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おそらく20251117

この物語は、一度下書きとして六話まで書いたものの、

設定の都合が悪くなってしまい、一から書き直すことになった作品の〝最初のバージョン〟です。

後日、似た内容の物語を新しく投稿する予定があります。

その時は、

「ああ、これはこの作品の書き直し版なんだな」と思っていただければ嬉しいです。


投稿したら後書きにでも報告しますね。


「久方ぶりだな。(わっぱ)


 雪の降る真冬、外の掃除をしていたら後ろからそう呼ばれた。


 固まってしまった。

 寒さで凍ってしまったかと思うほどに。



 うちの家系は神社をやっている。

 取引相手の源家の長女が話しかけてきた。


 童と呼んだ少女は確か四才だったろうか。

 四十過ぎの俺に童、つまりガキと呼ぶのは周りから見たらおかしいはずだ。


 でも、俺はその声を聞いて八つか九つだったころの記憶がよみがえる。


 三十弱ほど前、曾爺ちゃんが俺を呼んできた。

 部屋には曾爺ちゃんと学ランを着た男子高校生。

 そこに俺だけだった。


「なんだ。(わらべ)か」

「そうは言わんでくださいよ、姉さん」


 曾爺ちゃんはこのクソ生意気な高校生を「姉さん」と呼んだ。


「宗十郎。なぜこいつなんだ?」

「私の息子や、孫よりも宗太が適任と思ったからです」


 半世紀以上も年が離れてるであろうに曾爺ちゃんを呼び捨てにする高校生に俺は意味が分からないと思う。


「息子にも孫にも話してないんだろう? この(わらべ)が生まれなかったら、墓までもってくつもりだったのかよ」

「姉さんならどうにかすると信じていたからです。それに、適任が来るまで黙っていたんですよ」

「じ…爺ちゃん? どういうこと?」


 一向に俺が呼ばれた理由が話される気がしなかったのでもう、聞くことにしたような気がする。


「宗太。この方は私の姉です」


 四十過ぎてからこんな告白されたら、頭真っ白か冗談と思うかの二択だと思う。

 だが、当時は


「……この見た目で、女で、八十過ぎてんの!? どっからどう見てもクソDK(男子高校生)じゃん!」


 と返した。


「……相当口の悪い子に育ってんな。宗十郎に似たのか」

「姉さんの血ではないでしょうか?」

「最初の人生はおしとやかだったので違います。やはり宗十郎では?」


 曾爺ちゃんと自称曾爺ちゃんの姉は静かに喧嘩をしていた。

 曾爺ちゃんが怒っているところなんて見たことなかったが、迫力と迫力のぶつかり合いだった。


 でも、曾爺ちゃんと自称曾爺ちゃんの姉はどちらも懐かしいような顔をしていた。


「……じ……爺ちゃん、で、俺はなんで自称曾爺ちゃんの姉を名乗るのを知らせてきたの?」

「おい(わっぱ)。お前、信じ――」「宗太に託したいことがあるからです」

「俺に……たくしたいこと?」


 思いっきりDKをスルーして話す曾爺ちゃんは慣れている感じがした。


「はい。姉さんの協力をしてほしいのです」

「は?」

「……そんな顔をせずに」

「宗十郎。ここは大丈夫か?」

「ここだけ、外しています」


 何を外している?

 意味も分からずにいると、自称曾爺ちゃんの姉のお腹のあたりからなんか出てきた⁉


 心臓がバックンバックンしている。


 出てきたのは黒髪の長い女性。年齢は六十あたりだろうか?

 うちの神社の巫女服を着ていて……どこか爺ちゃんに似ている。


 意味が分からず、あんぐりと口を開けていたと思う。


「あら。意識せずとも私が見えるのですね」


 としゃべり出した。

 ゆっくりで優しい声で、心地いい。


「私は、宗子(のりこ)優紀(あの子)の中には過去に過ごした“私„を出すことができるのです」


 そういえばこの間たった一枚だけの爺ちゃんの姉の写真を見た時と同じ顔だ!


