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第8話 見たことのない世界を観たくなってきた

 「この本は古代文字で『名前のない島と神々の物語』という名前じゃ。」

へぇ~この絵本の文字はさっきベットに広げていたたくさんの本と違っていたのだった。

「むかし、むかし、名前のない島に3人目の神様が空から降ってきたそうじゃ。」

「その島に住んでいた生き物達は大騒ぎ…」


  自分が選んだこの絵本になぜか興味深々になってしまった。お爺ちゃんの口からたまに出る酒臭い匂いにはちょっとうぇっていう気持ちになったがそこを我慢すれば、物語を語る口兆は心地よいものだった。


「…生き物達は大喜び、そんな様子を見た2人の神様はみんなにもっと喜んでほしいために色んなことを教えたそうじゃ。」

  へぇ〜この神様達いいことするじゃん!!って考えていたら話が進んでいくにつれ、雲行きが怪しくなってきた。そして最後には2人の神様は大喧嘩って一体なぜそんなことになったんだろうと不思議に思ってしまった。


「…3人目の神様は生き物は生き物達を守るため、2人目の神様と戦う決心したそうじゃ、そんで3人目の神様は、最初に神様達を助けてくれた5匹の生き物達に戦う力を与え、彼らと共に戦い、勝つことが出来た。」

  この物語にハッピーエンドをただ後は真っ直ぐに進むだけというわけにはいかなかった。それ相応の代償が必要だということを思い知ることになる。どうやら力尽き、傷ついた体を癒すため再び眠らなければならないだそうだ。

そんなのあんまりだと自分は感じてしまった。


 「3人目の神様は悲しむ生き物達に『私達はまた出会えることできるから悲しまないで』と笑顔で言い残し眠ってしまいましたそうじゃ、おしまい。」

「…当主様、この話ってたしかフォンテーゼ家初代当主様が世界中色んなところへ旅をして聞いた神話や書き記し集めた物語の1つですよね。」

「そうじゃな、というよりそれが主業であったと初代当主様の記録文書に記載されておる。それが本当かどうかわからんが少なくとも多くの物語を我が王国に残してくれたあたり、孫がこうしてワシに興味を持ってくれることに感謝せんとな。」

 初代当主様はあれか?吟遊詩人かなにかだったのかな?それにしては騎竜術という物騒な技術をもち、こうしてその技術を代々フォンテーゼ家に受け継がれるほどの人物について気になってしまった。


その後、他にもお爺ちゃんのおすすめの絵本を沢山読み聞かせられたが、どうやら途中で力果てたようだった...つまりは寝てしまったのだ。


 次の朝、自分が起きた時、横で寝ているお爺ちゃんの姿を見て驚きおねしょしたのはみんなにはナイショだぞ!!

...まぁ、この言葉が伝わるのは、自分だけだしみんななんてそんな人達はいないだろうし、そのあと毎朝から自分をお世話してくれるティーレに即効バレて、あんなところやそんなところをお湯で温められた布巾で拭かれて恥ずかしかった...


 ティーレが自分の身体を拭いている最中に母さんが起きて自分がいる部屋にやってきた。

「あら、アルセーヌ?どうしてティーレに色々と身体をゴシゴシと拭かれているのかしら?」

「それはですね、アルセーヌ様が朝起きた時に、当主様の顔が近くにあることに驚き...」


もうやめて!!アルセーヌのライフはもうゼロだよ!!それなのにティーレから母さんに情報伝達されていき、そこから家族やここで働いているメイドやその他使用人に伝わり、最後に巡り巡ってお爺ちゃんに伝わっていくなんて恥ずかしくて自分の状況は死体蹴りもいいところだ!!本気でやめてほしい...

