守ってあげたい
『ごめんよ』
「いいえ、傍にいてごめんなさい」
ベッドの上の加瀬恭子は、少し頭を下げるような仕草をした。
『謝らないでくれよ。イヤな話聞かせてごめん。
でも、これが真実なんだよ。隠すと、変に想像するだろうし』
「ありがとう。私の前で包み隠さず聞かせてくれて・・・」
『でも酷いもんだろ?愛が無いとあんなもんなんだよ』
「驚いちゃった」
『嫌いになっただろ?』
「来て」
加瀬恭子は座ったまま両手を広げた。
「来て」
オレはなんとなく、そんな気にはなれなかった。
妻への怒りでイライラしていたのと、これでお別れか?という
不安と、悲しみが入り混じった気分だった。
オレは行かないよ。と一言いうと、グラスのミネラルを飲み干した。
たった3分ほどの電話で喉がカラカラだった。
グラスを置いてふと見ると、彼女は両手を広げたままで
オレを見つめている。
『いつまでそうやってんだよ?』
「良二さんが来てくれるまで」
あ~あ どうしてこの女は、これだけオレを揺れさせるのかな?
たった一言で、今までの妻への怒りが何処かへ飛んでいった。
オレは静かに掛け布団をよけてベッドに座った。
加瀬恭子はまだ両手を広げてオレを見ている。
『いつまでそうしてんだよ?』
「抱きしめてくれるまで」
オレはその言葉に負けた。
いつも通り、抱きしめ、そのまま左手を彼女の首に支え、そっと寝させる。
バスローブの下はもちろん裸だ。
白くきれいな胸元がはだける。
彼女はオレの首に手をまわし引き寄せる。
シャワーブースからそれほど時間も経っていない。
またスイッチが入りそうだ。
激しいキス。オレの右足にしがみつく熱く美しい足。
長くきれいな指がオレを握って離さない。
オレはまた溺れてしまう。このかわいい女に。
オレを受け入れるその身体は少し瘦せていた。
そのせいか、より肌は透き通るように美しかった。
さっきのイライラを治癒してくれるのを感じていた。
シャワーブースからほとんど連続だったが
それほど飲んでいないオレは、まだ大丈夫だった。
腕の中でのけぞる彼女は髪が伸びたせいか?よりセクシーだった。
今度はオレが下になる。両手は恋人つなぎ。
上でゆれる彼女のイヤリングが見え隠れする。
「良二さん、良二さん」
オレの名を呼ぶ。
動きはそのままで覆いかぶさる。
上から体重がかかる、この時だけは重いと感じる。
オレの左肩に顔を埋めながら彼女はこういった。
「私、守るからね」
「私ができること。アッ。あなたを守るから」
「あなたを悲しませないから」
「絶対に守るからっ」
「私が・・・」
その声は泣いていた。
無言で薄い背中を抱きしめる。
オレは自分の耳に流れ込む涙をどうすることもできなかった。




