表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/100

往ったり来たり

新しい事業所で1ヶ月が過ぎた。

異動当初、オレは正直怯えていた。どんな社員かもわからない。

全員に総スカンを食らわされたら終わりだ。

事業所を潰すことはそれほど難しい事ではない。

そんなこんなで始まった所長としての仕事だったが

オレの不安はすべて杞憂だった。


新しいニュータウンは、条件もいい、オレも住んでみたいと思う物件だ。

大手電鉄会社のニュータウンと共に分譲したのがよかった。

向こうは敷地面積も広く価格が高い。購入をあきらめた顧客がうちに流れた。

ハウス内覧会も好調。爆発的とは言えないが売り上げは伸びていた。


毎日、弁当と外食が続くのはキツイが、それは家に居た時と変わらない。

あのため息と金の文句を聞かなくていいだけ寿命が延びたように思う。


あと、加瀬恭子がオレを支えてくれていた。

オレが異動してから彼女との連絡はメールからスカイプになった。

家で夜は一人だし、安心して直接話せるからうれしい。

毎晩、10時以降からが画面越しだが、彼女とのデートの時間だ。


最初に彼女からメールが入る


-----------------------------------------------------------------


ただいまです~ 今からお風呂に行くからインは10時すぎになります。

待っててね、今日もお疲れさまでした^^


------------------------------------------------------------------


おもしろいもので、彼女のメールは文面が変化した。

だんだんタメ口になるし、ほんとの彼女みたいだ。

こんなことは彼女には言えないが、本当に付き合ってるみたいだ。


きっと付き合ってますよ! って怒るだろうな。

でもオレの年齢と立場が邪魔をする。

不倫とはこれほど後ろめたく、また甘美なものとは知らなかった。


TVで芸能人のニュースが出ればドキっとするし

政治家の女性問題でドキッとする。

不倫というキーワードがオレには突き刺さる言葉だ。

いくら不満があっても、あいつはオレの妻なんだな。

改めて思う。紙切れ1枚にサインしただけで26年間

オレの妻としてやってきた。

やはりその年月の重みなのだろうな。


そう思いながらオレは加瀬恭子を愛している。

それは紛れもない事実だ。

思うのは彼女に日が当たる場所で普通に恋愛ができないこと。

そのことばかり気にしてしまう。


オレは何度もスカイプで彼女に言った。

本当に付き合ってもいいのかと。

こういうしつこさが50のじじいなのかな。


不倫で家庭崩壊になるのはオレの自業自得だけど

彼女の結婚に支障をきたすことになってほしくはない。


オレは満たされない愛を彼女に求めている。

それプラス、母の面影を持つ女を愛したという

単純な思いで加瀬恭子に惚れている。


オレが彼女を愛するその力を心のエネルギーに変えると

言ってたけど、そんな風に思えるのだろうか?

婚活して、幸せな結婚をしてほしい。


彼女はオレをどう捉えているのだろう?

彼女の思い、心の底が気になった。


彼女の幸せを祈りつつ愛していたいオレ。


思いは行ったり来たり。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