「今の私の名前は優紀(ゆうき)です」


 宗子さんはスッといなくなり、高校生の口が空いた。


「何百年も前に生を受け、死んでから何度もこの地に生を受け、とある脅威を消そうと何年も過ごしています」


 あの口と柄の悪さは消え、声変わり気味の少し低いような声。

 宗子さん身を感じる話し方だった。


「は? 中二病か?」


 でもその時はまだ、半信半疑で、冗談かと思った。


「……小さい頃の宗十郎とそっくりですね。……違いますよ?」


 そこから優紀がいったことをまとめるとこうだ。


 俺が住む、この地には約千年ほど前から五年に一度、生贄をささげていた。

 一つの村が行っていたことで、その村に生まれた優紀はおかしく思いながらその時は生涯を終わらせた。


 その村に生まれ、おかしく思い続けていた優紀は死後の世界で誰かに声をかけられ、「何度も生まれ変わるからあれを消してくれ」と。

 その話に乗った優紀は現に約千年間、この地に生まれ生贄を食べ続けてきた者を調べ続けていた。


 優紀になる前の人生は曾爺ちゃんの姉だった。


 神社の娘として生まれ、今までと違うことをやってみようと思った優紀は曾爺ちゃんに今までのことをすべて話した。


 曾爺ちゃんは信じてくれ、協力していた。

 でも寿命という逆らえないものが来て、七十年の生涯を終えた。


「協力者というのはいいものだな。――生きていれば、また会える」


 口調は元に戻った。

 曾爺ちゃんの血がつながっているからなのか、俺はわりとすぐに信じた。


「なんで千年も続けられる?」

「ん? ……百年ぐらいは正義でやってたけど……だんだんと疲れて来たのは紛れもない事実だ。一番最初の時の感情とか、何人の人をやったら忘れた。……でも、五回目の時。心に惹かれる人ができた」


 男子の顔なのにさっきから感じる女性感が一気に増した。


「今までず~っと独身で、だいぶ年下なのにね。私は――その人を愛したし、愛してくれてたと思う。その時だけかなぁ……私がまともに(かんなぎ)を喰べてた脅威を調べなかったのが」


 幼いながら彼のどこか遠くを眺める悲しい目をしていたというのは感じていた。


「あの人の子どもまで妊娠してたのに……村の人からしたら私が邪魔だったのか、殺されて、その後旦那は初の男の巫になった、と聞いたわ」


 フウッとため息をついて「それ以来会えていないし、歴代の巫と死後の世界で会えたことないから、今、頑張っているのよ」といった。



 いろいろ聞いたけど、記憶は断片的であるのは変わりない。


 それから間もなく曾爺ちゃんは亡くなった。


 けど、爺ちゃんのお葬式には来てたし、それから三回ぐらいは進捗状況を伝えにきていた。

 一緒に調べたりしたようなきもする。


 でも、ある日ぱたりと連絡が止んだのは確か、俺が高校生のころ。


 二十年たった今は長い長い妄想か物語でも読んでいたんじゃないかと思っていた。

 でも、違った。


 源の長女が今日、今。最初に会った時の口調で俺の事を「(わっぱ)」と呼んだのだ。


 こう見えても少し興奮している。


 恐怖なのか、緊張なのか、はたまた被虐嗜好(マゾヒスト)だったのか。

 どれか分からないが心臓が早くなっている。


「おとーしゃん、おにーさんと遊んでくる!」


 そう話しかけてきた優紀だったであろう幼女は源の現当主に言ってこっちに「とててててっ」走ってくる。

 赤い鼻と耳と可愛さはあの優紀とは到底思えない。


 でも、優紀だ。

 そう思った俺は、掃除の途中だが、ほうきを置いて、室内に入る。



――――これは、この二人の恋愛物語(ラブストーリー)………などではなく。

 この物語は、前世優紀の幼女が主人公である。


もしや私、生意気なガキが好きだな……?

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