表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/4

第3話 暴虐令嬢、王都で震える


 王都アストラディア。


 それは、アストラディア王国の中心。


 白き聖都。


 光の王城。


 千年王国の心臓。


 そう呼ばれる場所だった。


 歴史書を開けば、必ずその名が出てくる。


 初代国王が聖剣を掲げた地。


 魔王戦争の時代、人類側の最後の防衛線となった城塞都市。


 幾度も魔族の軍勢に迫られ、幾度も焼かれ、幾度も血に濡れ、それでもなお白い壁を築き直してきた王国の象徴。


 王国の民にとって、王都は誇りだった。


 貴族にとって、王都は舞台だった。


 商人にとって、王都は夢だった。


 騎士にとって、王都は守るべき中心だった。


 そして。


 ルミエラ辺境領で生まれ育ったリリアーナ・フォン・エヴァルディアにとって、王都は物語の中にしか存在しない場所に近かった。


 綺麗で。


 遠くて。


 眩しくて。


 自分とは関係のない場所。


 ずっと、そう思っていた。


 馬車は、長い街道を越え、ゆるやかな丘を登っていく。


 霧は、もうほとんど残っていなかった。


 ルミエラ辺境領の深い霧とは違う。


 王都周辺の空気は澄み切っていて、青空がどこまでも広がっている。


 春の陽光が石畳を照らしている。


 風は穏やかで、遠くから鐘の音が聞こえた。


 その音に合わせるように、白い鳥たちが空を横切っていく。


 道の両脇には、整えられた並木が続いていた。


 木々の根元には季節の花が植えられ、赤、白、黄色、淡い紫の花弁が風に揺れている。


 辺境の野の花とは違う。


 人の手で選ばれ、配置され、美しく見えるよう整えられた花々だった。


 馬車の数も増えていた。


 貴族の紋章を掲げた豪奢な馬車。


 商人の荷馬車。


 騎士団の巡回馬。


 旅装の学生らしき少年少女。


 王都が近づくにつれ、世界はどんどん賑やかになっていく。


 その賑やかさが、リリアーナには眩しかった。


 音が多い。


 人が多い。


 空が広い。


 ルミエラの霧深い森とは、何もかも違う。


 そこには魔獣の遠吠えではなく、人々の笑い声があった。


 夜の魔力を含んだ土の匂いではなく、花と焼き菓子と磨かれた石畳の匂いがあった。


 世界は、こんなにも違う顔を持っていたのだ。


 リリアーナは、馬車の窓へそっと額を寄せた。


 視界の先。


 丘を越えたその向こうに。


 巨大な白い城壁が見えていた。


 高い。


 果てしなく高い。


 ルミエラ辺境領の砦とは比べものにならない。


 白亜の壁は陽光を受けて輝き、無数の尖塔が空へ向かって伸びている。


 王城。


 聖堂。


 貴族街。


 王立学園の塔。


 すべてが、白を基調に作られていた。


 それはまるで、世界そのものが光でできているような都だった。


「……綺麗」


 思わず、そんな言葉が零れた。


 自分でも驚くほど素直な声だった。


 胸の奥が、ふわりと震える。


 怖さより先に、憧れのようなものが浮かんだ。


 あそこに、本で読んだ王立図書館があるのだろうか。


 あの塔が、王立学園の魔法実技棟なのだろうか。


 あの白い街並みのどこかに、花屋や甘味店や、同じ年頃の令嬢たちが通う店があるのだろうか。


 そう思った瞬間。


「……怖いです」


 小さく付け足した。


 憧れが膨らむより早く、恐怖が胸を掴んだ。


 向かい側のアイリス・ノクティアが静かに瞬きをする。


「両方なのですね」


「はい……」


 リリアーナは、胸元のブローチをぎゅっと握った。


 黒翼と白花。


 エヴァルディア家の紋章。


 屋敷を出る前、母セレフィーナが自分の手で留めてくれたものだった。


「綺麗です……。すごく、綺麗です。お城も、街も、空も……。まるで絵本みたいで、私、少し見惚れてしまいました。でも……」


「でも?」


「私みたいな人が、入っていい場所には見えません……」


 その声は、どこか泣きそうだった。


「全部、白くて、綺麗で……。きっと、王都の方々も綺麗で、上品で、完璧で……。そんな場所へ、暴虐令嬢が行ったら、場違いなのではないでしょうか……」


 リリアーナは視線を落とす。


 窓硝子に映る自分の姿。


 白銀の髪。


 深紅の瞳。


 華奢な身体。


 見た目だけなら、美しい令嬢に見えるかもしれない。


 けれど、その内側には。


 暴虐魔王の守護霊。


 黒焔。


 災厄級の魔力。


 世界から恐れられる噂。


 そんなものがある。


 王都へ近づけば近づくほど、自分だけが異物のように思えてしまう。


 白い世界へ、黒い染みが入り込むような気がした。


 そう思った瞬間、リリアーナの胸が苦しくなる。


 自分がいるだけで、この美しい景色を壊してしまうのではないか。


 誰かが笑っている場所へ、自分が近づいただけで笑顔が消えてしまうのではないか。


 暴虐令嬢。


 その名は、まだ王都へ入る前から、リリアーナの心を縛っていた。


 アイリスは、そんな主の姿を静かに見つめていた。


 リリアーナは優しい。


 優しすぎる。


 だからこそ、自分を“怖がられる存在”として見てしまう。


 自分が誰かを傷つけることを、誰より恐れている。


 そして、自分が誰かに恐れられることにも、誰より傷付いている。


 アイリスは、少しだけ目を細めた。


「お嬢様」


「は、はい……」


「王都にも、汚い場所はあります」


「え?」


「権力争い。貴族同士の腹の探り合い。陰口。嫉妬。打算。笑顔の裏に刃を隠した者も多いでしょう」


「うぅ……聞くだけで怖いです……」


「ですが、それだけではありません」


 アイリスは続ける。


「綺麗な花屋もあります。甘味店もあります。本好きの学生もいます。真面目な教師もいます。困っている人を放っておけない人もいます。噂だけで判断する人間もいますが、噂を疑う人間もいるはずです」


「……」


「王都は、お嬢様が思っているほど、完璧な場所ではありません。完璧な人間だけが住んでいる場所でもありません。だから、お嬢様だけが場違いということはありません」


 リリアーナは瞬きをした。


 アイリスは滅多に慰めを言わない。


 嘘も言わない。


 だからこそ、その言葉は胸へ落ちる。


「完璧では……ない?」


「はい。白い壁の内側にも、弱さはあります。迷いもあります。恐怖もあります。欲もあります。優しさもあります。お嬢様と同じように、誰かに怯えながら生きている人も、きっといるでしょう」


「……私と、同じように?」


「はい」


 アイリスは、まっすぐにリリアーナを見た。


「ですので、お嬢様だけが怯える必要はありません」


「でも、私は暴虐令嬢で……」


「それも、王都の一部が勝手に作った印象です」


 アイリスの声は淡々としている。


 だが、そこには静かな怒りがあった。


「お嬢様を知らぬ者たちが、好き勝手に恐怖を語っただけです。黒焔を見たこともない者が怪物と呼び、お嬢様と話したこともない者が暴虐令嬢と呼んだ。実際のお嬢様が、どれほど震えながら焼き菓子を食べ、入学試験という言葉だけで青ざめ、子供の泣き声を聞いただけで自分の恐怖より先に手を伸ばす方なのか、彼らは知りません」


