表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【時間停止の復讐者】裏切りの魔法庁を断罪する、クールな少年のリベンジ・クロニクル  作者: ねこあし


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/21

第12話:零司の怒りと、師弟の再会

 九条刹那は、一之瀬雫を抱え、夜の街を駆け抜けていた。彼の魔力回路は限界を超え、いつ倒れてもおかしくない状態だ。だが、腕の中にある雫の温かさが、彼の心を支えていた。


「刹那くん、大丈夫?体が熱いよ……」 雫は、彼の苦しそうな息遣いを感じ取り、心配そうに見上げる。


「問題ない。この程度の疲労は、復讐の代償として安いものだ」 刹那は、クールな外面を保とうと努めるが、声が震えている。


 彼は、雫を安全な場所へ連れて行く必要があった。向かう先は、師である霧島冴子の隠れ家、郊外の廃墟研究施設だ。


 その頃、極秘研究棟の外。神崎零司は、ドローンからの報告を受け、激しい怒りに震えていた。冷静沈着な彼の感情が、初めて露わになる。


「馬鹿な……特務部回収部隊が、あの一之瀬雫を確保できなかっただと?そして、九条刹那の魔術師に逃走された?」


 零司は、監査用ドローンの制御盤を強く叩いた。彼の眼鏡の奥の瞳は、まるで氷の炎を宿したように冷たく燃えている。


「黒曜という情報屋の介入……そして、刹那の『零距離・超短縮』。奴は、僕の広域魔力結界を一瞬だけ無効化した。これは、法への冒涜だ」


 零司にとって、刹那の行動は、単なる犯罪ではない。それは、彼が絶対的に信奉する「法と秩序」という、世界を支える根幹を揺るがすテロ行為に等しい。


(監査部長や城之内の不正は、所詮、個人の腐敗だ。だが、九条刹那と霧島冴子は、組織の存在そのものを否定している!)


 零司は、今回の失敗を、自身の予測の傲慢さと、刹那の時間魔術の進化によるものだと分析した。


「全チームに緊急招集をかける。監査対象を、特務部ではなく、『九条刹那とその協力者全て』に変更する。私の正義は、秩序の破壊を許さない」


 零司は、冷静な顔を取り戻したが、その心には、刹那に対する個人的な「断罪」の感情が、初めて芽生えていた。


 廃墟研究施設。冴子は、外からの魔力反応を警戒しながら、静かに刹那と雫の到着を待っていた。


 扉が開き、刹那が雫を抱えて現れた瞬間、冴子は安堵の息をついた。しかし、刹那の顔色を見て、すぐに厳しくなった。


「無謀すぎるわ、刹那!その魔力の乱れは、回復魔法で対処できるレベルじゃない」


 冴子は、雫を安全な場所に降ろし、すぐさま刹那の治療に取り掛かった。


「雫を巻き込ませるわけにはいかなかった。影山は、僕の家族だけでなく、雫まで利用しようとした」 刹那は、床に座り込みながら、歯を食いしばって言った。


 雫は、刹那の治療を見守りながら、涙ぐんでいた。


「ごめんね、刹那くん……私のせいで」 「君のせいじゃない。僕の復讐が、この状況を引き起こしたんだ」


 冴子は、刹那の魔力回路を安定させるための、複雑な治療魔術を施しながら、静かに言った。


「影山があなたの『時間停止』を警戒し、雫の『回復魔術』を狙う理由が分かったわ。彼が開発している『対時間魔術兵器』は、あなたの時間停止による『副作用(疲労と魔力暴走)』を、強制的に引き起こすための兵器よ」


「強制的に……?」


「ええ。そして、雫の『回復魔術』は、その兵器によって破壊された魔力回路を、瞬時に回復させて兵器を再利用するための、バッテリーとして利用される。影山は、あなたの『時間停止』を、無尽蔵に使える兵器に変換しようとしている」


 刹那は、その悪辣な計画に、怒りで息を詰まらせた。


「僕の家族の死は、その兵器開発のための実験だったのか……!」


 冴子は頷いた。 「彼らは、あなたの家族の家に仕掛けた『対時間魔術防御壁』で、あなたの能力の特性と限界を調べたのよ。そして、雫の回復魔術は、その限界を打ち破るための、最高の素材だというわけだ」


 その時、刹那は腕に力を込めた。彼が守りたかった雫の力が、最も悪意のある兵器に使われようとしている。


「影山……絶対に許さない。でも、もう黒曜は頼れない。零司の追跡も始まっている。どうすればいい」


 冴子は、治療を終え、静かに立ち上がった。


「大丈夫よ、刹那。私たちは、まだ切り札を持っている。あなたの『時間魔術』を、唯一、無効化できる男がいるのなら――私たちも、彼の『空間魔術』を無効化できる者がいればいい」


 冴子はそう言って、研究棟の奥の、重い扉を指差した。


「私も、あなたと同じ、裏切り者よ。そして、私たちは、もう一人の『裏切り者』に助けを求める。彼は、神崎零司の『空間断裂』の天敵であり、かつて私の同期だった男よ」


 刹那の瞳に、新たな希望の光が灯った。彼の復讐は、単なる個人の戦いから、「裏切り者」たちの連合軍による、「秩序」への反逆へと進化しようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