国王陛下と王妃殿下。
「それじゃ、行ってくるよ。父さん、母さん。」
「お義姉ちゃんのことは、僕に任せて!」
心配そうな表情を浮かべる公爵様と、そんな公爵様を見て苦笑を浮かべる奥様に見送られ、私達は王宮へと向かった。
私達が着いた頃には、既に多くの貴族の子達で賑わっていた。
此処に来るのは、一時保護されていた時以来だが、当時は用意されていた部屋に引き籠もっていたこともあり、あまり久々という感じがしないのが正直なところだ。
ダンスホールに続く無駄にきらびやかな通路を、義兄弟達と歩く。
既に彼等が、ウィンストン公爵家の子息だと周りに認知されているせいで、ただ通路を歩いているだけだというのに、かなりの視線を浴びることとなった。
時々、ヒューゴの隣を歩く私を彼の婚約者だと勘違いする声が聞こえてきたけれど、私はただの義妹だ。
ダンスを踊る前に、国王陛下と王妃殿下に拝謁する。
緊張していると思われたのか、ヒューゴに、『そんなに怖い人達じゃないから安心して』と言われたけれど、そもそも緊張もしていなければ、国王陛下と王妃殿下に対して怖いだなんて感情も抱いていない。
この国の王とその伴侶とはいえ、会ったこともない相手だから、公爵様と奥様に会った日と同じように、どこか他人事なだけなのだけれど…そんなことを言えば、またオスカーに、肝が座ってるだなんだと言われ笑われる羽目になるのだろう。
「ご無沙汰しております。国王陛下、王妃殿下。」
「おお、ヒューゴではないか。今日は、エイダンとカーシーも一緒なのだな。」
「はい。義妹のアイヴィも一緒でございます。」
「お初お目にかかります。国王陛下、王妃殿下。先日よりウィンストン公爵家の養女となりました。アイヴィ・ウィンストンにございます。本日はこのような華やかな場にご招待頂きまして、誠に光栄にございます。」
あの性悪王太子と初めて会ったときも、今と似たりよったりのことを言ったな…なんて思いながら、カーテシーの姿勢を取る。
あのときは70点と評されたけれど、今の私ならば満点を取る自信がある。
ウィンストン公爵家に相応しい令嬢になるべく、日々努力を重ねているのだ。あの性悪王太子とはいえども、その努力を知れば、二度と私を馬鹿にすることは出来ないだろう。
「まあ。フレデリカから聞いてはいたけれど、本当に可愛らしい子ね。挨拶もカーテシーも、完璧だわ。」
「お褒め頂き、光栄にございます。王妃殿下。」
「王宮で開かれてはいるけれど、今日のパーティーは非公式なもの。私がこの場に居るのは、ただ息子が何か失礼をやらかさないか心配という親心で。王妃として居るつもりはあまりないから、私のことはどうかアンジェリカと呼んで頂戴。アイヴィ。」
「しかし…。」
「フレデリカは私の親友でね?親友の娘から、公式でもない場で、王妃殿下なんて言われるのもなんだか嫌じゃない。ヒューゴ達も公式な場以外は私のことを名前で呼んでいるし、貴方にもそう呼んでほしいのよ。ね?お願い、アイヴィ。」
「…承知致しました。アンジェリカ様。」
言われた通りに名前を呼べば、王妃殿下…ではなく、アンジェリカ様は嬉しそうに笑った。