「アイリス……」


「私は、そういうものが嫌いです」


 珍しい言葉だった。


 感情を表に出さないアイリスが、“嫌い”と口にした。


 リリアーナは少し目を丸くする。


 アイリスは小さく息を吐いた。


「お嬢様は、もっと怒っていいのです」


「む、無理です……!」


「でしょうね」


「即答ですか……」


「お嬢様ですので」


 リリアーナは、少しだけ笑ってしまった。


 その小さな笑みを見て、アイリスもほんの少しだけ表情を和らげる。


 この笑顔を守りたい。


 アイリスは、そう思った。


 世界が暴虐令嬢と呼ぶ少女が、ほんの少し安心して笑うだけで、こんなにも胸が緩む。


 ならば自分は、王都でもこの笑顔の隣に立ち続けよう。


 たとえ貴族が何を言おうと。


 教会が何を囁こうと。


 監察院がどんな目を向けようと。


 アイリス・ノクティアは、リリアーナの侍女なのだから。


 すると。


 馬車の後方。


 影のように揺れていた黒い気配が、低く唸った。


『生ぬるい』


「ヴァル様……」


 漆黒の外套。


 深紅の瞳。


 圧倒的な威圧。


 暴虐魔王ヴァルゼリオン・エヴァルディアが、不機嫌そうに窓の外を見ていた。


 守護霊である彼は、馬車の座席に座っているわけではない。


 影の中に立ち、揺れながらも確かに存在している。


 黒い魔力が外套の裾から煙のように零れ、時折、窓硝子に映る白い城壁を歪ませていた。


『白い壁など、余なら半日で焼き崩せる』


「初手から物騒ですぅ……!」


『事実を述べただけだ』


「述べなくていい事実です!」


 リリアーナは涙目になる。


 ヴァルゼリオンは鼻を鳴らした。


『くだらん。王都だろうが聖都だろうが、人間の巣に変わりない』


「ヴァル様、人間への評価が低すぎます……」


『当然だ』


 その声は冷たい。


 だが。


 リリアーナは知っている。


 この魔王は、本当に人間を憎み切っているわけではない。


 もし本当に憎んでいるなら、自分を守護霊として守ったりしない。


 人間の血を引くリリアーナを、こんなにも過保護に扱ったりしない。


 ヴァルゼリオンは、かつて人間を愛した。


 だからこそ、世界を許せなくなった。


 その矛盾を、リリアーナはまだ完全には理解できない。


 けれど。


 時折見せる不器用な優しさだけは分かる。


『リリア』


「は、はい」


『貴様は貴様だ』


「……?」


『白い街へ入ろうが、何も変わらん。怯えたければ怯えていろ。泣きたければ泣いていろ。足が震えるなら震わせたまま歩け。声が出ぬなら黙っていろ。誰かに笑われたなら、覚えておけ。余が後で燃やす』


