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10分間のエース  作者: 橘西名
地区予選(開幕編)
85/305

08:そこそこの実力

08:そこそこの実力




 二メートル以上高い所から飛び降りても平気な顔をする女生徒は佐前ささきつばめ


 黒髪短髪で勝気な瞳の留学生というステータスを持ち、一人称は『僕』。


 バスケに関しては日本へ来てからほとんどやっていないけど、元住んでいた場所ではそこそこ有名な燕ちゃん。


 彼女の登場で混乱の最中、滴は飛び降りてきた燕に声をかけた。



「佐須先輩ですか?」


「はぇ? 揚羽ならそっちだけど」


「そっちというと……えーと」



 そこには必死に階段を下りてきて髪の毛が逆立ってしまっている上級生の姿があった。


 いかにも面倒なことに巻き込まれたという顔でコートに立つ燕のことを睨み付けている。



「あれが佐須揚羽かな、僕が知る限り」



 落ち着きなく燕は、思い立ったが吉日の思いで後輩に熱い視線を向ける。



「それよりバスケやろやろ。あんなにいい試合見せてもらっちゃったら、流石の僕でも我慢できないって。みんな凄くバスケ下手なんだもん」


「はい、そうですか(なんだか近くにこんなのがいた気がするけど、誰だったかな?)」


「キミがキャップなの? さあ僕らを仲間に入れるんだ。勝ちたいならためらうな」


「急に現れて強引に迫るのは、大和撫子らしくないわよ。この間、『僕って見た目はもう大和なんとかなんだから、いろいろと気を付ければすぐに撫子だよ』と言っていたのは、もう忘れているんでしょうね」


「さあ……さあ!」



 鼻息を荒くした燕に迫られる滴を後押しするように、千駄ヶ谷の方では観戦していた二人が加わった五人が、パス回しをしながら軽くウォーミングアップを始めていた。


 その様子を見て、滴は先輩のお願いを聞くことにした。



「それじゃよろしく。僕は佐前燕」


「私は佐須揚羽」



 ポジションは前から、



 PF:佐前燕


 PF:大塚栄子


 SF:上下愛数


 PG:滝浪滴


 2ndG: 佐須揚羽



 一番前に燕、一番後に揚羽ということになった。



 試合はジャンプボールはせず、ミニゲームでリードをしていた千駄ヶ谷ボールで始められた。


 千駄ヶ谷のフォワードは棒立ちの燕をかわしてゴール前に走っていく。


 そのフォワードのチェックに滴と愛数が入るが、あえてそこへ飛び込むように千駄ヶ谷は動いた。


 右足を一歩踏み出し、チェックにきた相手が反応を見せてから次の動作で左に切り返す。それがコンマ数秒に行われるため、相手には気づくことさえできずに一瞬消えたような錯覚を見せる。




 ――それは由那がやっていたのと同じテクニックだった。




 あっさりと抜かれてしまった滴は、その後姿を見送ることしかできなかったが、由那の技が簡単に使われたと考えてしまって一歩も動けなかった。



「呆けている暇があるなら早くあがってくれる? パスを出せないでしょうが」



 滴を抜いた千駄ヶ谷の人と入れ替わるように、揚羽が隣を通り過ぎていく。


 揚羽は二人を一瞬で抜くことができるフェイントのときにできる一瞬の隙を見逃さず、ボールを奪取していた。その先輩が見る先には、もう一人の先輩がマークを引き連れてボールを呼んでいた。



「ふふん。どうなっても知らないわよ、っと」



 燕にボールが渡ると、振り向きざまにかわそうとするが、ゴールから徐々に離されていくようにしか前に進めなかった。


 それでも足を止めることなく進んだ先はコートの右奥。ライン際ギリギリで燕は異様な行動をとる。


 力いっぱいに両足で踏み切ってジャンプシュートを思わせマーカーをずらすと、空中から素早いモーションでシュートが放たれる。


 滴や千駄ヶ谷の人が今まで見たこともないようなフォームから放たれたシュートは、運よくゴールリングに飛び込んでいった。



 結果から言ってしまえば、揚羽が止めて、そのボールを受けた燕がとんでもないフォームでゴールへつなげる。これほどシンプルなバスケは両者の実力に大きな差がないことを物語っていると百戦錬磨の強豪校五人は微かに感じ取っていた。


 そしてどうして小馬鹿にしている人のフェイントを彼女たちが使ってきたのか。それはただ自分たちが上だと見せつけてきただけなのかそうじゃないのか。



 バスケを通じて滴たちは、由那の過去と現在を知っている互いの気持ちを知ることになる。




 その時の由那といえば……


土日にも一回ずつ投稿できたらと思います。

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