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行き来自由の戦国時代  作者: へいたれAI
第6章 武将としての成り上がり

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第66話 白衣の城主、爆誕



「ひぃっ、矢! 

 今、矢がヘルメットに当たりましたよね!? 

 これ、中古だけど三万円もしたんですよ!」


「がっはっは! 

 平田殿、金よりも命の心配をなされよ! 

 さあ、大沢勢、突き進めぇ!」


 犬山城を巡る激戦の最中。

 米軍放出品のケブラーヘルメットを被り、赤十字のマークを掲げた俺の周囲は、まさに「鉄壁」だった。

 右に猛将・前野将右衛門、左に冷静沈着な堀尾茂吉。

 そして後ろには、馬上で静かに戦況を見つめる「知の怪物」竹中半兵衛。さらに実務面での相棒・大森までが控えている。


 正直、これだけのメンツが揃っていれば、俺が木刀を振り回していても落城させられるんじゃないかという豪華な布陣だ。

 俺自身は防刃チョッキの下でガタガタ震えているだけなのだが。


 一方、今回の「衛生兵部隊」は、信長さんの本陣、その陣幕の内側に拠点を構えていた。


 部隊を率いるのは、我らが「聖母」母栖詩織さんだ。

 白衣(現代の防護服をアレンジしたもの)に身を包み、テキパキと消毒液や包帯を準備する彼女の姿は、戦国の殺伐とした陣中で異彩を放っていた。


「……夕庵、あの女子おなごは何者だ」


 陣座に座る信長さんが、驚きを隠せずに隣の武井夕庵様に尋ねたらしい。

 流石に一度あったはずだが信長さんは覚えていなかったらしく、武井様からの話で思い出したようだ。


「はっ、平田の身内で、医術の心得がある者にございます」


「……ほう。女子がこれほど堂々と陣中に居座るとはな。危うい、余の隣に置いて保護してやれ」


 信長さんなりの配慮で、詩織さんは一時、魔王のすぐ横という「戦国一安全で、戦国一緊張する特等席」に座らされることになった。


 伝令として本陣に飛び込んだ大森が、信長様の横で涼しい顔をしてガーゼを切っている彼女を見た時の、あの「えええええっ!?」という驚愕の表情は、後の語り草になるだろう。


 しかし、いざ戦闘が激化し、次々と負傷者が運び込まれるようになると、もはや信長さんの隣で大人しくしているわけにはいかない。


「大殿様、失礼いたします! あちらの方が運び込みやすいので、私、行って参ります!」


 詩織さんは信長さんの制止を聞く間もなく、いつもの店(治療所)での手慣れた様子で陣頭指揮を執り始めた。魔王を置き去りにして仕事に走るその姿に、信長さんも「……平田の周りには、おかしな者ばかりが集まるな」と苦笑していたそうだ。



 城攻略戦の方は、俺の功績というよりは、配下につけてもらった大沢勢の「武勇のバーゲンセール」のような状態で、無事に一番槍のミッションを(俺が後ろで震えている間に)完遂した。


 前線が他家へと譲られると、俺たちは速やかに大沢勢の負傷者を回収し、信長さんの本陣へと引き上げた。


「大殿様!

 平田嶺、一番槍の報告に参りました! 

 ついでに治療も始めます!」


 白い防護服に赤い十字のヘルメット。

 返り血……ではなく、消毒液の匂いをさせた俺がそう叫ぶと、信長さんは満足げに頷いた。


「見事であった、平田。

 その奇妙なヘルメットの効果、後で余にも詳しく聞かせよ」


 やがて、犬山城は陥落。

 戦後処理に入ると、修理工としての俺たちの本領が発揮された。

 武井夕庵様を中心に、城の機能復活や破損箇所の修復など、俺と大森、それに前野さんたちは連日駆り出されることになった。


 この作業を通じて、かつては敵対していた大沢次郎左衛門さんたちとも、同じ釜の飯を食う……もとい、同じ現場で汗を流す仲間として、急速に絆が深まっていった。



 そして数日後。

 小牧山城の大広間にて、論功行賞の評定が開かれた。


「平田嶺、前へ」


 信長さんの声が響く。

 俺は緊張で裏返りそうな返事をして這いつくばった。


「此度の犬山攻め、平田の『一番槍』と、その後の迅速な救護活動、誠に見事であった。

 よって、かねての約束通り、平田嶺を『楽田城』の城主とし、その城下周辺の地を封じるものとする」


 広間がざわめく。

 元引きこもり、元修理工、現・得体の知れない商人。

 そんな俺が、ついに「城持ち武将」として認められた瞬間だった。


 俺の希望など一切構わずに進んだキャリアアップだが、これで俺は武井夕庵様の「側近」から、一階級上の「侍大将格」へと昇進。

 信長さんの評定に直接出席し、意見を述べる義務と権利――要するに、逃げ場のない「役員会議」への永久出席カードを付与されたわけだ。


「……あ、ありがとうございます……(胃が痛い)」


 さらに、信長さんはニヤリと笑って付け加えた。


「それと、大沢次郎左衛門を平田の与力(配下)として付ける。

 大沢、不服はあるか?」


 呼ばれた大沢さんが、これ以上ないほど晴れやかな顔で頭を下げた。


「滅相もございません! 

 平田殿の下であれば、この大沢、喜んで織田の盾となりましょう!」


 大沢さんにとっても、降将という不安定な立場から、得体の知れない

(しかし殿の信頼が厚い)俺の配下になることで、織田家の中に正式な居所を確保できたことが嬉しかったらしい。


 こうして俺は、現代の修理道具と「戦国版・赤十字」を掲げたまま、楽田城主という名の「現場監督」に就任することになった。


 ……スローライフはどこへ行ったんだ。


 俺は、いつの間にか侍大将としての威厳(?)を感じさせ始めた大沢さんの笑顔を眩しく感じながら、新しい城の図面……ではなく、修理箇所のリストを広げるのだった。



第二部 完


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