「最後が台無しです……!」


『だが、自分を卑下するな』


 深紅の瞳が、まっすぐリリアーナを見る。


『余の血を継ぎながら、そこまで自己評価が低いのは逆に才能だ』


「褒められている気がしません……!」


『褒めておらん』


「ですよねぇ……!」


『だが、貴様が己を怪物と呼ぶなら、余はそれを許さん』


 リリアーナの動きが止まる。


 ヴァルゼリオンは、白い王都を睨むように見たまま続けた。


『世界が貴様を何と呼ぼうが勝手だ。暴虐令嬢。黒焔の怪物。魔王の器。好きに呼ばせておけ。だが、貴様自身までその名に屈するな』


「……」


『貴様は臆病だ。愚かで、甘くて、すぐ泣く。余から見れば危なっかしくて見ていられん。だが、怪物ではない』


 その言葉は、優しいとは言い難かった。


 だが、リリアーナの胸に深く刺さった。


 怪物ではない。


 ヴァルゼリオンがそう言ってくれた。


 世界最凶の暴虐魔王が。


 誰よりも恐ろしい力を知る存在が。


 自分を怪物ではないと言ってくれた。


 リリアーナは、思わず目を伏せた。


「……ヴァル様は、いつも言葉が怖いです」


『事実だ』


「でも……たまに、とても優しいです」


『寝言は寝て言え』


「起きています……」


『なら黙っていろ』


「ひどいです……」


 リリアーナは両手で顔を覆った。


 けれど、その指の隙間から覗く頬は、少しだけ赤かった。


 アイリスが静かに紅茶を差し出す。


「お嬢様、深呼吸を」


「は、はい……」


 リリアーナは震える手でカップを受け取った。


 温かい。


 香草の落ち着く香りがする。


 少しだけ、胸のざわつきが和らぐ。


 馬車は、そのまま王都へ近づいていった。



 やがて。


 巨大な城門が見えてくる。


 白銀の門。


 聖剣と太陽の紋章。


 重厚な石造り。


 門の上には、王国旗が風を受けて翻っていた。


 白地に金の太陽。


 その下を、今日も多くの人々が通っていく。


 商隊。


 旅人。


 冒険者。


 貴族の馬車。


 王都へ出入りする者たちの長い列。


 馬の嘶き。


 車輪の音。


 商人の声。


 子供の笑い声。


 門兵の号令。


 辺境では聞いたことのないほど多くの音が、同時にリリアーナの耳へ届いた。


 その人の多さに、リリアーナは完全に硬直した。


「……ひ、人が多いです……」


「はい」


「多すぎませんか……?」


「王都ですので」


「私、もう帰りたく……」


「まだ着いておりません」


「着く前から限界です……」


 リリアーナは本気で涙目だった。


 門番たちが、順番に検問を行っている。


 身分証確認。


 荷物検査。


 魔力反応確認。


 王都だけあって警備も厳重だった。


 門の上には、魔導具らしき水晶が複数埋め込まれている。


 入城者の魔力を感知するためのものだろう。


 リリアーナはそれを見た瞬間、さらに青ざめた。


「アイリス……あれ、魔力を測るものですか……?」


「おそらく、危険魔力感知用の水晶です」


「私、通った瞬間に割りませんか……?」


「通常出力なら問題ないかと」


「通常出力でなかったら……?」


「割れる可能性があります」


「怖いですぅ……!」


 ヴァルゼリオンが不機嫌そうに水晶を見た。


『安物だな』


「ヴァル様、壊さないでくださいね……?」


『触れずとも壊れそうだ』


「それが怖いのです……!」


 そして。


 エヴァルディア家の馬車が近づいた瞬間。


 門の上に並んだ水晶の一つが、白い光を失った。


 次の瞬間。


 中心から、黒紫の色が滲んだ。


 ひび割れるわけではない。


 砕けるわけでもない。


 けれど、清浄な白を保っていたはずの感知水晶が、まるで夜を吸い込んだように黒く染まり、内側で赤い火花を散らした。


 門兵たちの顔色が変わる。


 列に並んでいた商人が息を呑む。


 近くにいた子供が、母親の服の後ろに隠れた。


「……反応したぞ」


「黒紫……?」


「まさか、魔族反応か?」


「いや、あれは……」


 ざわめきが走る。


 そのざわめきの中で、一人の若い門兵が目を見開いた。


 名を、ガレス・ボルド。


 まだ二十代前半。


 正義感はある。


 だが、経験が浅い。


 噂を信じやすく、手柄を焦りやすく、恐怖と使命感の区別がつかない若さがあった。


 彼は田舎の下級騎士家の三男だった。


 王都の門兵として任じられた時、家族は誇ってくれた。


 王都を守れ。


 王国の盾になれ。


 危険を見逃すな。


 そう言われて送り出された。


 だからこそ、ガレスは常に“何かを見つけなければならない”と思っていた。


 平穏を守ることより、脅威を見つけて止めること。


 正しい手順より、危険を排除すること。


 まだ若い彼には、その違いがよく分かっていなかった。


 ガレスの視線が、エヴァルディア家の馬車の紋章へ向く。


 黒翼と白花。


 その紋章を見た瞬間、彼は声を荒げた。


「止まれ!」


 馬車が止まる。


 リリアーナの肩がびくっと跳ねた。


「ひゃっ……!」


 アイリスの目が細くなる。


 ヴァルゼリオンの気配が、かすかに重くなった。


 門兵の一人、年配のロウエン・マクスが慌ててガレスへ視線を向ける。


「ガレス、落ち着け。貴族家の馬車だ。まずは確認を――」


「確認ならできています!」


 ガレスは強張った顔で叫んだ。


「エヴァルディア家の紋章! 黒紫反応! 報告書にあった危険人物です!」


 リリアーナの胸が、きゅっと縮んだ。


 危険人物。


 その言葉が、刃のように刺さる。


 アイリスが静かに扉へ手を伸ばす。


「お嬢様、私が対応します」


「は、はい……」


 けれど、ガレスは待たなかった。


 馬車の窓へ近づき、緊張と恐怖と高揚が混じった声で言い放つ。


「中にいるのは、リリアーナ・フォン・エヴァルディアだな?」


 リリアーナは震えた。


 逃げたい。


 隠れたい。


 でも、答えなければもっと怪しまれる。


 彼女は震える手で窓を少しだけ開けた。


「は、はい……。リリアーナ・フォン・エヴァルディア、です……」


 ガレスの目が鋭くなる。


「暴虐令嬢だな?」


 その言葉に、リリアーナの顔から血の気が引いた。


「……っ」


 暴虐令嬢。


 面と向かって言われた。


 王都へ入る前から。


 城門で。


 たくさんの人の前で。


 胸が痛い。


 喉が詰まる。


 窓を閉めたい。


 何も聞こえない場所へ逃げたい。


 リリアーナは唇を震わせる。


「わ、私は……その……」


「危険魔力反応が出た。別室で確認を行う。馬車から降りろ」


 ガレスは一方的に言った。


 ロウエンが厳しい声を出す。


「ガレス、言葉を慎め。相手は辺境伯家の令嬢だ」


「ですが、ロウエン先輩! この者は報告書にあった危険人物です! 幼少期に黒焔で人を消し飛ばしたという――」


「噂と報告を混同するな」


「でも、水晶が反応しています!」


「だからこそ、正式な手順で確認する。高圧的に扱うな」


 ロウエンは経験ある門兵だった。


 若い頃から王都の門を守り続けてきた。


 商人の嘘も見た。


