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【時間停止の復讐者】裏切りの魔法庁を断罪する、クールな少年のリベンジ・クロニクル  作者: ねこあし


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第13話:空間魔術の天敵と、孤独な男の居場所

 極秘研究棟の廃墟。刹那と雫を前に、霧島冴子は重い扉の前に立っていた。


「神崎零司の『空間断裂』は、あらゆる物質を切り裂き、逃走ルートを塞ぐ。彼の『法』は、空間を支配することで成り立っている」 冴子は静かに説明した。


「その空間を支配する零司に対抗できる人間がいるのか?」 刹那は尋ねた。彼の復讐は、常に零司の冷徹な正義に阻まれてきた。


「ええ。その男は、『空間把握アストラル・センス』の権威だった。彼は、零司が操る空間の『歪み』を感知し、その『断裂』が生まれる予兆を読むことができる。かつて、魔法庁で唯一、零司の空間魔術を無効化できると目されていた男よ」


 冴子の表情に、一瞬だけ、過去への複雑な感情が滲んだ。


「名前は、風見かざみ。かつては特務部きっての『空間魔術理論家』だった。だが、彼もまた、魔法庁の腐敗に気付き、二年前に『裏切り者』として失踪した」


「二年前……僕の家族の事件と同じ時期に」 刹那は、その偶然に強い因縁を感じた。


「そう。彼は、事件の裏側を知りすぎた。そして、影山の『対時間魔術兵器』の開発資料を持ち出して逃げた。影山があなたを狙うのは、その兵器の調整のため。だが、風見が持つ資料は、その兵器を無力化する鍵になる」


 つまり、刹那の復讐は、風見という「もう一人の裏切り者」を見つけ出し、彼と協力することでしか成し遂げられないということだ。


「では、風見の居場所は?」


 冴子は重い扉を開け、内部の薄暗い通路を指差した。 「彼が失踪直前に、私にだけ伝えた、唯一の居場所がある。しかし、そこは『空間』が歪んでいる場所。一般の魔術師では辿り着けない」


「空間が歪んでいる?」


「ええ。この廃墟の下、地下の最深部。彼はそこで、自分だけの『隠れ家』を作り、零司の追跡から身を隠している。零司の『空間断裂』の魔力から、自分の居場所を隔離するためにね」


 その夜。刹那は雫を冴子に託し、一人、風見の隠れ家がある地下へと向かっていた。


「刹那くん、気をつけてね……!」 雫の心配そうな声が、彼の背中を押す。


 地下通路は、下へ進むほど空気が重くなり、魔力の気配が乱れる。


(これが、空間の歪みか……!)


 刹那は、空間の魔力的なノイズが、まるで耳鳴りのように感じられるのを感じた。通常の魔術師であれば、魔力の乱れに意識を乱され、平衡感覚を失うだろう。


 彼は、自分の持つ『時間魔術』を、空間の安定化に応用することを試みた。


「――『空間安定アストラル・スタビライザー』」


 それは、時間魔術の応用によって、周囲の空間に、一瞬だけ「止まった」かのような安定感を与える技だった。これにより、刹那は歪んだ空間の中でも、冷静に、確実に進むことができる。


 通路の最深部に、黒い岩盤に囲まれた、小さな扉があった。扉の前に立つと、刹那の耳に、微かに独り言が聞こえてきた。


「……また、『時間』が乱れた。この空間の安定化は、いつまで保てる……」


 扉の向こうに、風見がいる。


 刹那は扉をノックした。 「風見さん。僕は、九条刹那。霧島冴子の紹介で来た。あなたに、影山の『対時間魔術兵器』について聞きたい」


 中から、しばらくの沈黙の後、苛立ちと警戒が混じった声が響いた。 「……霧島だと?なぜここに。そして、『対時間魔術兵器』だと?それは、過去の遺物だ」


「過去ではない。影山は今、その兵器を完成させようとしている。そして、僕の家族の死と、僕の能力、そして僕の友人の『回復魔術』を、その開発に利用しようとしている」


 刹那は、一切の隠し事をせず、真実を伝えた。


 扉が、ギーという重い音を立てて開いた。


 そこに立っていたのは、疲弊し、やつれた顔をした中年の男、風見だった。彼の目には、絶えず周囲の空間の歪みを警戒する、深い隈ができていた。


「影山が……まだそんなことを。そして、君が『時間魔術師』だと?まさか、二年前、私があの家に仕掛けた『防御壁』で、家族を失った子供が、君なのか……」


 風見の瞳に、深い後悔と苦悩の感情が走った。


(彼もまた、裏切り者であると同時に、事件の被害者だったのか)


「僕は、あなたの知っている『対時間魔術兵器』の真実が必要だ。そして、零司の『空間断裂』を破る力が」


 風見は、刹那の瞳に、自分と同じ「絶望と復讐」の炎を見た。


「入って来なさい、九条刹那。私は、影山の悪意を阻止するために、この二年、孤独に『空間』を監視し続けてきた。君が、その孤独を終わらせてくれるなら……」


 風見は、刹那を隠れ家に招き入れた。


 刹那の復讐は、影山への断罪だけでなく、「裏切り者」たちの、悲痛な「連帯」へと変わり始めた。彼の目の前には、零司の『法』に対抗するための、新たな「知識」と「技術」が広がる。


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