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10分間のエース  作者: 橘西名
地区予選(開幕編)
83/305

06:負けたくない

由那はバスで東京へ向かっているところです。

06:負けたくない




 女子高校生の品位を落としそうな連中が来たかと思えば勝手にボールを手にして制服のまま宣戦布告をしてきた。



「ちょっと暇つぶしに相手してくれない? 私たちはいい練習相手になると思うよ」


「あまりにもぶしつけ過ぎない? どこの誰かも分からない人たちと練習なんてしたくないんだけど」


「へぇ~、知らないんだ」


「これでも全国屈指の強豪校なんですよ」



 どこの学校か言われなくても分かっていた。


 その子たちが持っていたバッグはすべて同じエンブレムのキーホルダーを付けていた。


 中高同じエンブレムを付けていてわかりやすい。


 その子たちは紛れもない千駄ヶ谷高校の生徒たちだった。






 ***

 霜月高校VS千駄ヶ谷高校の試合が行われていた。


 試合は子津を中心に去年より一層結束力が増した霜月高校が優勢だった。


 千駄ヶ谷もレギュラーで出場しているのは二條まゆだけで、残りは一軍半の選手で来ていた。


 予定では全員レギュラーで来ていたはずが、途中で別れてしまいこういう状況になっている。


 プレイスタイルは霜月が守備重視のカウンター一辺倒。


 単調な攻撃だが、人数が揃っていないところへ速攻をかけてくるものだから、止める方も厄介だ。


 それに加えて守備力は全国でもトップクラスで、子津のゲームコントロールの前では対戦相手の全チームが五十点以上取ったことがないほどだった。


 それに対する千駄ヶ谷は中学時代とは別のチームとして成立している。


 一人のエースを中心に組み立てていたバスケは捨て、個々がバランスよく組織的な攻守をするチームが高等部のスタイルだ。


 その中でも頭一つ抜けている選手が中学時代にエースを務めていた現一年生ということだ。


 そしてそれでも強いのだから、新生千駄ヶ谷はチームとして成立しているといえる。



「みんな相手のペースに飲まれすぎよ。たかだか全国ベスト十六位の高校のプレッシャーに負けていたら、全国一位なんて獲れないよ」


「「はい!」」



 試合前は礼儀正しかったまゆも試合になれば本性をむき出しにしていた。


 メンバーが中途半端でも中心選手が全力で向かってきているのがわかるから、子津の方もできる限り全力でプレーを続けた。



「リードしているとはいえ、無駄な失点が多すぎる。もっと気を引き締めていこう」



 点数は第三クォータ終盤で霜月三十六点、千駄ヶ谷二十八点と霜月が八点リードしていた。






 ***

 その場にいなかった千駄ヶ谷の残るレギュラーメンバーは、元チームメイトが無名の高校で活躍しているという噂を聞きつけて訪問していた。


 何をしに行ったのかといえば、受け取り方によってはかなり最低な理由だ。



「ねぇねぇ、本当にあんたらバスケ部なの?」



 小馬鹿にした感じで聞いてくる制服姿の女生徒は、きれいなフォームでレイアップを決めたところ。


 3on3のミニゲームに滴と愛数、栄子が参加しているが、十点先取のルールにしたのに一度も相手を止められず、シュートも満足に打たせてもらえなかった。



「もしかして一年生で結構やるってのはあなたのこと? てっきり私たちの知ってる負け犬がわざわざこんな田舎まで来て懲りずにバスケをやっているかと思ってたよ」


「ああ、確かにあいつよりはましかも。勝手に人のボールを奪って点とか決めなさそうっ」


「そうそう、絶対あいつよりセンスあるって」



 滴には雑音がするだけで何を言っているのかよくわからなかった。


 ただ目の前にいる人たちは自分よりもバスケが上手だ。


 同じ全国区の赤坂が一人ずば抜けた人がいるチームだとすれば、千駄ヶ谷の選手はそれを均等に分けた感じ。


 だからあの試合で数段レベルアップした滴でもほとんど通用していない。


 しかしその歴然とした実力差なんかより納得のいかないことがある。



「すみませんが、その“負け犬”とか“あいつ”とか言っている人は由那のことですか?」



「え? もちろん、そうだけど。やっぱりいたかぁ。なんかここ負け犬臭いもんね」



 四月に見た由那の涙の理由が、滴にはそこでようやく分かった気がした。


 それと同時にこの人たちには絶対に負けたくないと思ったのは滴だけじゃない、愛数と栄子にも共通したことのようだった。


未定……ですが、かけていれば月曜日にも投稿したいです。

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