27年目の答え
いつものリビング。
テーブルをはさんで向かい合わせに座る2人。
PCが防波堤だ。いつもの空間。
でも、やはり座っていて違和感が消えない。
いつもと妻の様子が違うように感じる。
そうだ!やけに話かけてくるじゃないか?
オレはストレートの聞いてみた。
『やけにオレに話かけるよね?
オレが感じている、違和感それなんだよ』
「夫婦で話かけるの普通でしょ?」
あきらかに苛立っている。なぜなのだろう?
オレは畳みかけるように聞いてみた。
『夫婦って、いうけどさ。オレ達、ふだん会話も無いだろう?』
『異動してから半年間、音沙汰無だったんだぞ。
なのに今日、帰ってから、えらい話すじゃない?』
『おかしいと感じて当たり前だろう?』
「久しぶりに会ったんだから、話するの普通でしょ?
なんで違和感なんて言われなきゃなんないのよっ?」
いつもの口調と眉間に彫刻刀で堀ったような縦の筋が入る。
その見たくない顔がなんとなく懐かしくて、微笑んでしまった。
それがまた妻には腹立たしかったのだろう?
益々顔つきが凶悪になる。
『そこさ。久しぶりに会った?半年ぶりだよね?でもさ』
『久しぶり がおかしいのさ。夫婦で久しぶりだぜ?』
「・・・・・」
『異動してから、1回くらい会ってるよね?2時間あれば会えるんだし。
あの電話のあと、お前、オレんとこに、来ようと思った?』
妻の顔から苛立ちが消えた。
冷静になればわかるだろう?
こんな夫婦の関係は終わらせてもいいと思う。
今回の単身赴任は2人の関係がおかしいと再確認させたのだ。
『オレの言ってることおかしいか?』
「私は話かけたら文句言われたのよ」
『質問と答えが合致してないね。お前、政治家かよ?』
『普段から会話を交わす夫婦ならおかしくないさ。
言葉もろくにないのが当たり前なのに』
「だって夫婦じゃないの?離婚したの?私たち?」
『夫婦ぅ?あ、オレ働いて、給料持って帰って。
で、お前が掃除や洗濯して、夫婦なんだ?そうか?』
いつものPCの画面越しの会話が、いつしかPC画面をよけて
お互い顔を見ながら話をしていることにオレは気づいた。
なんてことだ・・・顔を見ながらの会話が珍しいなんて。
末期症状だなと思う。
ひょんなことからケンカになったが、いい機会だ。
オレはとことん話し合いたかった。
そして27年目に入るこの生活の答えを出してもいいと思っていた。




