2023年 9月某日 陽炎
2023年 9月某日編 (2/4)
連続エピソードになります
出動ミーティングを行う大ホールは、エアコンがまだ生ぬるい風を吐き出していた。
少し憂鬱になりながら大ホールへと足を踏み入れた。
ホールの真ん中には、水属性のヒーロー和泉、陰属性のヒーロー法月、陽属性のヒーロー三上が話をしていた。
水属性のヒーローが召集されていることから、エニグマは水属性では無いことが確定してしまった。絶対火属性に近いエニグマ討伐だと確信し、心底落胆した。絶対暑いじゃん……
いつもはステルス要因の陰陽属性のヒーローが揃い踏みなのも何かあると思ってしまう。
「クリーン班も来たしミーティング始めようか。」
そう切り出したのは法月だった。
「えー、今回の出動のメインになる法月です。今回のエニグマは少し特殊で目に見えにくい特徴があります。」
そう言って、目の前のスクリーンに映像を映し出す。
映し出されたのは山の写真だが、山頂部分がブレているのかはっきり映っていない。
次は映像が映し出された。やはり山頂部分の映りが不鮮明でゆらゆら揺らめいている。
「これが、今回のエニグマの写真と映像です。揺らめいている陽炎部分がエニグマになります。」
「えっ……」
誰ともなく声が聞こえた。
「今回は陽炎型のエニグマが敵になります。エニグマの特徴を調べた結果、細かいガラス状のコアが無数に存在してるため、陽炎部分を全て陰で覆い、冷却して潰す作戦で討伐を考えています。」
コアの回収は法月さんが協力的だし、簡単だろうと思った矢先に聞こえてきたのは、思いもよらぬ言葉だった。
「今回はクリーンの皆さんの力もお借りして、エニグマの範囲を特定しようと考えています。」
「作戦は、山頂部分全体に和泉さんに水を掛けてもらい、しっかり地面が濡れた部分と、陽炎の熱で蒸発した境目を、クリーンの方々の協力を得て全体像を割り出します。その境目の内側を全て陰で包み討伐する作戦です。」
つまり今回はクリーンもエニグマのすぐ近く。下手したら、エニグマの内側まで行かなきゃいけないかもしれない。かなり俺たちには危険な任務という訳だ。
「エニグマ付近は高温多湿が極まる場所になっているはずなので、いつも以上に水分と塩分を持って出動するようにしよう。」
「「「はい。」」」
班長の村越の声に、クリーンたちの悲壮感ただよう返事が続いた。
今日の暑さの原因ってエニグマだったのかと、安心する気持ちと、その熱波に飛び込まなければいけないという事実で気持ちがぐちゃぐちゃになりそうだった。
俺たちは、細かくなったエニグマを吸うためのバキュームと、大量のスポーツドリンク、経口補水液、塩タブレット、水を、凍らせた物を持ったり、クーラーボックスに入れたりして、熱中症対策万全で出発した。
出動先は陽炎立ち上り、陽の光が降り注ぐ真夏以上の温度の山頂だ。車内のクーラーの空気を胸いっぱいに吸い込みなるべく移動中に体を冷やそうと心掛けた。
「あっついですね……」
現場に到着して一番最初に車から降りた1つ下の後輩、佐々木が口走った。
げんなりしながら、続いて降りると、肌を焼くような太陽光と下から立ち上る湿気が辺りに滞留している感じがした。
「もう、エニグマの中にいるんじゃないですよね?」
思わず村越に確認してしまった。
「残念ながら、まだ普通の外気温だ。」
「嘘だと言ってください……」
横で聞いていた佐々木が帽子をかぶり直しながら嘆いた。
「さあ、ステルスを三上さんに掛けてもらって、山頂付近まで登るぞ。」
「「「はい。」」」
今までで一番元気のない返事だった気がする。そんなことを思いながらステルスを掛けてもらい、俺たちは山頂へ車で向かった。
車から降りるとさっきとは比べ物にならない暑さだった。息をするのも苦しい。
これがエニグマの中かと思うと暑いのにゾッとしてしまう。
さあ、ここからが作戦開始だ。気合を入れ直し、水分の入ったリュックを背負った。
そんな今もエニグマは大きくなり続けている。俺たちを苦しめるかのように……
次回 5月 10日(日) 21時更新です。
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書いてるだけで熱くなってきてPCも熱暴走寸前ですw
次回もお楽しみ!