 貴族の横暴も見た。


 魔力反応を隠して入り込もうとした魔術師も見た。


 だからこそ、恐怖だけで判断してはいけないと知っていた。


 エヴァルディア家が危険視されていることも知っている。


 だが、同時に、王国の門兵として守るべき礼儀も理解していた。


 危険人物であろうと、貴族令嬢である。


 証拠もなく罪人のように扱えば、それは王国の品位を損なう。


 何より。


 窓の奥で震えている少女は、報告書に書かれていた“暴虐令嬢”という文字とは、どうにも重ならなかった。


 だが、ガレスはもう引けなくなっていた。


 周囲の視線。


 黒紫に染まった水晶。


 暴虐令嬢という噂。


 それらが彼の未熟な正義感を煽っていた。


「リリアーナ・フォン・エヴァルディア。危険魔力保持者として、一時的に身柄を確認する」


「み、身柄……?」


 リリアーナの声がかすれる。


「私、何も……何もしていません……」


「していないかどうかは、こちらが判断する」


 ガレスが馬車の扉へ手をかける。


 アイリスが即座に動いた。


 扉の内側から手を添え、冷たい声で言う。


「お待ちください」


 その声には、氷のような静けさがあった。


「お嬢様に触れる許可を、どなたが出しましたか」


「門の権限だ」


「門の権限は、貴族令嬢を罪人のように扱う権利ではありません」


「危険人物を野放しにはできない」


「危険人物と断定する根拠は?」


「水晶反応がある」


「感知水晶の反応は、危険の可能性を示すものです。罪を示すものではありません」


 アイリスの声は淡々としていた。


 だが、内側には明らかな怒りがある。


 ガレスは一瞬怯んだ。


 しかし、周囲の目がある。


 ここで引けば、自分が怯んだように見える。


 そう思ったのだろう。


 彼は強引に扉を開けようとした。


「どけ!」


 その瞬間。


 リリアーナの顔色が完全に青ざめた。


 誰かに腕を掴まれる。


 連れて行かれる。


 別室。


 確認。


 危険人物。


 暴虐令嬢。


 冤罪。


 言葉が頭の中で絡まり、息ができなくなる。


「ご、ごめんなさい……」


 リリアーナは震える声で呟いた。


「私……何もしていないのに……ごめんなさい……」


 その一言が。


 ヴァルゼリオンの逆鱗に触れた。


 馬車の中の影が、膨れ上がった。


『……リリア』


 低い声。


 それは静かだった。


 静かすぎて、逆に恐ろしかった。


「ヴァ、ヴァル様……?」


『なぜ謝る』


 リリアーナの視界が、黒に染まる。


『罪もないのに、なぜ貴様が謝る』


「だ、だって……」


『黙っていろ』


 次の瞬間。


 リリアーナの深紅の瞳が、さらに暗い紅へ変わった。


 空気が沈む。


 城門前の騒音が、一瞬だけ遠のいた。


 風が止まる。


 感知水晶が、びしりと小さく鳴った。


 リリアーナの身体に、暴虐魔王ヴァルゼリオンが憑依した。


 馬車の扉が内側から開く。


 先ほどまで怯えていた少女が、ゆっくりと外へ出た。


 その姿は、リリアーナであってリリアーナではない。


 白銀の髪が風に揺れる。


 深紅の瞳が、まっすぐガレスを射抜く。


 小柄な少女の身体であるはずなのに、その気配は巨大だった。


 まるで城門より大きな闇が、そこに立っているようだった。


「な、なんだ……」


 ガレスが後ずさる。


 だが、遅い。


 リリアーナの姿をしたヴァルゼリオンが、一歩で距離を詰めた。


 そして。


 ガレスの胸ぐらを掴み上げた。


「ひっ……!?」


 ガレスの足が地面からわずかに浮く。


 周囲の門兵たちが凍りつく。


 ロウエンが剣へ手を伸ばしかけ、しかし本能がそれを止めた。


 抜けば死ぬ。


 そう理解してしまった。


 ヴァルゼリオンは、ガレスの顔を覗き込む。


 少女の唇が、低く、冷たく、魔王の声を紡いだ。


『貴様』


 その一言だけで、ガレスの顔が歪んだ。


『誰の許しを得て、リリアに触れようとした』


「わ、私は……門兵として……」


『門兵?』


 ヴァルゼリオンの口元が、わずかに歪む。


 笑っている。


 だが、それは人を安心させる笑みではなかった。


『ならば問う。罪を問うなら証を出せ。危険と断ずるなら根拠を示せ。証もなく我が血を縛ると言うなら――貴様の首に縄をかける覚悟もあるのだろうな』


「ひ……」


『震えろ』


 魔王級の威圧が、ガレス一人へ向けられた。


 周囲にいる者たちには、ただ空気が重くなったようにしか感じられない。


 だが、ガレスには違った。


 彼の視界には、白い王都ではなく、黒い玉座が見えた。


 山のような骸。


 燃える空。


 翼を広げた魔王。


 逃げられない死。


 抗えない支配。


 魂ごと握り潰されるような恐怖が、全身を駆け抜ける。


『今、貴様がリリアへ向けた恐怖の万分の一だけ返してやる』


「が……あ……」


 ガレスの口から泡がこぼれた。


 目の焦点が合わなくなる。


 身体が痙攣する。


 そして。


 彼は、白目を剥いて気絶した。


 ヴァルゼリオンが手を離すと、ガレスはその場に崩れ落ちた。


 周囲が静まり返る。


 誰も動けない。


 もう一人の門兵、ロウエンだけが、蒼白な顔で一歩前へ出た。


「お、お待ちください……!」


 彼の声は震えていた。


 けれど、逃げなかった。


 膝が震えている。


 額には汗が滲んでいる。


 それでも、ロウエンは深く頭を下げた。


「こ、このたびは、部下が大変な無礼を働きました……! 正式な手順を踏まず、エヴァルディア辺境伯家のご令嬢へ不当な扱いをしようとしたこと、門兵を代表して謝罪いたします……!」


 ヴァルゼリオンは、ゆっくりとロウエンを見た。


『貴様は少しは物が分かるようだな』


「は、はい……! 恐れながら、感知水晶の反応は確認が必要ですが、罪状なく連行する権限はございません……! こちらの不手際です……!」


『ならば覚えておけ』


 ヴァルゼリオンは、倒れたガレスを一瞥した。


『リリアは臆病だ。すぐ怯える。すぐ謝る。だが、それを理由に踏み込んでよいと思うな』


「は、はい……!」


『次に同じことをした者がいれば』


 黒い魔力が、足元で静かに揺れた。


『城門ごと、余が躾ける』


「ひぃ……!」


 ロウエンの顔がさらに青ざめる。


 だがその直後。


 ヴァルゼリオンの気配が、ふっと薄れた。


 リリアーナの瞳が元の深紅に戻る。


 背筋が丸まり、肩が小さく震える。


「……え?」


 リリアーナ本人が、我に返った。


 まず見えたのは、目の前で深々と頭を下げている年配の門兵。


 次に見えたのは、地面で泡を吹いて気絶している若い門兵。


 その次に、自分の右手。


 なぜか、胸ぐらを掴んでいたような形で固まっている。


「……」


 数秒。


 リリアーナは完全に停止した。


 そして。


「ひゃああああああああっ!?」


 城門前に、リリアーナの悲鳴が響いた。


「わ、私、今、何をしましたか!? 門番さんが倒れています! 泡を! 泡を吹いています! 私ですか!? 私がやりましたか!? 王都に入る前から、門番さんを気絶させてしまいましたか!?」


