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プロローグ
園庭の桜の花弁が一片、また一片と落ちてゆく。
少年はその木の下で俯いて、つい先ほど別れた老人のことを思った。
もう、この場所に人間の大人はいない。
同級生たちは何故、何も疑問を持たずにいられるのだろう。
あるいは、そんな疑問は誰しも飲み込んで隠すのが普通なのだろうか。
少年の疑問をぶつける相手はもういない。
いや、正確に表現するのなら、「受け止めてくれた」と少年が感じられる相手はもういない。
少年は園舎の方を向く。
おそらく職員は優しい笑顔で出迎えるだろう。
文字通り作られた笑顔で。
ただ、その笑顔は完璧で、温かく、多くの人に慈愛を感じさせるには十分すぎるものだ。
きっと自分もいつか同級生と同じになる。なってしまう。
そんな予感が胸をよぎった。
一陣の風が吹き、さらに桜の花弁を散らす。
足下に増えていく花弁に何かを思いながら、少年は園舎へと歩き出した。




