今までを振り返り
ここまでのあらすじ
都内の小さなメーカーで理不尽ないじめに遭い、不正の罪までなすりつけられそうになった平田嶺(25歳)は、身も心もボロボロになって会社を辞めた。
孤軍奮闘の末に無実を証明したものの、職場で孤立し、密かに想いを寄せていた後輩も失うという絶望的な結末を迎え、すべてを投げ出して祖母が遺した犬山市の山奥の家へと引きこもった。
そこは限界集落の跡地と呼ぶべき場所で、スローライフとは程遠い環境だったが、元修理工の知識を活かしてネット環境だけは確保。
麓の農協で幼馴染の綺麗なお姉さん・大峰茜と再会し、彼女の助けでトラクターをレンタルできるようになると、荒れ放題だった家までの道や畑の整備に没頭し始める。
傷ついた心を癒すため、ネットで見かけた修験者の真似事を始め、麓のコンビニで働くバイトの女子高生らしく見えたが実は大学生の澄田幸代からは「新手のコスプレーヤー」と怪しまれる日々を送っていた。
そんなある日、嶺は山中で崩れた祠の近くから小さな石仏を見つけ、家の仏間に祀ることにする。
神棚の隣に祀った石仏に毎日お神酒を供えるのが新たな日課となったが、ある新月の夜、そのお神酒を飲んだことがきっかけで、嶺は突如として見知らぬ祠へと転移する現象を体験する。
そこは現代では決して見ることのできない満天の星空が広がる別世界だった。
スマホで撮影した星空の写真をAIで解析したところ、衝撃の結果が表示される。
『撮影年代の推定……西暦1560年。元号:永禄三年』。
永禄三年といえば、織田信長が桶狭間の戦いで今川義元を討ち取った、まさに戦国時代のど真ん中であった。
異世界転移ではなく、過去の日本へのタイムスリップ。
しかも、現代と過去を行き来できるらしいこの能力に、嶺は新たな可能性を見出す。
しかし、転移はそう簡単には再現できず、夜な夜な検証を重ね、天文オタクと化すほどの調査の末、ついに転移の法則を突き止める。
それは「新月の当日と、その前後の夜」に限定された、月に三日間だけ開く時空のゲートだったのだ。
法則を解明した嶺は、永禄での本格的な探索を決意。
獣害対策としてクマ撃退スプレーや爆竹を大量に買い込み、澄田や茜からますます不審な目で見られながらも、着々と準備を進めた。
そして迎えた新月、永禄尾張へと渡った嶺は、祠の近くに廃集落を発見し、今後の活動拠点と定める。
探索中には大量の松茸を発見し、最高のお土産として現代に持ち帰る。
その松茸が、事態を大きく動かすことになる。
後日、日頃の感謝を伝えるため茜と澄田を自宅のバーベキューに招待した際、季節外れの立派な松茸を出したことで二人に問い詰められ、追い詰められた嶺はついに転移の秘密を打ち明けてしまう。
しかし、歴史やラノベ好きだった二人はドン引きするどころか「私も行きたい!」と大興奮。
こうして、嶺の孤独な冒険は、図らずも「チーム永禄」を結成し、賑やかなものへと変わっていった。
さらに、ひょんなことから再会した大学の後輩・大森拓也とその彼女・母栖詩織が嶺の家に同居することになり、彼らにも秘密がバレてしまうが、令和の世に未練のなかった二人は永禄への完全移住を決意。
嶺の計画は、新たな仲間を加えてさらに大きなものへと発展していく。
永禄への移住を決意した大森と詩織は、廃村に残り「戦国スローライフ」を開始するが、その生活は過酷を極めた。
しかし、現代知識と持ち前のDIYスキルを駆使して拠点を整備し、温泉を内風呂化するなど、着実に生活基盤を築いていく。
そんな中、二人は戦乱で親を失った兄妹・茂助と彩を保護し、予期せずして4人での共同生活が始まった。
一方、嶺は澄田と共に長期滞在し、村の発展に本格的に乗り出す。
サスペンション付きの荷車やチェーンソーといった近代技術を導入し、山窩や木地師といった新たな住民も加えていく。
村は炭、陶器、サツマイモなどを生産する一大拠点へと成長し、清州の城下町との交易も本格化。
さらに嶺は、津島で手に入れた質の悪い鐚銭を令和に持ち帰り、近代的な設備で良質な銭に「鋳造」し直すという、禁断の錬金術にまで手を染め、活動資金を潤沢にしていく。
還俗し商人の姿で清州の町を探索していた嶺は、ある日、織田信長の側近である武井夕庵に声をかけられる。
嶺はこれを好機と捉え、村で生産した砂糖や、鋳造した良銭などを献上し、その才覚を認められる。
夕庵や熱田の有力者・千秋季忠とのコネクションを築き、ついに信長本人への謁見が叶う。
信長の前で、嶺は村の生産力と財力をアピールし、その忠誠を誓う。信長はそれを良しとし、村の庇護と商いの自由を認める朱印状を与え、来る犬山城攻めへの協力を約束させた。
戦国時代での大きな目標を達成した嶺だったが、彼の個人的なクエストは混迷を極めていた。
積極的なアプローチを仕掛けてくる茜と、知的な魅力で惹きつける澄田。
二人の間で揺れ動く嶺のヘタレっぷりに業を煮やした彼女たちは、なんと水面下で「対ヘタレ主人公共同戦線」を結成。嶺を一人前の男に育て上げるべく、奇妙で強力な同盟を結んでいたのだった。
戦国時代でのサバイバルと村の発展、そして二人の女神とのラブコメクエスト。
ヘタレ主人公・平田嶺の、時空を超えた冒険はまだ始まったばかりである。




