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第9話:リベンジ前の基礎向上

第9話:リベンジ前の基礎向上


岩亀だったものの亡骸が魔素となって俺に吸収されていく。新たなスキル『甲殻生成』と『衝撃耐性』を獲得し、俺はまさに攻防一体、最強のシャドウスライムへと生まれ変わった。高揚感が全身を駆け巡り、今すぐ湿地帯に殴り込みをかけたい衝動に駆られる。


(フハハハ! 見てるかカエル野郎! 次は貴様の番だ! 最強の矛と盾を手に入れた俺様に、もはや死角はない!)


脳内で勝利の凱歌を歌い上げる俺に、アリアが水を差す。

《はいはい、フラグ立てるのやめなさい。その新しいスキル、まだ使いこなせないでしょ? いきなりボス戦に持って行って、操作ミスで死ぬのがオチだよ》


(……うっ)

図星だった。そうだ、慢心は最大の敵。あの敗北を忘れるな、俺。


(……わ、分かってるって! これはあれだ、リベンジ前の準備運動! いきなりメインディッシュを食う前に、まずはアペタイザーで舌を慣らす、的な? そう、戦略的修行だ!)


スポーツだって基礎練が一番大事なんだよ! 俺は今、基本に立ち返っているのだ!


《へえ、殊勝な心がけじゃん。いつもは「ガンガンいこうぜ」一択のあんたがねえ》


(うるせえ!)

俺はまず、新スキル『甲殻生成』を試してみる。左腕に意識を集中させると、ゴゴゴと岩が隆起し、瞬く間に分厚く頑丈な盾が形成された。


(おお、すげえ! この盾カッチカチやぞ! しかも軽い!)

その盾で近くの岩壁を殴りつけると、ガツン!と鈍い音がして岩壁にヒビが入った。『衝撃耐性』のおかげで、俺の腕にはほとんど衝撃が伝わってこない。


(よし、アリア! この辺りで、新スキルの試し斬り……じゃなくて、試し受けにちょうどいいザコはいないか?)


《ザコねえ……。それじゃあ、この岩場地帯にいる『岩トカゲ』なんてどう? 素早い動きで翻弄してくるけど、一体一体の攻撃力は大したことない。あんたの新しい盾の性能を試すには、もってこいの相手だよ》


いいだろう、動く的として不足はない。

俺は岩場を駆け、すぐに体長1メートルほどの岩トカゲを見つけた。そいつが弾丸のように突っ込んでくる。

俺は慌てない。左腕に生成した盾を構える。


ガキン!

岩トカゲの鋭い爪が盾に弾かれた。

そして、体勢を崩したトカゲの無防備な胴体に、右腕の『硬質化』した爪をカウンターで叩き込む。

ザシュッ!

一撃で、岩トカゲは絶命した。


(なるほど……! 防いで、殴る! このコンボ、シンプルながら強力だ!)


俺はその後も、次々と岩トカゲを狩っていった。

ただ狩るだけでなく、いかに効率よく、いかに魔力を消費せずに倒せるか。攻撃と防御の切り替え、スキル発動のタイミング。地道な戦闘を繰り返すうちに、新たな力が完全に身体に馴染んでいくのを実感した。

この地道な作業が、大王酸弾蛙への恐怖を、確固たる自信で塗り潰していくのだ。

しかし、ふとした瞬間に、あの絶望的な光景が蘇る。トラックほどの巨体、地面を溶かす酸の弾、そして俺を虫けらのように見下す、あの冷たい瞳。

そのたびに、俺は自分に言い聞かせる。もっとだ。まだ足りない。絶対的な安心感が得られるまで、俺は強くならなければならない。


数日が経過した。岩トカゲでは物足りなくなってきた頃、アリアが新たな獲物を提案してきた。


《この岩場の洞窟の奥に、『クリスタル・スコーピオン』の巣があるよ。群れで行動するし、尻尾の毒針が厄介。対多数の戦闘訓練にはちょうどいいんじゃない?》


(うひょー! サソリの軍団だ! パーティータイムの始まりだぜ!)


上等だ。

俺は洞窟の奥へと進む。壁一面が水晶で覆われた美しい空間に、カサカサと無数のサソリが現れる。その数、およそ30匹。

俺は即座に『影潜み』で気配を消し、群れの中央に躍り出た。そして、スキル『甲殻生成』を全身に展開! ゴツゴツとした岩の鎧が、瞬時に俺の全身を覆う。


次の瞬間、無数の毒針が俺の身体に降り注いだ。チチチチッ!と雨が屋根を叩くような音が響くが、俺の甲殻はびくともしない。


《【毒による攻撃を完全に防御しました。条件を満たし、スキル『毒耐性 LV.1』を獲得しました】》


(よし! これで毒にも強くなったぜ!)


(残念だったな! 俺の装甲は、お前らの安物の針じゃ貫けないんだよ!)


毒針の雨をシャットアウトしながら、俺は両腕の爪と背中の触手を振り回した。

水晶のサソリたちは、俺という名の暴風に巻き込まれ、次々と砕け散っていく。

全てのサソリを狩り終えた時、各種スキルの熟練度は軒並み上昇し、俺はかなりの手応えを感じていた。


俺は自分のステータスウィンドウを眺め、満足げに頷いた。

最強の矛。最強の盾。そして、それを使いこなすための十分な経験。

もう、恐怖はない。あるのは、リベンジへの確固たる自信だけだ。

俺はゆっくりと立ち上がり、湿地帯の方角へと身体を向けた。


(さて、と……。準備運動は終わりだ。カエル野郎、狩りの時間だぜ)


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