年!?そんなに待つのか?」
「本格的なブランデーを作るなら、それくらいは普通だよ」
「ふーん……でもさ、ケンイチ。お前、面白いことやるな。私ら、気に入ったぞ」
「え?」
「なあ、姉さん?」
「うむ。ケンイチの作る酒……もっと見てみたいのう」
エスメラルダが満足そうに頷いた。
「つまり……」
「私ら、ケンイチについていくことにした!」
「ええっ!?」
「異論は認めない!」
ベアトリーチェがドンと俺の背中を叩く。
「ちょ、ちょっと待って。そんな簡単に決めちゃっていいの?」
「いいのいいの!うちは元々旅鍛冶みたいなもんだし、修道院に鍛冶場がないなら、そこで作ればいいじゃん」
フェリシアもニコニコしながら言う。
「お前がこれからどんな酒を作るのか気になるしな。私たちも、最高の蒸留器を作れるように鍛冶技術を磨きたいし」
「それに……お前と一緒なら、酒も美味しく飲めるしな!」
「ま、まぁ、確かに一人で試行錯誤するより、専門の鍛冶職人がいてくれたほうが助かるけど……」
「なら決まり!」
ベアトリーチェが俺の肩を組んできた。
こうして、俺と三姉妹は修道院へ戻ることになった。
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「……また女性を連れてきたんですね?」
修道院に戻るなり、セラフィーナさんの冷たい視線が突き刺さる。
「ち、違うんです! 彼女たちは鍛冶職人で、蒸留器を作ってくれたんですよ!」
「へぇ~?」
「本当だって!」
「別にいいですけど……」
不機嫌そうな顔をしながら、セラフィーナさんは三姉妹をじっと見つめる。
「あなたたち、ここで何をするつもりですか?」
「ケンイチについてきた!」
ベアトリーチェが即答する。
「お前の作る酒が面白そうだったからな。鍛冶の腕をもっと磨くために、ここで手伝わせてもらおうと思ってる」
「……なるほど。でも、ここは修道院です。酒造りはともかく、住むとなると……」
「働くならいいでしょ?」
「うっ……それは……」
「なら決まり!私たち、よろしくな!」
エスメラルダがグイッと手を差し出してくる。
「セラフィーナさん、いいですか?」
「……まぁ、仕方ありませんね。修道院の仕事も手伝ってもらいますからね?」
「はいはい、任せとけ!」
こうして、三姉妹も修道院の一員となった。
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「さて、仕込んでおいたワインスピリッツを樽に入れて熟成させよう」
俺は慎重にスピリッツを木樽に移していく。
「樽で寝かせることで、香りや味がまろやかになり、深みが増すんだ」
「ふむふむ。すぐに変化するのか?」
ルセリアが興味津々に覗き込んでくる。
「いや、これも時間がかかる。最低でも数ヶ月。でも、早く仕上げる方法がある」
「ほう、どんな方法じゃ?」
「『酒聖』を使う」
俺はスピリッツに手をかざし、『酒聖』の力を発動させた。
すると、樽の中の液体がわずかに輝き、時間を短縮するように熟成が進んでいく。
「……できた!」
樽の栓を抜き、香りを嗅ぐ。
「うわぁ……これはすごい……」
ワインのフルーティーさに、樽の香ばしさが加わっている。
俺は少しだけグラスに注ぎ、一口飲んでみる。
「……これだ!」
「どれどれ?」
ベアトリーチェが俺のグラスを奪い取り、一気に飲んだ。
「おおっ!? なんか、ガツンとくるけど、まろやかで香りがすげえ!」
「これがブランデーだよ」
「はぁ~、すごいなぁ……こんなお酒、初めて飲んだ」
エスメラルダも感嘆の声を上げる。
「ふむ……妾は気に入ったぞ」
ルセリアも満足げに頷く。
「おおっ! じゃあ、これが言っていたブランデーだな!」
「ケンイチさん、すごいですね!」
セラフィーナさんも嬉しそうに微笑む。
「へへっ、まぁな。これからもっと美味しい酒を作るから、期待しててくれよ!」
こうして、ブランデーが完成したのだった。




