07:誰のためなのか
07:誰のためなのか
二階から試合を見られていることにも気づける余裕もなく、竹春は千駄ヶ谷に追い詰められていた。
残り二ゴールで完封負けを喫してしまうが、あきらめないで最後まで頑張ることの大切さを三人は知っている。
頼れるエースはここにはいなくても、彼女のことが三人の支えになっていることは間違いなかった。
「愛数。分かってると思うけど、この試合――」
「……もう、分かってるって」
「私もね」
「誰のためなのか言うまでもないことだけど――」
バスケットにおいては押される一方だけど、絶対に負けないという部分が三人の中にもあった。
高校生になってバラバラになっていた自分たちをまとめてくれた子がいる。
その子の影響でここにいない一人を合わせた四人が見る景色というのは変わったのだ。
変わった今だからこそ、強く思うことがある。
その自分たちの大切な仲間が目の前の人たちに傷つけられて、泣いている姿はもう見たくない。自分たちの力が足りないばかりに彼女に悲しい思いはさせたくない。
「この勝負に負けない! たとえそれがどんなに絶望的でも!」
それは他の誰でもない自分たちのため。
由那を悲しませる相手に負けるなんて後悔はしたくないと三人は思っていた。
***
試合が進むにつれ彼女たちのもともと持っていた力が出せるようになってきたのだと思う。
ただバスケが上手い下手では考えられないようなすごい選手を彼女は知っているからだ。
二階から後輩たちの試合を眺めていた佐須揚羽は、となりにいる少女を見た。
「面白い、と思わない? 追い詰められればられるほど実力を出せる選手なんて、ほんの一握りしかいない特別な才能なのに」
「でも次のプレイで負けは確定だ。まだあのレベルについていける子は一人もいない。でも」
揚羽のとなりで一緒に試合を観戦していた佐前燕は手すりに手をかけると、身軽な動きでその上を滑るように下へと飛び込んでいった。
それを追うように揚羽も階段を使って下へと急いだ。
下のコートでは驚いて千駄ヶ谷の選手が離したボールを燕が奪いさり試合を中断させていた。
「折角だから、僕と揚羽を入れて千なんとかと竹春で五人対五人のバスケをしようよ」
この佐前燕は地元では有名なバスケットボール選手だという。
遅れてその場に到着した揚羽も、まさか自分まで参加することになるとは思わなかった。
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