諸悪の根源
2日後の夜だった。
「今度こそ殺してやるわ」
「ああ、これまでの恨みを晴らしてやる」
暗闇に紛れて2人は大きな城壁の上に立っていた。
「空の飛べる私達にこんな城壁なんて無断よね」
「まったくだ。魔物達を召喚したら内側から門を開いて終わりだな」
2人はシオンの作った都市を睨みつけた。
「アイツらが作った街を跡形もなく壊してやる」
「仕込んだ召喚魔法陣を起動するぞ!」
2人は同時に詠唱を開始した。
すると街の外に仕込んだ魔法陣が光りだした。夜中と言う事もあり目立った。
「よし、これで上級魔物を次々に召喚して一気に攻め滅ぼしてやる!」
呪文を唱え終わった時、後ろから声を掛けられた。
「それは困るわ。せっかくここまで開発したのだから」
バッと後ろを振り返ると同じ城壁の上にシオン達が立っていた。
「ふん、来るのが遅かったわね。もう召喚は止められないわよ」
「知っているわ。あなた達の呪文が唱え終わるまで待っていたのだから」
「なに?」
シオンは手を挙げるとルリが魔導具を起動した。
ゴゴゴゴッッッと大きな地響きに似た音と振動が周囲を包んだ。
「な、なんだ!?」
「なにをしたのよ!」
シオンは召喚魔法陣を指さした。
「見てみなさい」
チェリーとベリーは驚愕した顔で魔法陣を見つめた。多くの魔法陣が動き出して1箇所に集まっていったからだ。
「バカな!魔法陣が集まっているだと!?」
目の前ではどんどん魔法陣が1箇所に集まり1つとなっていった。
ハッとチェリーは気付いた。
「おまえは正気か?私達の用意した魔法陣を重ねて1つにしたのね。そんな事をすれば、大悪魔ヴァプラや黒竜レベルの魔物が召喚されるぞ!」
「うん、そうだね。でも、何十体もの魔物を相手にするくらいなら、強力な魔物や悪魔が一体の方が戦い易いのよね~」
なっ!?とチェリーはシオンの言葉に声を詰まらせた。
「………こいつ狂っているんじゃないのか?」
シオンは失敬な!と怒るが、全員が召喚魔法が完了するのを待っていた。
そして全ての魔法陣が1つとなり、大きな輝きを放って、ついに召喚が始まった。
「何が召喚されるかわからないから、注意してね」
「ええ、特別に配備した魔導砲も準備は出来ているわ」
警戒をしながら出てくる者に集中した。
すると突然、魔法陣から光が溢れだし、天を貫いた。
「なにごと!?」
「シオン!ヤバいぞ!この魔力はヴァプラ以上だ!」
「シオンお姉様、なにかとんでもない者が現れますよ!」
仲間達も冷や汗をかくレベルの魔力にシオンも握り締めた杖に力が入る。
そしてついに召喚された者が姿を現した。
「ヤバい!殆どタイムラグなしで全部出てきた!?」
シオン達は城壁から飛び降りると風魔法でゆっくりと着地して、魔法陣の元へ駆け寄った。
「あ、あれは───あれ?」
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魔法陣から出てきたのは【女神イーリス】であった。
いつの間にか肩にいた妖精は居なくなっていた。
「女神イーリス……様?」
シオンの呟きに仲間達が驚いた。
「た、確かに妖精の小さな姿を大きくしたような外見ですね」
「まさか女神様まで召喚できるの!?」
全員が混乱していたが、一番混乱していたのはイーリス自身であった。女神が召喚魔法で顕現するなんて事は、別の世界でもほぼあり得ないからだ。
「えっと………私、召喚されちゃいました?」
「あ、このバカっぽい所はイーリスだよ」
ヒジリはシオンに慌てて説教した。
「シオンお姉様!様を付けて下さい!まさか女神様のお姿を拝見できて感激です!」
聖女ヒジリちゃんは両手を合わせてまたお祈りした。
「妖精の時と違って神々しいですね」
「ええ、そうね」
「もしかしたら一番近くに居た、魔力の大きい人物が誘導されて召喚されたのかも」
ジークやルリもイーリスの姿に目を奪われていた。
その時、チェリーとベリーの2人がやって来た。
「我れらが『神』から離れろ!!!」
2人は魔法を放って威嚇して女神イーリスの側で膝を着いた。
「我が神よ!貴女様が封印から復活される日を夢見ておりました!」
「封印からのご帰還、おめでとうございます」
2人は涙を流しながら平服していた。
「えっ?これどういう状況なの?」
シオンはイーリスに向かって杖を向けたの
「イーリス、貴方はまさか邪神だったの?」
杖を向けられたイーリスは慌てて否定した。
「そんな訳ある訳ないじゃない!こら!どうして私があなた達の神になるのよ!」
イーリスの言葉に2人は平服したままで答えた。
「あれから200年の時間が流れましたが、今でも覚えております。昔の我々双子は、魔界でも低級の魔族でいつも怯えて暮らしておりました。そして、ついに強い魔物に殺されそうになった時、貴女様が降臨して助けて頂きました。さらに、魔界でも生きて行ける様にと【召喚魔法】の力を授けて頂きました恩を忘れてはおりません!」
!????
えっ?
なんのこと????
イーリスが本気でわからないと思っていると───
イーリスは天界に呼び出されていた。
「ここは・・・・ひっ!?」
目の前には上司のイザナミ様が立っていた。
ただ立っていた訳ではない。
鬼の形相で目の前のイーリスを見下ろしていた。
「まず安心しなさい。ここにいる限り、先ほどの世界の時間は止まっています」
な、なにが安心なんですか?
「まさか、神眼まで使ってあなたのことを信じようとしたのに、やってくれましたね・・・」
ガクブルッ
イザナミ様が本気で怒っている!?
「わ、私がなにをしたと言うのですか!」
「まさか本人が覚えていないとは嘆かわしい。どうりで神眼にも映らなかった訳ですね。私はあなたを心底、見損ないました!」
ビクッとイザナミの言葉にイーリスは震えた。
「だから私が何を───」
言葉を言い切る前にイザナミはイーリスが覚えていない出来事を、神力でイーリスが体験した出来事を空間に映した。
「約200年前のことです」
そこにはイーリスがやらかした出来事が映し出されていた。




