貴族の生き方。
“ソルビー”という名字があることから、泣き虫スザンヌが貴族の出身だと言うことには気づいていた。
下級貴族が上級貴族の侍女として働くこと自体は、そうおかしな話ではないが、スザンナはどうやら婚約が嫌で此処へ逃げ出してきたらしい。
ソルビー子爵家の三女として生を受けた彼女は、爵位を持つ何処かの令息に嫁ぐことが生まれたときから決まっていたそうだ。しかし、彼女はそれを嫌がった。
何故ならば、「私は、恋愛結婚がしたいのです!そう、物語のヒロインとヒーローのような甘く溺れるような熱い恋に落ちたいのです…!」という理由があるから…らしい。
どうやらスザンナの趣味は、読書らしく。特に恋愛小説が好きで、よく読んでいるのだとか。
最初は『こんな恋が出来たらなぁ…』と思う程度だったそうだが、読みすぎてしまったのか、最近は『こういう恋愛じゃないと嫌だ!』と思うようになってきたとのこと。それは、もはや末期である。
所詮は、物語だ。誰かが作った想像に過ぎない…というのに、スザンナの目は本気だった。彼女は本気で、ヒーローとの出会いを望んでいるようだ。
「アイヴィ様は、読まれないのですか?恋愛小説とか!」
「あまり。」
「そうなんですね?」
きょとん、と首を傾げたスザンナ。
小さい頃は、本を読んでいるよりも、走り回ったり、気に登ったりと体を激しく動かしている方が楽しいと思っていたような子供だったし、エルズバーグの養女になってからは、本を読む機会すらなかった。
スザンナは私がエルズバーグの養女で、約1年半もの間、酷い目にあっていたことは知らないようだし。余計なことは言わないでおこう。聞いていて気持ちの良い話ではないから。
「アイヴィ様!宜しければ今度、私のオススメをお貸しするので読んでください…!」
「オススメ…?スザンヌの?」
「はいっ!呪われたヒーローと、その呪いを解くために頑張るヒロインのお話なんです。すっごく素敵ですよ!」
「ふーん…。じゃあ今度、貸して。」
「はいっ!勿論!」
それから昼食までの間、私はスザンナと他愛ない話をした。誰かとこんな風に話すのは、随分と久しぶりだった。