 アイリスがすぐに支える。


「お嬢様、落ち着いてください」


「落ち着けません! 私、犯罪者ですか!? 入学試験どころか、入城初日に捕まりますか!?」


「正当防衛に近いかと」


「近い、ではなく断言してくださいぃ……!」


 リリアーナは真っ青になった。


 その顔色は、気絶したガレスに負けていない。


 いや、むしろ本人まで泡を吹きそうだった。


「私……もう駄目です……王都に入る前から事件を……お父さま、お母さま、ルシェリア……ごめんなさい……」


「お嬢様、まだ終わっていません」


「私の人生が終わりそうです……!」


 ロウエンが慌てて頭を下げる。


「お、お嬢様! こちらの不手際でございます! この件は、門兵側の過剰対応として処理いたします! どうか、どうかお気になさらず……!」


「気にしますぅ……!」


 リリアーナは涙目で叫んだ。


「門兵さんが泡を吹いているのに、気にしない方が難しいです……!」


 倒れたガレスは、門兵二人に抱えられて運ばれていく。


 ロウエンは何度も頭を下げた。


「通行に問題はございません。感知水晶の反応は、特殊血統および高魔力保持者によるものと記録いたします。どうぞ、お通りください」


「ほ、本当に……?」


「はい。このたびは、大変失礼いたしました」


 ロウエンは、そこで少しだけ顔を上げた。


 その目には、まだ恐怖が残っていた。


 けれど同時に、門兵としての誠実さも残っていた。


「お嬢様。恐れながら……若い者が、噂に呑まれました。私も、止めきれませんでした。申し訳ございません」


「ロ、ロウエンさん……」


「王都には、噂を信じる者が多くおります。ですが、全員がそうではございません。どうか……今日の門のことだけで、王都すべてを嫌わないでいただければと」


 リリアーナは、目を見開いた。


 怖がられていると思った。


 嫌われたと思った。


 けれど、この門兵は謝っている。


 怯えながらも、自分へ言葉を尽くしてくれている。


「……はい」


 リリアーナは、小さく頷いた。


「私も……怖くて、うまく説明できなくて……ごめんなさい」


「お嬢様が謝ることではございません」


 ロウエンは深く頭を下げた。


「どうか、よき王都滞在を」


 その言葉に、リリアーナの胸がほんの少しだけ温かくなった。


 リリアーナは、震える手で胸元のブローチを握った。


「……私、王都の門から嫌われました……」


「お嬢様」


 アイリスが静かに言う。


「門は感情を持ちません」


「そういう意味ではありません……!」


 ヴァルゼリオンが影から不機嫌そうに呟く。


『殺してはおらん。問題ない』


「大問題ですぅ……!」


『胸ぐらを掴んだだけだ』


「令嬢は門兵さんの胸ぐらを掴みません!」


『余は令嬢ではない』


「私の身体です!」


『面倒だな』


「面倒で済ませないでください……!」


 そんなやり取りをしている間に。


 馬車は、ようやく王都へ入っていった。



 白い街。


 石畳。


 噴水。


 花壇。


 並ぶ店々。


 焼き菓子の甘い香り。


 行き交う学生たち。


 貴族令嬢たちの笑い声。


 騎士団の巡回。


 大道芸人。


 吟遊詩人。


 すべてが眩しかった。


 けれど、リリアーナは馬車の中で完全に小さくなっていた。


「……王都に入りました」


 アイリスが言う。


「はい……」


「第一関門突破です」


「突破の仕方が最悪です……」


「無事に通過しました」


「門番さんが無事ではありません……」


「命に別状はありません」


「そういう問題では……」


 リリアーナは顔を覆った。


「王都の人たち、きっと今のを見ていましたよね……? 暴虐令嬢が門兵さんを気絶させたって、噂になりますよね……?」


「可能性はあります」


「否定してください……!」


「しかし、事実に近いので」


「事実が一番怖いです……!」


 窓の外では、すでに視線が集まっていた。


「今の……」


「エヴァルディア家の馬車だ」


「門兵が倒れたぞ」


「やっぱり暴虐令嬢……?」


「でも、泣きそうな声が聞こえなかった?」


「門兵の方が先に無礼をしたらしいぞ」


「いや、胸ぐら掴んだって……」


「若い門兵が先に暴虐令嬢って呼んだんだと」


 囁きは、様々だった。


 恐怖。


 好奇心。


 同情。


 疑念。


 一つではない。


 王都の人々は、リリアーナを一斉に怪物として見るわけではなかった。


 だが、視線は確実に集まっている。


 リリアーナの肩がまた縮こまる。


「うぅ……」


 アイリスがカーテンへ手を伸ばす。


「閉めますか?」


 リリアーナは一瞬迷った。


 閉めたい。


 視線が怖い。


 囁き声が怖い。


 けれど。


 閉めたら、この街も見えなくなる。


 花屋も。


 菓子店も。


 噴水も。


 学生たちの笑い声も。


 全部、怖さと一緒に遮ってしまう。


 リリアーナは、震えながら首を横に振った。


「……少しだけ、見ていたいです」


「分かりました」


「怖いです。でも……綺麗です。私、怖いものしか見ないまま帰りたくありません」


 その言葉に、アイリスの目が少しだけ優しくなる。


「はい」


 リリアーナは、窓の外を見続けた。


 怖い。


 けれど。


 見たい。


 この街を。


 この世界を。


 少しでも。


 知りたいと思った。


 王都の中心へ進むにつれ、建物はさらに立派になっていった。


 白い石造りの邸宅。


 高い鉄柵。


 壁に絡む薔薇。


 水路に架かる小さな橋。


 青い制服を着た学生たちが、楽しげに歩いている。


 彼らは明日の入学試験の受験者かもしれない。


 そう思うと、リリアーナの胸がまた縮こまる。


「あの方々も……明日、試験を受けるのでしょうか」


「可能性はあります」


「皆さん、落ち着いて見えます……。私だけ、こんなに震えていて……」


「外からは分かりません。あの中にも、緊張している者はいるでしょう」


「そうでしょうか」


「はい。お嬢様ほど露骨ではないだけです」


「最後に刺さりました……」


 その時、リリアーナの視線が、通りの角で止まった。


 小さな甘味店だった。


 白い壁に、淡い桃色の屋根。


 窓辺には焼き菓子が並び、店先には苺を飾ったタルトが置かれている。


 赤い苺が、宝石みたいにきらきらしていた。


「……苺タルト」


 思わず声が漏れる。


 アイリスが即座に反応する。


「お嬢様?」


「い、いえ……見ていただけです」


『欲しいなら買えばよい』


 ヴァルゼリオンが当然のように言った。


「む、無理です! あんな綺麗なお店に私が入ったら、店内が凍ります!」


「凍る前に、始祖様が燃やす可能性もあります」


「もっと駄目ですぅ……!」


『余は菓子屋を燃やす趣味はない』


「少し安心しました……」


『リリアを泣かせた菓子屋なら別だ』


「やっぱり不安です……!」


 リリアーナは涙目になりながらも、苺タルトから目を離せなかった。


 いつか。


 いつか、ああいう店に普通に入れるだろうか。


 店員に怖がられずに、苺タルトを一つくださいと言えるだろうか。


 そんな小さすぎる願いが、胸の奥に生まれる。


