襲撃
深夜を過ぎ。
後数時間で夜明けを迎えるような時間が来た。
「……」
ガキ共と、そして怜美を振り返りつつも、気配を断って住処を抜け出す。
いくらガキ共が成長していようと、気づかれはしない。やろうと思えば、全員を安楽死させることも出来るだろう。
しかし、俺はやらない。
そのまま目的地へと向かった。
襲撃地点のほど近くで入江の所属する団体が待機しているらしい。
「嘘かも知れないが」
信用なんて無い。嘘であれば、皆殺しにすれば済む。
そんなことを片隅に考えながら、俺は入江と合流を果たした。
「やあ、絶好の襲撃日和だね」
「そんなのは毎日だ」
どこか緊張してぎこちない入江に、鼻を鳴らして俺は答えた。この襲撃で一つでも証拠を掴めば、この監察区は開放されるのだ。ようやく動き出した事態に、どうやら入江は慄いているらしい。
ちなみに入江は俺の容赦の無さを見ているため、俺の発言に顔を引き攣らせていた。
俺は言う。
「いつだ?」
入江は真剣な表情で言った。
「一時間後。それまでに作戦を伝えるよ」
それを聞くと、俺は襲撃地点である高層廃墟ビルを見上げた。ふざけた大きさのビルでありながら劣悪な環境に置かれた廃墟は、俺の目にどこか不気味に映った。
◇◆◇◆
思う。
家族とは、自分自身だ。
思う。
自分とは、周囲の産物だ。
思う。
大事だ、と。
思う。
だから。
思う。
だから――
――行かなくては。
◇◆◇◆
時間。
「行け」
入江の指示に従って、防刃装備やらを着込んだ部隊が幾つかに分かれてビルに入った。すぐ内で見張りがいたらしい。僅かな戦闘音の後、特に滞ること無く進んでいる。
この掃き溜めで生きる奴らはケモノだ。そんな奴らに防弾装備は不要で、組付かれる前に殺すのが最善だ。
銃、という便利なものがあるのだからと俺は薦めたが、入江は「殺しはしない」と抜かして鎮圧用のゴム弾とやらを使っている。
ただ、狂ったケモノの中には痛覚を失った奴もいるため、部隊にも被害はあったようだ。
入江は甘い。
が、俺は契約に従うまでだ。
部隊前方に混ざり、索敵と無力化を行っている。
どうも部隊の連中は気配で索敵ができないらしく、不思議がられたのは言うことでもないだろう。
俺たちは一定の被害を出し続けながら、階層ごとに鎮圧を続けていく。
ビルを使っているのは及川財閥で間違いないようで、階層を四分の一残した辺りから拳銃を持った黒服が出てきた。
だが、都合がいい。
極限まで気配を薄めて近づき、一気に畳み掛ければ気配の読めない奴は雑魚に等しい。敵が数で攻めれば、俺は味方の部隊に紛れ、先に進んだ。
そのまま進んで、残りの階層が五つを切った時。まずい、と部隊の一人が言った。
「及川獅郎に離脱の動きあり」
外部から望遠で確認している奴の報告らしい。
部隊に余力はなく、実行部隊は全てビルの中らしい。このまま逃がせば、態勢を整えるまでに時間が掛かる。
「俺が行く」
そう言うと、俺は力を込めて踏み出した。
途端、部隊の進行より幾倍も速く上層へと向かった。敵を無視して。
俺に気がそれた敵を、部隊の連中に任せる。押し付ける。
「悪いとは思ってる」
なんて嗤いながら。
俺は最上層へと向かった。




