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ほのぼの

《フラジール・オンライン》をより良くするために、第二話からけっこう改稿をしています。

 話の流れを先に理解してから読んでいただけると、嬉しいです!


攻略組の主力を『解放軍』に改名しました。


 その後、しばらくのんびりした時間を過ごして、腹を落ち着ける。現実同様の満腹感を感じさせるこの世界では、食い過ぎた時の苦しさも再現されている。それが収まるまでの期間まで考えられている忠実さ加減だ。


 ユウナと攻略についての議論を交わした後、マイブームの話になる。どうやらユウナは衣服を作ってみたいらしく、スキル習得から頑張っているようだ。


「よければ、私がレンくんのジャケットを作りましょうか……?」


 ジャケットは革製の防具の一つだが、衣服を作るためのスキルでも製作可能である。というよりそちらで作ったほうが性能が良くなる場合がある。

 俺は迷うような表情をする。


「いや、いいよ。攻略で忙しいのにわざわざ俺のために作らなくてもさ」

「そうですか……」


 悲しそうな彼女の様子から、俺は急遽方針変更した。


「やっぱ一枚でいいから作ってくれないか? 時間かかってもいいから」

「はいっ!」


 一転して、ユウナが笑顔。ふ、ちょろいな、と言いたかったが、自分がとんだチキン野郎だったためにそれは叶わなかった。


「それじゃ、レンくんはどうなんですか?」

「ん? 何が?」

「マイブームです」


 そう言われて、しばらく迷う。が、俺のマイブームといえば、一つしかない。


「刀作りだな」

「刀、ですか? 剣ではなく?」

「気づいたか。そ、刀だよ」


 俺はそう言うと、アイテムストレージを開いた。そこをしばらくスクロールして目当ての物を探しだすと、タップ。

 目の前に現れたものを机の上に置くと、ユウナが興味深そうな視線をそれに注いだ。


「これが?」

「ああ、新作。一応名前を付けたんだぜ」

「へぇ! なんて言うんですか?」

「レン刀」

「いい名前ですっ」

「……ゴメンナサイ。ツッコんでください」


 ユウナはクスッと笑うと、目の前の刀をそっと手に取った。鞘から静かに抜き出して刀身を外気に晒し、タップ。浮かび上がった情報ウィンドウを覗きこむ。


「『翠雨』ですか……綺麗な名前です」

「その感想は、なんだか恥ずかしいな」


 初めて言われる種類の感想に俺がむずがっていると、ユウナは『翠雨』の情報を詳しく見始めた。

 そこには、まだまだ上位の剣には及ばない効果が載っていることだろう。しかし彼女は感嘆の声を漏らした。


「すごい……。もうこんなに性能が高いなんて」

「いや、まだまだだよ。剣に全然及ばないしさ。やっぱ見よう見まねじゃ限界がなぁ……」


 そうしんみりとかなり本音を言ったつもりだったが、ユウナは「そんな事無いですっ」とこっちに身を乗り出した。


「刀なんて武器の種類はまだNPCの高級店にしかありませんし、そこの武器よりこの『翠雨』のほうがかなり性能が高いです」

「え? そうなのか?」


 驚きに三白眼を丸くすると、ユウナは「はい」と頷いた。どうやら、《錬成》したり砥いだりしただけの《翠雨》は結構良かったらしい。


「なら、売れるか?」

「充分だと思います。それに格好良いです」


 たしかに刀には、剣にはない美しい刃紋が浮かんでいる。外見的にも惹かれるものがある。

 攻略組主力が言うなら間違いはないだろう。そう思って、刀にそっと触れながら言った。


「なら、店頭に並べてみよう」

「えっと……売るつもり、無かったんですか?」


 すこし理解が及んでいないように言うユウナ。「そうだよ」と俺が答えると、彼女は更に不思議そうな顔をした。


「それなら何に使うつもりで……?」

「ああ、それは火をおこすのに必要な薪割りで……いや、だから趣味だって言ったろ?」


 途中から白けた半眼を向けられた俺は、趣味ということで誤魔化す。いまさら誤魔化せたとも思いはしないが、ユウナは特に何も言及しなかったので、俺もあえて言葉を重ねはしなかった。

 しばらく俺を半眼で見続けたユウナだったが、途中でだんだん顔を赤くして、やがて目をそらした。よくわからないが、とりあえず半眼で見られることがなくてホッとする。

 そこで俺は机の上を見て、口を開く。


「ハーブティいるか?」

「あ、なら秘蔵のもので」


 空になったカップを見て出てきた台詞に、ユウナが返す。散々ミンがねだってくる俺秘蔵のハーブティをちゃっかり要求してきていた。

 俺はそれに苦笑すると、


「わかった。楽しみにしといてくれ」

「……え、いいんですか?」

「おいおい、要求したのはユウナじゃないか」


 俺がそう言うと「そ、そうですけどっ」とユウナはなんだかためらっているような様子を見せた。

 それに対して、


「遠慮はいいよ。たまには飲まねぇと秘蔵の意味もないしさ」


 それに今飲まねぇともう飲めないかもよ? とも俺は言った。


「いいんですか?」

「おう。ただ、ミンには内緒な。コイツ、それ知ったらうるさいから」


 俺は自分の隣でぐっすりな奴を示しながら言うと、ユウナはくすっと笑った。

 それから本当に嬉しそうな顔をすると、机の上の『翠雨』を見て言った。


「きっとレンくんがこれを使うと、絵になるんでしょうね」

「そっか? なんか刀の方に振り回されてこけそうだけど」


 俺のそんな言葉にユウナは視線を俺の方に向ける。それに合わせるように俺が彼女の方に向くと、


「……ははっ」

「……ふふ」


 お互い吹き出すように笑ったのだった。


「それじゃ、ハーブティ淹れてくる」

「それなら私も秘蔵のケーキを出しちゃいます」

「え、なにそれ。美味しそう」

「ミンちゃんには内緒ですよ?」


 そんな会話をかわしつつ互いに再び軽く笑うと、俺たちはその夜遅くまで、雑談に興じるのだった。






 ……しかしここでタイミング悪く起きたミンが、


「なにゆえ除け者にーーーーっ!」


 と怒り狂い、俺に飛びかかってきたのは、ご愛嬌。




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