 リリアーナはそれを恥ずかしく思い、でも消すことはできなかった。


 ヴァルゼリオンがふと呟く。


『あの塔か』


「え?」


『学園の塔だ。魔力の流れが他と違う』


 リリアーナは窓の外を見る。


 王都の奥。


 王城より少し離れた高台に、複数の塔を持つ巨大な建物が見えた。


 白い外壁。


 青い屋根。


 広大な敷地。


 いくつもの校舎と庭園。


 王立アストラディア学園。


 明日、自分が入学試験を受ける場所。


 リリアーナの口から、か細い声が漏れた。


「……大きいです」


「はい」


「私、あそこで試験を……?」


「はい」


「……馬車を反転してもらうことは」


「できません」


「即答……」


『あの程度の建物で怯えるな』


「建物そのものより、そこにいる人々が怖いのです……!」


『人間など大半は脆い』


「そういう問題ではありません……」


 リリアーナは胸元のブローチを握りしめた。


 心臓が速い。


 けれど、目を逸らせなかった。


 あそこへ行く。


 明日。


 あの場所へ。


 そう思うだけで泣きそうになる。


 けれど、同時に。


 ほんの少しだけ、胸が高鳴っていた。



 馬車は、やがてエヴァルディア家の王都別邸へ到着した。


 貴族街の外れ。


 大通りから一本奥へ入った、静かな区画。


 かつては華やかだったのだろう。


 白い外壁は少し色褪せ、鉄門には古い傷が残っている。


 庭園も王都の大貴族邸ほど整ってはいない。


 それでも、敷地はきちんと掃かれ、窓硝子は磨かれ、玄関には新しい花が飾られていた。


 古びてはいる。


 けれど、放置されてはいない。


 誰かがちゃんと、帰ってくる者のために整えてくれた家だった。


「ここが……王都別邸」


 リリアーナは馬車から降りて、少しだけほっと息を吐いた。


 白すぎる王都の中で、この少し古びた屋敷は、どこかルミエラの家に近い空気を持っていた。


 玄関前には、王都別邸を管理する数人の使用人が並んでいた。


 その先頭に立つ老女が深く頭を下げる。


「お待ちしておりました、リリアーナお嬢様」


「あ……は、はい。お世話になります……」


 リリアーナが慌てて頭を下げ返すと、老女は少し驚いたように目を瞬かせた。


 王都で噂される暴虐令嬢とは、どうやらだいぶ違う。


 そう思ったのかもしれない。


 しかし老女はすぐに柔らかく微笑んだ。


「お疲れでしょう。お部屋を整えております」


「ありがとうございます……」


 その笑みが思ったより優しかったので、リリアーナは少しだけ肩の力を抜いた。


 だが、ヴァルゼリオンは別邸を見上げ、不満げに目を細めた。


『結界が脆い』


「ヴァル様……?」


『外壁の東側が甘い。庭の奥にも死角がある。屋根裏に古い魔術跡。地下に使われていない魔力溜まり。侵入者を招いているようなものだ』


「そ、そんなに……?」


「始祖様の基準が高すぎます」


 アイリスが淡々と言う。


『これではリリアが眠れん』


「眠れない原因はたぶん試験です……」


『結界を張り直す』


「目立たない程度でお願いします!」


『ならば半径一里を黒焔で囲む』


「絶対に目立ちます!」


「始祖様」


 アイリスが低く制止する。


「お嬢様は明日、入学試験です。王都到着初日に別邸周辺を魔王城化しないでください」


『魔王城化などしておらん』


「では、しようとしないでください」


『……ふん』


 ヴァルゼリオンは不服そうだった。


 だが、リリアーナが涙目で見上げると、渋々と魔力を抑えた。


『薄く張るだけだ』


「本当に薄くですよ……?」


『余の薄くは貴様らの厚くより上だ』


「不安しかありません……」


 そう言いながらも、リリアーナは少しだけ安心した。


 過保護すぎる。


 物騒すぎる。


 けれど、ヴァルゼリオンは自分を守ろうとしてくれている。


 それが分かるから、怖いだけでは終わらない。



 部屋に案内されたリリアーナは、荷物を解く前に机の上へ明日の試験案内を広げた。


 王立アストラディア学園。


 入学試験日程。


 一、筆記試験。


 二、礼法面接。


 三、魔力測定。


 四、実技試験。


 その文字を見た瞬間、リリアーナは石像のように固まった。


「……魔力測定」


 声が震える。


「魔力測定……あります……」


「ありますね」


 アイリスが冷静に頷く。


「私……測定器を壊しませんか……?」


「出力を抑えれば問題ありません」


「抑えられなかったら……?」


「壊れる可能性があります」


「正直すぎますぅ……!」


『測定器が脆いのが悪い』


 ヴァルゼリオンが当然のように言った。


『余の血を測るなど、器の方が身の程を知るべきだ』


「身の程を知って壊れたら困るのです!」


 リリアーナは頭を抱えた。


「筆記試験も怖いです……礼法面接も怖いです……実技試験も怖いです……でも、魔力測定が一番怖いです……」


「お嬢様」


「はい……」


「今日は出力調整の確認だけ行いましょう」


「今からですか……?」


「はい。泣く前に」


「泣く前提……」


「泣いた後ですと、魔力が乱れます」


「事実です……」


 アイリスは試験案内を丁寧に畳み、机の端に置いた。


「まず深呼吸です」


「はい……」


「魔力を流す量は、紅茶に砂糖を一粒落とす程度の意識で」


「紅茶に砂糖……」


「間違っても鍋ごと蜂蜜を流し込まないでください」


「そんなつもりは……」


『リリアならやりかねん』


「ヴァル様まで……!」


 リリアーナは涙目になりながら、指先にほんの少しだけ黒い魔力を集めた。


 黒い蝶の羽のような魔力が、ふわりと揺れる。


 アイリスがその動きを見守る。


 ヴァルゼリオンも、珍しく口を出さずに見ていた。


 リリアーナは、恐る恐る魔力を消す。


「……できました?」


「はい。今の程度なら問題ありません」


「本当ですか?」


「はい」


『遅いがな』


「今は速度ではなく安全性の練習です……!」


 そんなやり取りを何度か繰り返すうちに、窓の外は夕暮れへ変わっていた。


 白い王都が、淡い金色に染まっていく。


 王城の塔には灯りがともり、遠くの聖堂から夕刻の鐘が鳴った。


 その音を聞いたリリアーナは、窓辺に立った。


 王都の夜は、ルミエラとはまるで違う。


 霧がない。


 森の音もない。


 代わりに、人の声と馬車の音と、遠くの音楽が聞こえる。


 窓の向こうには、王立学園の塔が見えていた。


 明日、あそこへ行く。


 そう思うと、また胸が苦しくなる。


「……私は、本当に行けるのでしょうか」


 リリアーナは小さく呟いた。


 背後で、アイリスが荷物を整える手を止めた。


 ヴァルゼリオンも、影の中で静かに目を開く。


「今日、王都の門で怖がられました。街の人にも見られました。門兵さんを気絶させてしまいました……私ではないけれど、私の身体で……。明日は、もっとたくさんの人がいます。試験官の方も、受験者の方も……きっと私を見ます」


 リリアーナは窓の外を見たまま続ける。


「私、怖いです。怖くて、逃げたいです。でも……今日、王都を見て、少しだけ綺麗だと思ってしまいました。お花屋さんも、お菓子屋さんも、学園の塔も……少しだけ見てみたいと思ってしまいました」


