じいちゃん
仕方がないので眼鏡を変えた。新しい黒メガネを買ったのだが...なんでこんなに眼鏡高いんだろう。月の小遣いパーだ。
一番安い部類のこれですらフレームだけで2万近い値段がつくのは、消費税のおかげかな...20%か...違う、先週で23%になったっけ。
政治家はいいな。きれいごとで飯を食える。AIで十分なのに、まだ根強く残る職業の一つなだけはある。AIと違って、効率的にむしり取る手段を心得てるからだろう。
やばい。話がそれだした。
とりあえず眼鏡が壊れてしまったことはばあちゃんに報告するべきだろう。お墓参りに行ってじいちゃんにも謝っておきたい。
うちのじいちゃんはもうすでに死んでしまっている。大学の教授を死ぬ3年前まで続けていて、今でもたまに大学の教授さんたちがお参りに来るそうだ。
俺からすると優しいおじいちゃんというイメージしかないが、かなり先駆的な技術開発を行っていた話を子供のころにやんわりとされた記憶がある。
そんなじいちゃんが死ぬ前の年、俺の8歳の誕生日プレゼントにあの眼鏡をくれた。
そのころから俺は目が悪くなり始めていたらしく、長いこと使えるようにとフレームが特殊な金属で作られた眼鏡にしてくれたらしい。
自宅から電車で30分、おばあちゃんが住んでいる山奥の一軒家へ赴く。
「まあ!久しぶり。おじいちゃんも喜ぶと思うわ。こっちへいらっしゃいな。」
70近いおばあちゃんだが健康を絵にかいたような人で、いまだに骨折をしたことがないのが自慢だそうだ。
事前に話を済ませておいたので、お線香などの法具はきちんと用意されている。お香を上げ、目を閉じ、仏壇を拝む。
静寂な居間で線香の煙の香りだけが嗅覚を刺激する。
「お茶が入りましたよ。」
おばあちゃんが緑茶の入った急須をもって部屋に入ってきた。