小林聡美 1
令和〇〇年改正 子ども・子育て支援法施行規則の一部を改正する省令
第一条の五 (※保育の必要性について)
十 保護者自身の健康的な生活と就業のために必要な範囲であると認められること
第四条の二
市町村の特別の認可を受けた保育所に関しては前項に掲げる保育必要量に限らず、一日 当たり二十四時間以内の範囲で保育を実施することができる。
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彼女、小林聡美は消耗と焦燥のただ中にあった。
再来月の九月から復職だというのに、我が子、昨夏に生まれた娘の果夏の夜泣きが一向に止まず、昼間の生活もままならないからである。
只今も時計を見るのが怖い。
果夏は20時頃から2時間ほどは大人しく眠ってくれたが、その後は泣いては起きの繰り返しだ。
今日もろくに寝られないまま朝になってしまうのだろうか。
隣の部屋から夫の裕一のいびきが微かに聴こえてくる。
これだけ泣いていて気付かないのだろうか。
憎たらしく思う気持ちを自覚して、頭をふった。
いけない。
寝室を別にして、裕一がしっかり睡眠を取れるようにしようと提案したのは他でもない、聡美だった。
九月には、今度は裕一が一年間の育休に入る。
そうなったら、今度は裕一が娘の世話と家事を全面的に行う。
そして、聡美が仕事に集中できるようにする。
もともと職場で管理職として働いていた聡美は、復職後のキャリアを大切にしたかったのだ。
疲れているからって、感情的になるのはみっともない。
自分で言ったことなのに、裕一に怒りをぶつけるのはお門違いだ。
「自分は理性的な、優秀な人間である」という彼女自身も十分には自覚していないプライドが、高ぶりかけた気持ちを抑えさせた。
気持ちを切り替え、果夏を抱き上げあやす。そうしている限りはだんだんと泣き声も小さくなり、やがてまた寝てくれる。しかし、安心してベッドに寝かせたら最後、再び泣き出すのだろう。
他に何が出来るでもなく、暗がりの中で果夏をあやしつづける。
夜が明けるのも怖いが、この夜が永劫続くように感じられることも、また怖かった。