 それは、彼女にとって小さな告白だった。


 恐怖だけではなかった。


 ほんの少しの憧れがあった。


 知らない世界を見たいという気持ちがあった。


 そのことを認めるのが、リリアーナには少し怖かった。


 なぜなら、期待すれば傷付くから。


 希望を持てば、裏切られた時に痛いから。


 それでも。


 胸の中に芽生えた小さな光を、なかったことにはできなかった。


 アイリスが静かに言った。


「行けます」


「アイリス……」


「怖がりながらでも、泣きそうでも、お嬢様は今日、ここまで来ました。なら明日も、試験会場の門までは行けます」


「門まで……」


「その後は、その時考えましょう」


「少し刻みますね……」


「一気に全部考えると、お嬢様は倒れますので」


「否定できません……」


 リリアーナは少し笑った。


 ヴァルゼリオンが低く言う。


『震えても行くなら、それでよい』


「ヴァル様……」


『怖くない者などいくらでもいる。愚か者ほど恐怖を知らん。だが、怖いと知ってなお進む者は少ない』


 黒い魔王は、窓の外の学園塔を睨むように見た。


『貴様は臆病だ。だが、臆病なまま進むなら、それは弱さではない』


 リリアーナは、胸元のブローチを握った。


「……はい」


『それに』


「はい?」


『明日、誰かが貴様を泣かせたら、余が覚えておく』


「燃やすと言わなかっただけ進歩ですね……?」


『状況次第だ』


「やっぱり燃やす可能性が……!」


 リリアーナの悲鳴が、王都別邸の部屋に響いた。


 アイリスは静かに紅茶を淹れる。


 怖い夜だった。


 けれど、一人ではなかった。



 同じ夜。


 王都の一角。


 聖陽王国ルクスティア王家が滞在する迎賓別邸では、一人の青年が机へ向かっていた。


 白銀に近い金髪。


 蒼銀の瞳。


 整った横顔。


 凛とした気配。


 セルヴィアス・ルクスティア。


 聖陽王国第一王子。


 次代の王と呼ばれる存在だった。


 机の上には、王立アストラディア学園の入学試験資料が置かれている。


 彼は王子である。


 本来なら、特別推薦でも、王族枠でも、いくらでも学園に入る道はあった。


 だが、セルヴィアスはそれを選ばなかった。


 一般受験者と同じ試験を受ける。


 それが彼の意思だった。


「殿下、本当に一般受験で行くんですか?」


 横の椅子にだらしなく腰かけた側近、カイネル・ヴァルフォードが軽い口調で言う。


 赤茶色の髪。


 金褐色の瞳。


 騎士らしい体格。


 だが、その態度は王子の側近とは思えないほど気安い。


「今ならまだ、特別枠に切り替えられますよ? 王子なんだから、誰も文句言わないでしょうし」


「当然だ」


 セルヴィアスは淡々と答えた。


「王族だからといって、最初から特権で入る気はない」


「真面目ですねぇ」


「学ぶ場に立場は関係ない」


 セルヴィアスは資料へ目を落とす。


「それに、私は見たいんだ」


「何をです?」


「同じ世代の者たちを」


 セルヴィアスの声は静かだった。


「王宮にいれば、私の周りには選ばれた者しか来ない。私に都合のいい言葉を選び、王子として扱い、失礼がないよう整えられた者たちだ。だが、学園には違う者もいる。貴族の子、騎士の子、地方領主の子、才能で選ばれた平民。そこで何を見られるかは分からない」


「相変わらず、王様になる準備ばっかりしてますね」


「私は王族だ」


「でも、明日は受験者ですよ」


 カイネルはにやりと笑う。


「殿下も、他の連中と同じように緊張していいんですよ?」


「緊張はしている」


「え、してるんですか?」


「当然だ」


 セルヴィアスは真顔で言った。


「試験を受ける以上、不合格の可能性はある」


「いや、殿下が落ちたら試験官全員が顔面蒼白ですよ」


「そういう話ではない」


 セルヴィアスは少し眉を寄せた。


「王子だから受かると思われるなら、なおさら自分の力で示す必要がある」


 カイネルは肩を竦めた。


「はいはい。真面目王子」


「カイネル」


「怒らないでくださいよ。褒めてます」


「褒めているようには聞こえなかった」


「照れ隠しです」


「誰のだ」


「俺の?」


 セルヴィアスはため息をついた。


 その表情は、王宮で見せる完璧な王子の顔ではなかった。


 少しだけ疲れていて。


 少しだけ気安い。


 幼馴染であるカイネルの前だからこそ見せられる顔だった。


 その時、扉が静かに叩かれた。


「入れ」


 セルヴィアスが許可を出す。


 扉が開き、黒を基調とした礼装の男が入ってきた。


 艶のある黒髪。


 鋭い金色の瞳。


 整った端正な顔立ち。


 細身で長身。


 余計な動作を一切削ぎ落としたような歩き方。


 知性と威圧感を同時に感じさせる男だった。


 ユリウス・アルヴェルト。


 聖陽王国第一王子補佐官。


 宰相府特別監察官。


 白銀宰相補佐。


 氷眼の参謀。


 沈黙の智将。


 王子の影。


 そう呼ばれる、セルヴィアスの側近の一人である。


「殿下」


 ユリウスは一礼した。


「王都到着後の報告をお持ちしました」


「ご苦労」


 セルヴィアスが資料から顔を上げる。


 カイネルは椅子の背にもたれたまま、わざとらしく肩をすくめた。


「出た。夜でも黒ずくめ参謀」


「貴方は夜でも姿勢が悪いですね、カイネル」


「第一声がそれかよ」


「事実です」


「相変わらず頭が固い」


「貴方は相変わらず口が軽い」


 視線がぶつかる。


 火花は散らない。


 氷と火が、いつものように噛み合わずにぶつかっているだけだった。


 セルヴィアスは小さく息を吐く。


「二人とも、明日は試験だ。今夜くらい静かにしてくれ」


「俺は静かですよ」


「私も必要事項を述べただけです」


「それが静かじゃないと言っている」


 セルヴィアスの言葉に、二人は同時に黙った。


 もっとも、納得したわけではない。


 単にセルヴィアスの前だから引いただけだ。


 ユリウスは机の前へ進み、数枚の書類を置いた。


「本日、王都城門にて、エヴァルディア辺境伯家の馬車が入城しました」


 カイネルの目が、にやりと細くなる。


「ああ、噂の暴虐令嬢ですね」


 セルヴィアスの表情が少し引き締まる。


「門で何かあったと聞いた」


「はい」


 ユリウスは淡々と頷いた。


「危険魔力感知水晶が黒紫反応を示しました。門兵ガレス・ボルドが対象を危険人物と判断し、正式手順を踏む前に強制確認を行おうとした。その後、対象リリアーナ・フォン・エヴァルディアに一時的な魔力変質が発生。守護霊、もしくは憑依存在による干渉があった可能性が高いです」


「それで?」


「ガレス・ボルドは精神的衝撃により失神。命に別状はありません」


 カイネルが吹き出しかける。


「門兵が泡吹いたって噂、半分本当だったんだ」


「笑い事ではありません」


 ユリウスの金色の瞳が冷たくカイネルを射る。


「王都城門で、危険血統保持者が守護霊の干渉を見せた。通常なら、監察対象として危険度を一段階上げる案件です」


「通常なら、ね」


 カイネルは肘をつきながら言った。


「でも、その門兵が先に無礼を働いたんだろ?」


「そうです」


 ユリウスは否定しなかった。


「ガレス・ボルドの対応は未熟でした。噂に呑まれ、手順を逸脱し、貴族令嬢へ不当な威圧を行った。処分対象です」


「なら、暴虐令嬢だけ責めるのは違うんじゃないですかねぇ?」


「責める、とは言っていません。警戒すると言っています」


 ユリウスの声は冷たい。


「情状と危険性は別です。彼女が被害者であることと、彼女の内側に国家規模の危険があることは同時に成立します」


 セルヴィアスは書類を手に取り、静かに目を通した。


「……目撃報告に、本人がかなり動揺していたとある」


「はい」


「憑依後、彼女自身が門兵の状態を見て悲鳴を上げた、と」


「複数の証言があります」


「暴虐令嬢らしくはないな」


 セルヴィアスが呟く。


 ユリウスはすぐに返す。


「だからこそ、判断が難しいのです」


「難しい?」


「はい」


 ユリウスは、淡々と続けた。


「本当に冷酷で暴力的な者なら、制御は容易です。欲、名誉、権力、恐怖。いずれかで行動が読める。しかし、報告を見る限り、リリアーナ・フォン・エヴァルディアは臆病で自己評価が低く、他者からの恐怖に非常に敏感です。その一方で、境界狼襲撃時には商人父子を守るために自ら馬車を飛び出している」


