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話し合い


 『愚者の盾』の会議終了後、各自準備の時間が設けられていた。


「皆さん! 出発は一時間後です! 時間になったらアインの正門に集合してください!」


 ユウナちゃんの号令にその場のメンバーは了解を示した。各々装備を確認したり、連携の話し合いを始める。

 ボクもユウナちゃんとしっかり話し合わないと。

 そう思い、ユウナちゃんに声をかけようと部屋の中央に行こうとした時、ふと、背後が気になった。


「……?」


 振り返ると、特に何もない。

 そう認識した。

 正しくは、特に注意を引き付けるものがない。

 でもボクはレンから教えてもらって、こういう時の重要性を知っている。

 感覚を研ぎ澄ます。

 レンほどはうまくいかないけど、それで充分だった。


「……イズミん」

「……」


 ボクが気づいたことに驚きを示した彼女は、そのまま静かに酒場の外へと出た。でもその雰囲気がついて来いと言っていて。

 ボクもそのまま外にでると、


「……よく気づきましたね」


 忍び装束に身を包んだイズミんが、白面越しにそう言った。彼女は続ける。


「私の《隠形》スキルは練度が甘かったですか」

「いや、ほとんど見えなかったよ。でも存在感?みたいなのがね」


 ボクの言葉に「精進しましょう」とつぶやく彼女。そんな彼女にボクは問いかける。


「それで、『解放軍』の五将の一人のイズミんが『愚者の盾』に《隠形》しに来てるの?」

「……そんな顔もできたのですね」


 そう言われたボクは、おそらく鋭い目をしている。

 有無を言わせないように。

 いつもの明るさなど、消え失せた態度で。


「常の天真爛漫さは演技ということですか」

「あっちも素だよ。使い分けはするけどね」


 そんなことより、とボクは話を戻す。


「下手な干渉はやめてほしいんだけど」

「そのつもりはありません」


 イズミんは真剣な声で言った。


「『解放軍』の一部部隊をエリアボス討伐にお貸しします。それに加え、私も同行を」

「……総長さんの指示?」

「その通りです」


 ボクは少し考えて、呆れたように言った。


「シスコンだね」

「……」


 総長アルヴァは妹であるユウナちゃんが死なないようにしているのだろう。母数が増えれば、一人が死ぬ確率は下がる。

 とても残酷な考え方だ。

 それに、イズミんが同行するのはユウナちゃんの護衛として動くつもりだからだろう。忍者としての能力は、それだけ高い。


「それで、そっちは?」

「うむ、やはり気づいていたか」


 酒場の影から、一人の巨漢が姿を現す。

 三大ユニオン『鉄鷲』リーダー、エンケである。

 イズミんも気づいていたようで、動じる様子もなかった。というより、彼の発する威圧感は気づかずにいられない。

 そんな彼はボクの目の前でまっすぐこちらを見ると、腕を組んだ。


「『鉄鷲』の精鋭パーティもエリアボス討伐に助力する」

「……その心は?」

「盟友の協力に理由など無い」


 盟友。

 レン。


「……そっか」

「ありがとうございます、イズミさん、エンケさん」

「ユウナちゃん……」


 いつの間に来たのか、ユウナちゃんが扉の前に立っていた。

 ユウナちゃんを交え、連携について話し合う。基本はユニオン別に縦列行動をすることになった。細かい指示は部隊長を設けて行うことに。

 では、と立ち去るイズミんとエンケを見送るユウナちゃんの目には、


「ミンちゃん、頑張りましょうね」


 なりふりかまっていられない必死さが映っていた。






 酒場に戻ると、まだ各チームで話し合っていた。


「おう、ユウナ、ミン。作戦を練るぞ」

「わかったよっ!」


 シュリっちの呼ぶ声に答え、ボクたちは歩み寄る。

 彼女の元まで行くと、彼女は状況を教えてくれた。


「人数は充分揃った。装備も問題ない」


 ただ、火力が物足りない、と彼女は言った。


「火力っ?」

「魔法で攻撃力を上昇させても、威力のある攻撃を打てる奴が少ない。大天使の障壁を超えてダメージを届かせられないかもしれない」

「それに加えて、相手は天使属性。私の属性エンチャントも意味が無いです」


 大天使【世界(タヴ)】。

 その障壁はダメージを軽減させ、属性の弱点もない。つまり攻撃用の魔法も効果が薄い。物理攻撃で高威力を出すのが理想なのだ。


「それじゃ、どうするのっ?」

「スキルの練度を高めさせてる」


 決まった攻撃を反復することで得られるスキルは、さらに反復の練習を繰り返すことでその練度が上がり、設定される攻撃力も上がっていく。

 速度はシステムアシストの加速があるが、あまり差は出ない。それでも火力上昇には有効な手だ。


「なるほどね。ボクもやるべきかなっ」

「残り時間がもうないからあんま期待できねーな。それに、ミンに高火力は無理だろ」


 そういえばそうだ。おそらく『愚者の盾』の火力担当は前から取り組んでいたんだろう。


「……でも、それで補えるでしょうか?」


 ユウナが不安そうにつぶやく。

 その言葉に唸るように眉をひそめて悩むシュリっち。


「一応、ウチの高火力馬鹿を呼んでるんだけどよ……」


 高火力馬鹿?


「それって一体――」


 とボクが詳しく聞こうとしたところで、




 バンッッッッ!!!




 と酒場の扉がすごい音を立てた。

 慌ててそっちを見ると、身の丈ほどの大剣を背負った男の人が立っていて。


「ただいま戻りました!!!!」


 すごく爽やかな顔をして大きな声でそう言った。

 ボクたちが思わず硬直したところで、シュリさんの呆れたような溜息の音が聞こえたのだった。



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