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【時間停止の復讐者】裏切りの魔法庁を断罪する、クールな少年のリベンジ・クロニクル  作者: ねこあし


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第19話:法と法則の激突、そして「時間停止」の真実

 極秘魔力炉心。神崎零司が放った『空間断裂ディメンション・スライス』は、炉心内の空気を切り裂き、刹那と雫の命運を分かつ一線へと、高速で迫る。


 刹那は、意識を失いかけている雫を抱きしめ、最後の力を振り絞った。彼は、零司の魔力回路に僅かなノイズを生み出すため、奥義『零距離・超短縮クロノ・ショート』を発動しようとした。しかし、全身の魔力は底を尽きかけている。


「――時間停止クロノ・ストップ!」


 その瞬間、刹那ではなく、彼の師である霧島冴子が、渾身の叫びと共に、魔法陣を展開した。それは、刹那の魔術とは異なる、『時間遅延』を極限まで圧縮した、冴子独自の魔術だった。


 世界は停止しない。だが、零司の『空間断裂』の刃、そして彼自身を含めた一帯の空間が、極度の『時間遅延』に陥った。それは、外部から見れば、まるでスローモーションのように見える現象だ。


「冴子さん!」


 刹那は、驚愕した。


「刹那!逃げなさい!あなたの『時間封鎖』の魔術は、私には解けない。その罪は、私が引き受ける!」


 冴子は、魔力を放出しすぎ、口元から血を流しながらも、毅然とした表情で言った。


 零司は、極度の遅延の中で、一瞬だけ瞳に焦りの色を浮かべた。彼の『空間断裂』は、位置の支配。時間の流れが遅れると、その位置の予測が極めて困難になる。


 刹那は、冴子の命がけの時間稼ぎを受け、雫を抱えて一瞬でその場から飛び退いた。


「冴子さん、待ってろ!」


 刹那が退避した直後、冴子の魔力が限界を迎える。極度の『時間遅延』は解け、零司の『空間断裂』は、冴子の身体を掠めて、炉心の壁を切り裂いた。


「霧島冴子!なぜ、そこまで……!」


 零司は、冴子が身を呈して刹那を庇ったことに、理解できない憤りを覚えた。


「これは、『連帯』よ、零司くん。あなたのような孤独な『法』には、理解できない『法則』だ」


 冴子はそう言い残し、意識を失って倒れ込んだ。


 刹那は、雫を抱え、極秘炉心から脱出するための古い通路へと逃げ込んだ。零司は、倒れた冴子を一瞥した後、即座に刹那の追跡を開始した。


「逃がさないぞ、九条刹那。君の悪は、この『法』によって、最後まで断罪されなければならない!」


 零司の『空間断裂』が、通路の壁を切り裂き、刹那の背後に迫る。


「くそっ、このままでは……!」


 刹那は、もはや魔力がない。しかし、彼の頭脳は、極限状態の中で、『時間停止』の真の法則に到達していた。


(僕の『時間停止』は、家族の死後、喪失の瞬間に覚醒した。それは、時間を止めるためではない……)


 刹那は、意識を失った雫の顔を見た。彼女の回復魔術は、彼の命を救った。


(僕の『時間停止』の真の力は、時間を『遡行』させることだ。過去は変えられない。だが、『現象』は変えられる!)


 刹那は、最後の、そして唯一残された、復讐の「鍵」を、自身の魔力回路に叩き込んだ。


「――『時間再構築クロノ・リヴァイヴ』」


 それは、時間を完全に巻き戻すのではなく、『現象が起こる直前の時間』へ、自身の体内の魔力を、一瞬だけ遡行させる奥義だった。


 この奥義を発動した刹那の身体が、一瞬、光の粒子に包まれた。


 零司が放った『空間断裂』が、刹那の背後、通路の壁を切り裂いた。


 その瞬間、刹那の魔力が『空間干渉増幅器』を通して、零司の魔力回路に到達した。


 零司は、突然、全身の魔力が『空間断裂を発動する直前の時間』へと、巻き戻されるのを感じた。彼の魔力が、一瞬で収束する前の状態に戻る。


「な、何だ!?この感覚は……!時間が、逆行している!?」


 零司は、自分の体が、自分の意思とは関係なく、一瞬前の動作に戻されるのを感じた。


 刹那は、雫を抱えたまま、通路の奥へと消える。彼は、零司の「空間の法則」を、自身の「時間の法則」で、根本から否定したのだ。


「待て!刹那!そこまで私を拒絶するのか!」


  零司は、魔力の逆行から解放され、怒りに満ちた叫びを上げた。


 しかし、その時、通路の壁を切り裂きながら、情報屋・黒曜が、姿を現した。


「残念だったね、断罪者様。君の『法』の支配は、『時間』という名の絶対的な法則には勝てない」


 黒曜は、笑みを浮かべたまま、零司に一枚のデータチップを投げ渡した。


「これは、君が捜し求めていた、二年前の事件の『特務部裏帳簿』だ。これで、君の『法』が、影山の悪事を、正式に『断罪』することができる。君の正義の道は、これで開かれた」


 零司は、チップを受け取った。刹那は、私的な復讐で影山を裁いたが、黒曜の情報は、零司の『法』に、影山を公的に断罪する機会を与えたのだ。


「黒曜……貴様の真の目的は何だ!」


「僕の目的?それは、君たち二人の『物語』の結末を見ることさ。さあ、君の『法』に従え、零司。君は、刹那の追跡を続けるか?それとも、影山の断罪を優先するか?」


 零司は、手の中のチップと、刹那が消えた通路の闇を交互に見つめた。彼の瞳に、『法』の重みが、深く、そして厳しく宿った。


 彼の選択が、この物語の真の結末を決定する。

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