 セルヴィアスの指が、書類の上で止まる。


「境界狼襲撃?」


「本日、王都到着前の街道で発生した案件です。対象は商人父子を保護。防御魔法を展開。守護霊の干渉により境界狼を殺害せず戦闘不能化したとの報告があります」


「殺していないのか」


「はい」


 ユリウスは少しだけ目を細めた。


「そこが重要です。暴虐魔王の守護霊が関与しながら、殺傷を避けている。これは本人の意志が強く働いた可能性があります」


 カイネルが口元を緩める。


「つまり、噂の暴虐令嬢は、魔獣を前にして震えながら子供を守った泣き虫令嬢かもしれないってことか」


「軽く言うな」


「事実なら、むしろいい話じゃないですか」


「いい話で済ませられるなら、国家に監察機関など不要です」


 ユリウスの声がわずかに低くなる。


「彼女の背後には、始祖魔王ヴァルゼリオンがいる。黒焔は魂、呪い、結界すら焼く可能性を持つ禁忌級の力です。本人が善良であっても、力が善良とは限らない」


 カイネルの表情から、軽さが少し消えた。


「お前、魔王血統ってだけで疑いすぎじゃないのか」


「私は過去に学んでいるだけです」


 ユリウスの金色の瞳が、冷たく揺れた。


「魔族被害で家族を失った者は、王国に少なくありません。魔王、黒焔、禁忌魔法。それらを“本人が優しそうだから”という理由で見逃すほど、私は楽観的ではありません」


「……」


 カイネルは何か言いかけて、やめた。


 ユリウスの過去を知っているからだ。


 幼少期、魔族被害によって家族の一部を失った男。


 それが彼の合理主義を作った。


 冷たさではなく、二度と同じことを起こさないための警戒。


 それを、カイネルも理解している。


 理解しているからこそ、余計に噛み合わない。


 セルヴィアスは静かに言った。


「ユリウス」


「はい」


「君は、彼女を危険だと思うか」


「はい」


 即答だった。


 ユリウスは迷わない。


「国家危険因子として、警戒すべき存在です」


「彼女自身を見てもいないのに?」


「見ていないからこそ、報告と事実で判断します」


 ユリウスの声は揺れない。


「私は噂だけで断罪する気はありません。ですが、同情だけで危険性を見落とす気もありません」


「……君らしいな」


「殿下」


 ユリウスは、まっすぐセルヴィアスを見た。


「優しいだけでは、国は守れません」


 その言葉は、何度も聞いたものだった。


 セルヴィアスの胸に、静かに落ちる。


 優しさ。


 理想。


 信頼。


 それらは尊い。


 だが、それだけで国は守れない。


 ユリウスはいつも、その現実を突き付けてくる。


 耳が痛い。


 時に冷酷にも聞こえる。


 だが、セルヴィアスは知っている。


 この男は王国を愛している。


 そして、セルヴィアスを次代の王として本気で支えようとしている。


 だからこそ、甘やかさない。


 だからこそ、厳しい。


 カイネルが小さく息を吐いた。


「でもさ、ユリウス」


「何ですか」


「王になる奴が、最初から誰かを危険因子としか見られなくなったら、それもそれで終わりだろ」


 ユリウスの眉が、わずかに動いた。


 カイネルは続ける。


「殿下は人を見る。お前は危険を見る。俺は空気を見る。三つとも必要なんじゃないの?」


「珍しくまともなことを言いますね」


「珍しくは余計だ」


「ですが、一理あります」


「認めるの早いな」


「貴方の人格はともかく、発言の一部は有用です」


「本当に一言多いよな、お前」


 セルヴィアスは、二人のやり取りを聞きながら、書類へ視線を落とした。


 リリアーナ・フォン・エヴァルディア。


 暴虐令嬢。


 魔王の愛し子。


 黒焔の姫。


 災厄令嬢。


 その名は、王都に入った初日から事件を起こした。


 門兵を気絶させた。


 感知水晶を黒紫に染めた。


 守護霊による憑依反応。


 国家危険因子。


 そう書けば、確かに危険な存在だ。


 だが。


 同じ報告書には、別の記述もある。


 本人は怯えていた。


 謝っていた。


 商人の子供を守るために飛び出した。


 魔獣を殺さず止めた。


 門兵が倒れたことに青ざめていた。


 王都を見て、怖がりながらもカーテンを閉めなかった。


 それらの情報は、噂の暴虐令嬢とは違う顔を示している。


「明日、会えば分かる」


 セルヴィアスは静かに言った。


 カイネルがにやりと笑う。


「お、殿下、やっぱり興味持ってる」


「人物としてだ」


「はいはい、人物として」


「カイネル」


「分かってますって」


 ユリウスは少しだけ厳しい目を向けた。


「殿下。接触する場合は慎重にお願いします」


「もちろんだ」


「彼女本人が善良であっても、守護霊は別です。ヴァルゼリオンは、報告通りならば極めて危険な存在です。リリアーナ嬢を刺激することは、守護霊を刺激することと同義です」


「分かっている」


「特に、同情だけで近づかないでください」


 セルヴィアスはユリウスを見た。


 その言葉には、単なる忠告以上の意味があった。


 王子として。


 次代の王として。


 危険な者へ安易に心を寄せるな。


 そう言っている。


 セルヴィアスはしばらく沈黙し、やがて小さく頷いた。


「私は、噂だけで誰かを判断したくない」


「はい」


「だが、危険を見ないふりもしない」


「それでよろしいかと」


「だから明日、見る」


 セルヴィアスの蒼銀の瞳が、静かに揺れる。


「彼女が、噂通りなのか。それとも、噂の向こうに別の顔があるのか」


 ユリウスは一礼した。


「その判断を、私は補佐いたします」


 カイネルは笑った。


「俺は面白そうなので観察します」


「カイネル」


「冗談ですよ。半分は」


「半分は本気なのか」


「もちろん」


 セルヴィアスはまたため息をついた。


 けれど、少しだけ空気が和らいだ。


 その夜。


 王都の別邸で、リリアーナは震えながら試験案内を抱きしめていた。


 同じ王都の迎賓別邸で、セルヴィアスは静かに報告書を見つめていた。


 カイネルは面白がりながらも、その裏で周囲の空気を読み。


 ユリウスは冷静に、危険と可能性を秤にかけていた。


 彼らはまだ出会っていない。


 けれど、すでに互いの名は届いている。


 暴虐令嬢。


 聖陽の王子。


 王子の騎士。


 氷眼の参謀。


 それぞれの肩書きが、王都の夜に静かに重なっていく。


 片方は、恐れられることに怯え。


 片方は、期待されることに縛られ。


 片方は、面白がりながら本質を見ようとし。


 片方は、現実を見据えて警戒する。


 そして。


 明日。


 王立アストラディア学園の入学試験会場で。


 彼らは初めて、同じ場所に立つことになる。


 まだ誰も知らない。


 暴虐令嬢と呼ばれる少女が、王子の運命を少しずつ揺らすことを。


 そして。


 冷たい現実を信じる補佐官が、やがてその少女へ頭を下げる日が来ることを。


 王都の夜は、静かに更けていく。


 白い塔の下。


 別々の部屋で。


 リリアーナは震えながら明日の試験案内を抱きしめ。


 セルヴィアスは静かに同じ試験資料へ目を落としていた。


 二人はまだ出会っていない。


 けれど、同じ夜。


 同じ試験を前に。


 それぞれの胸に、違う種類の緊張を抱えていた。


 暴虐令嬢。


 聖陽の王子。


 その肩書きの向こう側にいる、本当の二人が出会うまで。


 あと、一日。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