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アーマロイド、ガシラ

 飛鳥とロックが言い合いをしている。ロックはバスローブをずっと身につけたままだ。


「俺は和泉と旧知の仲だ」

「だから和泉はお前なんか知らねえって言ってんだ」

「記憶喪失なんだろう?」

「そこにテメエがつけこんできてるだけじゃねえのか?! お前がどういうやつで、目的が何なのかハッキリさせやがれ!」

「俺は河内飛鳥、和泉とは旧知の」

「そこはもういい!」

「隕石のようなものが地球に、超東京に迫ってきている。止められるのは和泉の能力(パワー)慣性(イナーシャル)支配(コントロール)だけだ」

「あ? 隕石だあ? そんなもの聞いたこともねえぞ」

「正確には隕石のようなものだ。そうだな、まずソレの発見経緯から話そう。


 それは私の部下の陰陽師が日課で星を見て占いをしていた時見つけたのだ。そいつからは流星があります、との報告を受けた。その流星は占いで何を指し示すのか俺は聞いたが、陰陽師は、それは星では無いので分からないと答えたのだ。


 俺は次に天文学者にその流星の事を聞いた。その学者は最初流星に気がつかなかったし、気づいても何も気にしないようなそぶりをしていた。陰陽師が学者に何かしたところでようやく学者はその流星についてマジメに調べ出した。


 学者の調べによると、その流星は光速の95.68%で移動しており、さらに計算上もうすぐ超東京に衝突するらしい。それを知った途端超東京から突然の通告が来た。今調べ上げたであろう隕石のことはパニックを防ぐため必ず内密にと」

「ああ? 嘘くせえなあ、だいたいそんな流星があったら誰か見つけてるし、政府に口止めされても誰か流しちまうもんさ」

「違うのだ、その隕石は見つからないように、我々の感覚を汚染し、そちらを見ないように、見えないように、見ても何も思わないように我々を洗脳するようなっているのだ!」


 俺もユイもロックも言葉が出ない。あまりの事に信じられないのか、理解が追いつかないのか。俺はとりあえず口を開いた。


「わ、わかった。ちょうど超東京に向かってる途中だったんだ。隕石止めるだけだろ? で、その隕石衝突はいつなんだ?」

「ハッキリしないがあと一週間とかそれぐらいもうすぐだ。何しろ、実は軌道が計算できなかった」

「チッ役に立たねえなあ。まあそれぐらいには超東京に着くだろうよ」


 ロックが悪態をつく。隕石より気になることがあるので俺は飛鳥に質問する。


「飛鳥、それより俺とお前、何で知り合って、どういう知り合いだったんだ?」

「そうだな、戦友と言うべきか。俺の目的はお前無しでは達成されなかったしな。消息不明になった時は心配したさ」

「えっと俺、なんで消息不明に?」

「知らん。お前を知る軍の人間は世界半崩壊直後に別の能力持ちに殺されてしまって、あらゆるデータも潰されたのでな」

「おい見ろハマナ大工業地帯が見えてきたぞ」


 ロックが海の向こうの陸を指差す。パイプの入り組んだ工場が立ち、巨大な煙突から火が吹き出ている。


「んじゃ仕事はハマナの守護を殺すことだ」

「何!? スズキをか!?」


 ロックの言葉に飛鳥が猛反対する。


「さっき言った通り、和泉が後で必要なんだ! スズキなんぞ無傷には勝てん!」

「だったらテメエも手伝えばいいじゃねえかよ」

「無理だ。スズキは炎、熱の能力(パワー)。俺は確かに不死身だが、奴に燃やされるより速くは再生できない。さらに奴は金属すらも簡単に溶かすほどの熱を操る。お前のそのスーツすら敵わないだろう」

「ただのスーツじゃねえ! バスローブって名前があんだ! てかスズキの強さなんて分かってんだ。だから、今、ちょっと作戦を考えようと……」

「無い作戦では勝てない! それにスズキが居なくてはここの工業は回らないぞ」

「ああ? その工業は労働者が苦しんでまで成立しなきゃいけねえ物なのか!? 労働者達からの依頼なんだこの仕事は。奴隷同然に働かされてるな。そんな人達、俺はほっとけねえ! お前みたいに獣みたいな見た目の奴とは違って、俺は人間なんだ!」

「なにぃ?」

「お、落ち着いてよ2人とも」


 ユイがロックと飛鳥をなだめる。ユイはカモメが指の間から現れたり消えたりするマジックを2人に見せつけている。俺は飛鳥に過去のことについて聞きたいのだが……


 そんなうちに港にフェリーがつき、客員がどんどん降りていく。俺たちが降りるのは最後だった。飛鳥が思い出したようにロックに突っかかる。


「そうだ! あ、お嬢さんの手品は見事だったがな、それと和泉がスズキを殺しに向かう事は別だ! その仕事に和泉を連れていくな!」

「ああ? 和泉は俺の仕事を手伝う代わりに、超東京に連れてくって約束なんだ」

「なら俺が連れていくからお前の案内はもう必要無い!」

「なんだとぉ?」

「スミマセン、チョットイイデスカ?」

「なんだあ?」

「はい?」


 2人が声に呼ばれ振り向いたのは海の方向だ。海の中から上半身を出す、巨大なロボットに彼らは呼ばれたのだ。


 次の瞬間ロボットの巨大な拳に殴られ飛鳥が吹っ飛び、港内の建物にぶつかり建物が音を立てて崩れる。


 ロボットの後ろから人影が。それは全身銀色の人間だ。両手首に刃物をつけている。その銀色はロックに手首の刃物で襲いかかった。ロックは腰の剣を抜き、その刃物を受け止める。その攻防が何度か繰り返されロックと銀色の間で火花が何度も散る。


 巨大ロボがロックを殴ろうとしてたので、俺は港の岸から飛び、そいつを殴り、真っ直ぐに地平線の向こうへ吹っ飛ばす。慣性支配を使い殴ったのだ。後ろから飛鳥の声がした。


「いいぞ! うまく慣性支配を使いこなせているな。だがああやって吹っ飛ばせるのは物だけだ。物は触れた後も慣性支配できるが、生き物は触れてる間しか慣性支配できない。気をつけろよ!」


 その瞬間、銀色がロックから離れ逃げの体制をとった。


「どうして逃げるんだ?」

「わかったぞ、和泉! お前にビビったんだ。あいつは多分アーマロイドで、大部分が機械だからお前に簡単に吹っ飛ばされるんだ!」


 銀色から、人間のようだがハッキリ聴くと機械から発せられたと分かる声がした。


「そう。俺はアーマロイド、名前はガシラ。ロック、お前の仕事の依頼主、労働環境改善委員会の人間は私が全員殺した。そして委員会の残したものを調べあげお前の名が上がったのだ」

「て、テメエ!」

「雇用主がいなくなった今が仕事のやめ時だぞ」

「金はもう貰った、いや! もう、そういう問題じゃねえんだ! 俺はお前たちを許せねえ!」

「そうか。ならまた必ず会いに来るぞ」


 そう言って銀色のアーマロイド、ガシラは消えてしまった。


「行くぞ」


 そう静かにロックが言った。俺とユイはまだフェリーに積まれたままのモンスタートラックに乗り込んだ。エンジンがかかると飛鳥が車の目の前に立つ。


 何か口を開こうとするがロックは飛鳥を轢いて車を進めてしまった。俺は唖然としてロックに聞く。


「えっと、飛鳥は置いてくのか?」

「あんな奴知らねえよ」


「おい待てええええ!」


 後ろから、遠くなった飛鳥の声が聞こえた。

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