表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
The BEAST〜Lost record  作者: 幻桜 レイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/9

一つ目、始まりの世界

ツキがゆっくり目を開けると、そこは昨日訪れたばかりの湖が広がっているのが見える。

「この場所は確か、町の大人たちが魚釣りに使ってたはず…。合っていれば林を抜けた先に町がある」

前世の記憶を頼りに回れ右し、林の中をどんどん進んでいく。15分くらい歩いただろうか、整理された道が顔を出した。

「うん、この先にあるはず」

林を抜ければ町が見えてくるはずだ。木材建築の家々が立っているのが見えればここは前世住んでいた町で間違いない。

この世界は自然豊かだ。山、森、湖、花畑、様々な自然の綺麗で美しい姿が広がっている。自然の美しさとは裏腹に外見や能力者への差別が強く根付いている。忌み子だと、化け物だと恐れられ、いじめられる人間の汚さが露呈している悲しみで溢れた世界。自分が虐待を受けたのも能力者として産まれてきてしまったからだろう。

「あった…」

あたしの苦しみが詰まった町。何も変わり映えしないのになぜかやけに静かに思える。

「あの、すみません」

傍にいた老婆に声をかける。空月の情報があるかもしれないし、今この町がどうなっているのかを知りたかった。

「あらかわいらしいお嬢さん。どうしたの?迷子かい?」

「…この町に遊びに来たんです。」

「敬語使えてえらいねぇ…で、どうしたんだい」

「えぇっと…なんでこの町はこんなに静かなの?」

死んだあの日のような嫌な静けさなのだ。まさか、また空月が追われている…?と嫌な考えが出てくる。

「ああ…この町はね、若者が減って老人だらけ。昔は結構賑やかだったんだよぉ。」

「どうして減っちゃったの?」

「うぅん…あれは何年前だろうね。もう年を取りすぎてわからないけど…嫌な事件だった。なんでも、町の外れに化け物が出たみたいで、若者がたくさん武器を手に取り戦ったんじゃ…。でも勝てなかったんだ、それで化け物を恐れた若者がだんだんいなくなって、もうこんなに静かになったんだよ」

「…その化け物はどこに行ったんですか?」

「さぁ…しばらくは町のみんなを一人、また一人と襲ってたみたいだけど、ここ数年はもうそんな話聞かないねぇ…」

「…ありがとうございます。」

ツキは次の住人を探しに駆け出していた。村一番の酒場なら、人が集まっていてもっと情報収集できると考えたからだ。

町の中は老婆が言っていた通り、若い人は全然いなくて散歩する老人やひなたぼっこを楽しむ老人、それぞれ老後の生活を送っているようだ。

町の中心にある酒場にたどり着いた。

ドンっと勢いよく扉を開けると40代〜60代くらいの男性客が何人かいるのがわかる。

ツキの姿を見て、酒場のマスターらしき人物が寄ってきた。

「こらこらお嬢さん。君のお母さんとお父さんは何処かな?ここは子供の入るところじゃないんだ。帰りなさい」

「すみません。ですが、少し聞きたいことがあったので、大人がたくさん来るこの場所に来たのです。お金はあります。なのでどうか、この場に居させてくれませんか?」

「うーん…まぁ…少しだけなら…。こっちにおいで」

マスターは渋々了承してくれて、カウンター席に案内してくれた。

「ほら、こんなのしかないが…」

マスターはオレンジジュースと1口サイズのお肉を3つあたしの前に置いてくれた。

「ありがとうございます、これで払えますか?」

小袋から銀貨を1枚取り出してカウンターに置く。

するとマスターは顔をしかめた。

「…嬢ちゃん、一体何者だ?使えない通貨であるが、銀なんてお高いぜ。」

「…まぁ、あまり言えないけど、そこそこ裕福ではあるかな。」

「…15枚の銅貨の釣りだ。」

「いいえ、お釣りは結構です。私はただ情報が欲しいので、それでチャラでお願いします」

「で、お嬢さんはどんな情報をお求めなんだい?」

ツキは革の鞄から手帳とペンを取り出して、出会った老婆との会話から得た情報を書き込みながらマスターに尋ねる。

「このあたりで何か怪しい人物は見てないですか?例えば…化け物、とか」

心苦しいがこの町の10人に聞くならこの言い方が1番手っ取り早いと思った。マスターの眉がピクっと動いたのを見て、何か知っているんだろうと察することができる。

「そうだな…夜な夜な力のある若者を殺してたとか聞いたことがあるかな。ただこれは何年も前のこと。最近は大人しいのか知らないが、目撃情報が減ってきた。」

マスターのその話を信じることができなくて開いた口が塞がらない。臆病だったあの子が人を夜な夜な殺めていた…?別の人物と勘違いしているのだろうか。

「その人物の姿を聞いても?」

「俺は直接見たわけじゃないが、聞いた話では肌は黒くて、赤い目をしているらしい。服装は…茶色い革の上着、靴は革靴だったかな。」

間違いなどあるはずない、それは正真正銘空月のこと。一体なぜ、あたしの死後も人を殺し続けていたのだろうか。

「そう…ありがとうマスター。」

「嬢ちゃん、あまり危険なことに踏み込むなよ。」

「まぁ、忠告ありがとうございます。お肉とジュース、美味しかったです」

「…俺は言ったからな。」

ツキは立ち上がり、酒場を後にした。

次の目的地はもちろん、空月との思い出の場所だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