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2023年 6月某日 雨の果て

2023年 6月某日編 (1/5)

連続エピソードになります

崩れ行く山肌に2本の巨大な足がまたがっている。

この程度まだ序章とでも言いたげに、“それ”は足元を見つめている。


俺の手のひらが白く発光する。熱い。でもこれで向こうの物を触らないと……。


――ピピピピピ。アラームの音で目が覚めた。

変な夢を見た朝は、思考がそっちに引っ張られて、支度が遅くなりやすい。手のひらが光る夢ってなんだよ……。そう思いスマホを手に取り『夢占い 手のひら 光る』で検索をしてみる。


「えっ、やった。吉夢なんじゃん。いいことあるかな。」


1人暮らしの部屋にむなしく響く独り言。

それでも吉夢を信じて、身支度を整える。昨日から雨が続いている。今日は車で通勤しよう。渋滞を加味して自転車通勤の時よりも早く家を出た。



「宮部の車カッコいいね!」

駐車場から傘を差して少し歩くと、52班副班長の阿部が話しかけてきた。


「ありがとうございます。」

「俺も、ハッチバック型の車好きなんだけど、ほら、ファミリーカーじゃないと嫁さんがうるさくてさ……。」

「家族全員ゆったり乗れるのも大事ですけど、それとこれは別なんですよねー。」

「そうなんだよ!男のロマンなんだよな。」

「給料が良ければ、2台持ちすればいいんですけど……。」

「やめてくれ、悲しくなるから……。」


そんなやり取りをしながら水たまりの道をロッカールームへと歩いて行った。


「今日も土運びの訓練っすかね?」

「この時期は土属性や水属性のエニグマ増えるから、どっちかの訓練が入ると思うよ。」

そう言い残し阿部はロッカールームから班長会議へと向かって行った。


1人とぼとぼ班のミーティングルームに入る。


「おはようございます。」

「おはよう!宮部。今朝のニュース見たか?」

そう話しかけてきたのは、兄貴肌の立石だった。


「支度の傍らで見てきただけなんで、詳しくは。何かヤバいすっか?」

「隣の支部の管轄豪雨被害が凄いから、応援要請出してるかもしれないなって話してたんだよ。」

「マジっすか。そこまで酷いんですね……」

「マジマジ、川の決壊から土砂崩れまで色々あんだよ。」

「3支部デカい支部ですけど、要請来そうですね。」

「うちの支部も大きくはないけど色々被害出てるから応援出すと思うけど……。」

「っえ?このくらいで応援出すんですか?」

「去年の9月の時に応援要請遅くて、本部から指導が入ったらしいぜ。」

「もっと早く指導入れて欲しかったっすね。」

「まったくな。」


俺らが話していると入り口のドアが開き、班長の村越と阿部が入ってきた。

さあ、訓練か出動どちらかのミーティングが始まる。


「今日は豪雨の後だが、先発班が色んな場所を調査している最中なので、訓練途中で出動になるかもしれない。そのことを念頭に置いておいてほしい。」

村越のこの言葉から始まったミーティングは、すぐさま終了し、訓練へと俺たちは向かった。


体育館内で室内サーキットの後、筋トレフルセットを行い場所を変えて土運びの訓練を言い渡されたタイミングだった。


プルルルルル


電話の呼び出し音が鳴り響いた。村越が小走りで電話へ向かった。


「はい。53班村越です――」


村越が電話に出ている間俺たちは出動か、先発班への応援かどちらかコソコソ話し合っていた。


「全員いるな。ミーティング室に移動してテレビを見るぞ。」

村越の声に疑問を抱きつつ急いで53班のミーティングルームへ向かった。


一番最初に入室した俺が急いでテレビを付けると、ニュースが流れた。

俺たちの管轄内で土砂崩れが発生しているようだった。


「班長、このニュースでいいですか?」

「……ああ。」

村越はほんの一瞬、言葉を詰まらせた。表情も優れない。嫌な予感が胸を掠めた。


土砂崩れ現場の潰れた家が移る場所で、レポーターが必死に解説している。

消防隊が潰れた家の周りにいるのが終始見えていた、住人2人と連絡が取れていないらしい。

そして映像がカメラマンのカメラから、航空映像に切り替わる。


潰れた家、その上に覆いかぶさる土砂と流された竹林。


そして、土砂崩れが起きた斜面に


―――巨大なエニグマ


エニグマは潰れた家の方を見て仁王立ちしている。


その足元には、消防隊、報道関係者などの無数の一般人。


俺たちは画面に釘付けになり息を呑んだ。


次回は 4月 5日 (日) 21時更新です。

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新しい話に入りました。また巨大エニグマと戦います!

次回もお楽しみに!

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