 「...フフッ!!アッハハハハ!!もう朝から笑わせないでちょうだいよ、アルセーヌ。腹が痛いわ!!」

「...あのぉ、セレス様、シーツの取り換えとかアルセーヌ様の身体を拭いたりして大変だったのですかね。」

「ごめんなさい、ティーレ。いつも私の息子の面倒を見てくれて、本当に助かるわ。でもお爺様の顔をみて...アッハハハ!!」

「セレス様、ツボにはまったようですね。もういいです。あとの処理は私の娘や他のメイド達が行いますので後のことは心配なさらないでください。」

「…助かるわ。ティー...レ、アッハハハ!!」 


 ティーレのその不貞腐れた顔や自分に対してめんどくさいことしやがってという恨みを込めた目くじらを立てる姿をみてさらに笑い声が出てくるようだった。

 …この後、母さんの笑い声でクリスが起きてすぐ泣きはじめ、その泣き声でお爺ちゃんが起きるのであった。


 「…それでね、アルセーヌがおねしょして…」

 現在進行形で母さんに辱めを受けている。色々な意味で辛すぎる。

そしてどうやらお爺ちゃんを含めて、家族みんなで朝食するときも、地獄が続くらしい。恥ずかしすぎる…公開処刑なんてあんまりだ。


「アルセーヌがまたおねしょだってね、アルス兄さん!!」

「そうだね、でもアルフォードだって幼いころに結構な数をしていたって、母様から聞いたよ。」

「うっ、その話いつ聞いたの?」

「いつだったけ?父様?」

「あれはたしか…」

「…孫よ、そんなに儂の顔見て、怖かったのか…本当にすまんかった…」

…いや、お爺ちゃん、そこまで悲しい顔をして見つめないでくれ、本当に自分的には色々と困るから…ね?


「…皆様、私が知る限りでは今日のご予定が多かったはず、特に当主様は朝食を取られてからすぐに別の要件を解決しなければならないとおしゃったのでは?」

あぁ…クノーツが片手から分厚い本を持って不機嫌を顔してさっきの言葉を言ったよ。なんだか疲れていて、大丈夫か?と疑いたくなる。

「あぁ…そうじゃった!!そうじゃった!!はようお主の父のところに行かないと仕事を投げ出されて、儂が困るからな。よし!!みんなも早う朝食食べてようか。」


 なんだかお爺ちゃんの強張って冷や汗が出ている強張(こわば)顔になったようだが、クノーツの父親ってそんなにお爺ちゃんが恐れるような人なのだろうか?なんだかとても気になった。

「ルブラン様は今後のご予定として午前中からフォンテーゼ家の次期当主であると認識させる必要がある御用達商人達や周辺豪族に対しての手紙の執筆、また現在治めている土地にいる領民の数えきれないほどに貯まった陳情報告書の確認とその対処、その他諸々がございます。」

「うっ!!クノーツはこれらの作業手伝ってくれよな? えっ?目を逸らさないでくれ!!返事してくれ。」


「ごめんなさい、ルブラン。今日はクノーツを一日中借りるわ。理由は先週手紙で仕事で友人が来るって話をしたと思うのだけど、今年の初秋にその友人がスペニーナ議会連合国の使者として拝命されたらしく、現在進行形でレイブルニスリーナ首長国連邦、東商国群の島々に船で寄港しながらフィーゼニア王国に向かっていると報告してきたわ。

 また、どうやら我らの王に来年春のご挨拶とご報告をしないといけないから来週中に私達がいる屋敷に数日間王都に行く前に滞在したいとも手紙に書いていたわ、だからね友人にどう返事を書けばいいのかとかの助言をしてほしいし、その際の準備を手伝ってもらいたいのよ…」


 へぇー母さんレイブルなんとかっていう国にもあるのか。驚いたよ。たしか他にも西にはグレなんとか帝国やルムトス共和国などからもお爺ちゃんの絵本を通してそんな国があると知ったけど、どんな国々なんだろうか?気になるなぁ…そんで知らない、まだ聞いたことがない、見たことのない世界を観たくなってきたよ。


「あぁ、この前の手紙に書いて承諾していたことか、覚えているよ、セレス…じゃあ仕方がないよね…執務室に行きたくないなぁ…行かなくていいかな?」

「「駄目です」」

…おぉクノーツ夫婦の息の合った「駄目です」発言に父さんは目を見開き、その姿を笑う母さんはいつだって綺麗な人だと思った。そしてお爺ちゃんは真剣に、2人の兄達は喋りながら食事をしている様子は自分の目から映る微笑ましい光景を観ているようだった。



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